【Q.アイドルはウンコしない?】
アイドルはトイレに行かない?
天使だから、う◯ちとかもするわけない?
おしっこも、アイドルのカラダから出たものはキレイだから天然水といっしょ?
えっと……。
もしかして本当にそう思ってくれている人って、いたりするのかな。
始まって早々、こんな風に夢を壊すようなことを言ってゴメンナサイなんだけど。
アイドルだって、人間だし。
実際、普通にう◯ちくらい、するよ。
……ちょっと、ガッカリした?
あ、分かってはいたけど、いざ言われるとちょっとグロテスク?
うん。
そうだよね。
でも、仕方ないよね。
アイドルの子達はみんな、キラキラしたイメージでいたいし。
トイレ事情だって、隠しているわけだし。
え?
別にアイドルじゃなくても、女の子だったら普通、わざわざトイレ事情なんか話したりしないだろう、って?
確かにそうかも。
でもね。
『アイドルはトイレに行かない』
『アイドルはう◯ちしない』
『アイドルのおしっこは聖水』
アイドルにそんな風なイメージが付いているのには、実はちょっとした秘密というか、理由があったりするんだよね。
それは有名なアイドルでも、地下アイドルでも一緒で、『アイドル』になった子たちだけが知っている『暗黙のルール』みたいな感じ。
絶対に隠し通さなきゃいけない。
絶対に誰にも知られちゃいけない。
そんな、アイドルたちだけの『ひみつ』。
そして、いま。
実は私、ピンチです。
超! 超! 超! 大ピンチ。
そうです。
私は、みんなが必死に隠し通している、その『暗黙のルール』を破ってしまいそうになっているのです。
――――うぅ。お腹痛い。漏れそう……。
でも、ダメだよね。
ガマンしなきゃ。
『ひみつ』は絶対だもの。
――――うぅ……マジで漏れそう、限界。
えっ? あ、っていうか「お前だれ?」って話だよね、ごめんなさい。
―――コホンッ。
うっ、咳払いなんてしたら出ちゃう、出ちゃう。
ごめんなさい、普通に自己紹介しますね。
私の名前は、朝比奈あさひ。
つい最近、高校三年生になったばかりの清純系の女の子です。
ルックスは、色素薄めの茶色っぽい髪に、ボディラインは普通の健康的な女子の平均くらい。
顔もたぶん、ブス以上の美少女未満、って感じだと思う。(中の上くらいかなっ。笑)
元々は学校でもそれほど目立つ方ではなかったんだけど……。
実は、去年の夏休みに、いきなり『アイドル』として目醒めちゃって。
それからだいたい半年間、一人で歌って踊る地下アイドルとして、学業と両立しながら、ライブ活動を頑張っているって感じですっ☆
「―――はい、それではただいまより、コチラで『朝比奈あさひ』さんの物販を開始いたしまーす」
イベントスタッフさんの声。
あ、そうだった、今ライブ後の物販の時間だった。
「朝比奈さん、お願いします」
「あ、はいっ。それじゃあ、ただいまよりチェキ販売を行いますっ、列に並んで順番にどうぞ~っ」
ニコッと、営業スマイル。
おかげさまで、今日は10人近い人たちが私の前に列を作って、順番待ちしてくれている。
「はい、じゃあ最初の人~……あっ! 『最古山サイコ』さんっ、今日も来てくれてありがとうございまーすっ♪」
笑顔で手を振りながら、私は自分でお金を受け取って、彼の手を取りながらツーショットチェキのポーズをとる。
もちろん、相手の目を見つめることも忘れないよ。
――――パシャッ
「ありがとうございまーすっ♪ じゃあサイン書きますね~」
「うひひ、今日も踊り可愛かったよ、ひなっち」
「えへへ、ありがとうございます☆」
私は高校生だし、物販のグッズとか作る余裕もないから、今はこうやってチェキ券っていうのを販売してるの。
1枚500円で販売して、チェキ券1枚で私と一緒にツーショットチェキを撮れて、数十秒間一緒にお話できるってやつ。
接触っていうのかな、オタクの人たち―――ファンの人たちのことなんだけど、その人たちは私とお話しする、接触するために何周も列に並んで、何回も買ってくれるから、今の私にとってはある意味それが唯一の収入源なんだ。
もちろんステージギャラみたいなのもあったりするけど、それは本当に交通費で終わっちゃうくらいだったりするから。
オタクのみんなが買ってくれるチェキ券のおかげで、衣装の準備とか次のライブに向けた練習とかの活動資金に当てられている感じ。
ホントはバイトしてもっと資金を貯めたいけど、今はアイドル活動優先だから。
バイトとかしてる場合じゃないよね、ガマンガマン。
――――う。
ガマンって言ってたら思い出しちゃった。
(うぅ……お腹いたいっ)
しばらく便秘が続いていたから、今日のライブ終わるまでは絶対に来ないと思ってたんだけど。
……いけない、いけない。チェキに集中しなきゃ。
「うん、ありがとー♪ 明日も来てねっ……次の方どうぞ~☆……」
(うぅ、ダメ……ちょっとコレ、本当に無理かも……)
でも、まだしばらくはチェキの列が途切れそうにないし。
今さっきツーショットを撮ってくれたオタクも、早速2巡目に並び始めたところだし、早くてもたぶんあと30分……もしかしたらこの会場の強制終了の時間まで続くかも……。
―――――ぎゅるるぅぅ……
会場内に流れるBGMのおかげで聞こえてはいないと思うけど、さっきからお腹が悲鳴のように大声で警告してくるよぉ。
「およよ? ひなっち、大丈夫?」
「―――えっ!? あ、うん聞いてるよ~っ!」
いけないっ。
お腹に気を取られて、サイン書く手が止まっちゃってた。
「ごめん、今めっちゃこのBGM聞いてた! えへへ、えっと、名前なんでしたっけ~?」
「マジかw 昨日も来たのに俺のこと忘れるとか、ひなっち天然過ぎかっ! あ、ちなみに今のは別に『天然杉』っていう名詞を言ったわけではないからw ぶほっw」
「あはははっ、なにそれおもしろぉいっ!」
(うぅぅっ…!)
お腹痛い。
営業スマイルで腹筋を揺らすと、もうほとんど我慢できないほどの痛みと排泄欲が込み上げてくる感じ。
油断したらもう、「ブリッ♪」ってイッてしまいそう。
(だめっ……っ! 私はアイドルだから、絶対我慢しなきゃっ……!)
「……っ!」
「……ひなっち?」
「ガマン……ガマン……絶対ガマン……」
「どうしたん? さっきライブ中ケガでもしたん?」
覗き込んできたオタクが視界に入り、私は慌てて笑顔を作り直した。
「ご、ごめんね……えっとぉ、それで……名前は?」
「あーそっか、じゃあ『つちのこ』で」
「あぁ、そうだ、そうそう『つちのこ』さんだぁ! それじゃあ…ツッチーだね♪」
「ああ、なんか俺の推しもみんなそう言うんだよw」
まっ、一番ベタだもんね☆
―――――ぎゅるるぅぅっ……!
(うぐぐぐ……あ、むり。)
私のお腹の中で、何かが怒って暴れているような感覚。
今すぐその場に蹲りたい。
っていうか、本当に無理無理、立っていられないや。
――――うぅ、もう……限界っ!
「――――むりっ! ちょっとごめんなさいっ!」
そう言って私はサインを書き終えたチェキを『つちのこ』さんに手渡すと、とうとう限界を迎えて楽屋へと駆け出した。
「えっ!? ひなっち!?」
「―――ごめんなさい、ちょっと楽屋に忘れ物っ!」
んぎぃぃぃぃぃぃぃっ!
あぎゃあぁぁぁぁっ!
叫びたい気持ちを必死に抑えて、平静を装って、舞台裏の控室へと猛ダッシュ。
あはは、おかしいよね、アイドルの物語のはずなのに……。
こんな始まり方で、本当にごめんなさいっ!
―――でもでも、次回っ。
ついにアイドルのトイレ事情が明らかになっちゃいます☆
お読みいただきありがとうございます( ◍>◡<◍)。✧♡
普段はノクターンでエロばかり書いております♡
今回は初めて一般作を書こうと思って、挑戦してみました。
完結まで、毎日更新していく予定です☆
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