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卒業式が楽しみだ

「先月転校してきた御令嬢は少し調子に乗っているのではないですか」

「王子といるところを頻繁に見かけますわ」

「伯爵令嬢の癖に身分もわきまえず……」

 最近、この話をされることが多くなってきている気がする。

「アンナ様はどうお考えですの?」



 私はアンナ=ルドワール。ルドワール家の長女だ。

 いろんな人たちがこの話を私にするのは、私が王子の婚約者だから。


 こんなにも言われてしまうとそろそろ動き出さないと外聞が悪い。

 私は王子とは幼馴染だった。

 幼馴染で地位も結婚するにちょうどいい。だから、私たちは婚約者になった。

 ようは政略結婚というやつだ。

 私は王子に恋愛感情を持ったことなんて一度もない。

 だが、周りの人たちは私が王子と仲良くしている彼女を見過ごすことを許さない。



 仕方なく私は先月転校してきた、アシュレイ様に忠告をすることにした。

「こんなところにお呼び出しして申し訳ありません。あなたが王子と最近仲がいいと聞きまして……」

「まぁ、メイソン様のことですの?」

「え、ええ」

 まさか名前呼びしているとは。

 王子が名前を呼ぶことを許すほどに仲がいいのだろう。


「仲よくしてもらっていますわ」

「そうですか」

 言い切った。

 婚約者である私に何も包み隠さなかったのだ。

 もうこれは私が思う以上に仲がいいのだろう。

 ということで、もうこれは放置でよくないですか?

 アシュレイ様は仲良くしてるって言ってるし、なによりあの王子が私や家族以外に名前で呼びことを許したなんて、それはもうロマンス始まってるんじゃないですか?



 よし、これはもう応援しよう。

 結婚とか王妃様とかぶっちゃけめんどくさいし、しなくてもいいというならしたくない。

 私と結婚しないことで王子が幸せになれるなら一石二鳥だ。

 頑張れ、メイソン王子! 応援してますよ。



「アンナ?」

 王子とアシュレイ様のことを応援すると決めたら気が楽になってきた。

 周りの人たちの言葉を聞き流せる。

 周りの言葉を聞く気がないとわかると話してくる人も減る。

 そして、私の心労も減る。

 ああ、なんて素晴らしい日々なの!


「アンナ!」

「なんですの?」

 人が素晴らしい日々を謳歌しているときに邪魔しないでいただきたい。


「何って、最近全く俺のところに来ないからどうしたのかなって思って」

 ああ、王子でしたか。


「そうですわね」

 いや、人の恋路を邪魔すると馬にけられて死ぬっていうじゃないですか。

 そんなの嫌ですよ。

 私は普通に天寿を全うして死にたいのでそんなのごめんです。


「そうですわねって……。今までは毎日とは言わなくても2~3日に一回は俺の元へ来てくれていたじゃないか」

 それは、周りの人がうるさかったからしぶしぶ行ってただけで……

 特に王子に会いたかったとかではない。


「何かあったのかい」

 ありましたよ。

 結婚をしなくてもいいかもしれないという光が見えてきた。

 独身万歳!


「その顔だと何かあったようだね」

 王子、あなたエスパーかなんかですか?


「いえ、私のことなどいいのです。今日はアシュレイ様とはご一緒ではないのですね」

「ああ、アンナと会うのだから当然だろ」

 王子は一応アシュレイ様との仲を隠したいようです。

 今更隠したところで遅いんですけどね。


「そうですか」

「あまりアンナの顔が見れないと寂しいから、たまには顔を見せに来てくれよ」

 そういって王子は去っていった。

 たまにはって、会わなくなってからまだ1週間もたっていませんよ。


 婚約者への心配りも忘れないなんて。さすがというかなんというか。

 これは女としては喜ぶべきところなのかもしれませんが、私としては一刻も早く、できれば卒業までにはアシュレイ様と仲を深めていただきたい。

 私のことなんて気にしなくていいですから、さっさと恋人にでもなって、是非とも私との婚約を破棄してくださいね。

 2人が幸せになることを心より願っていますわ。

 私の独身生活のために!



 メイソン様の卒業式が楽しみですわ。





「アシュレイ、カイン……」

「どうしたのよ、メイソン。浮かない顔ね」

「ああ、最近アンナがつれなくてね」

「つれないって……。たまたまじゃない?」

「たまたまなんかじゃない! この前会いに行った時だって全然嬉しそうじゃなかったし」

「前からそんな感じだろ」

「そんなことない! アンナは俺のところに来るときいつも楽しそうな顔してた」

「ああ、さいですか」

 ったく、何を見ているんだカインは。

 全くアンナのことが分かっていない。


「アンナ様はいつからそんな感じになったの?」

「1週間ほど前からかな。急に俺のところに来なくなったんだ」

「飽きたんじゃね?」

「カインは黙ってろ!」

「はいはい」

 飽きたとは何だ。飽きたとは。

 全く失礼な奴だ。



「1週間前というと、丁度私がアンナ様に呼び出されたときね」

「アンナに呼び出されたのか?」

「ええ、用事があるからって」

「1対1で話したのか?」

「ええ、まあ」

「うらやましい、うらやましすぎる。俺でも1対1で話したことないのに! 婚約者である俺がないのに、なぜアシュレイはあるんだ!」

 おかしいだろ。

 俺がアンナと会うときはカインなしでは許されてないぞ。



「あ、俺もあるぜ」

「なぜだ、なぜある」

「お前を待ってるときとかに立ち話したりしてたからな」

「呼べよ!」

「呼んだだろ。それで3人で話してたじゃないか」

「そこは空気読んで2人にしろよ」

「護衛だから無理」

「主人の言うことを聞け!」

「俺の主人、王様だから」

「俺を守ってるんだから、俺の言うこと聞けよ」

「俺が守ってるのは、お前からアンナ様をだから」

「何?」

「アンナ様がご卒業なさるまでアンナ様をお前から守るようにとの命令を受けている」

 くそ、どおりでアンナとあまり近づけないはずだ。

 親父め……


 まあ、これもあと少しの辛抱だ。

 アンナが学園を卒業してしまえば俺とアンナは結婚できる。

 アンナは俺のものになるんだ。


 アンナの卒業式が楽しみだ。


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