私が選ぶのは
「もうお前の態度には我慢できない。ミリア、お前との婚約は破棄する」
「わかりました。お父様にはわたくしからお話いたします。それではカール様ごきげんよう」
ふー、何とか二年次になるまでに間に合いました。さっさと帰ってお父様に破棄してもらわなければ。
申し遅れました。私はミリア=グレイスと申します。グレイス公爵家長女にして転生者というものです。前世では、アラフォーOLをしており、日々たまっていくストレスは乙女ゲームで癒されて発散する重度の乙ゲーマーでした。そんな私の一押しゲーム「俺の手を取ってくれ」転生したからには私の一押しキャラヒロインのリディアちゃんが幸せになるのをこの目で見たい!というか、仲良くなって一緒にご飯食べたい。しかし、私の配役は攻略対象者の一人であるカール=グリーンの婚約者で悪役令嬢の一人に転生してしまいシナリオ通りに進めるためには愛しのリディアちゃんをいじめなくてはいけません。天使のような優しいリディアちゃんをいじめるなんてそんなこと一ファンとして絶対にできませんので、手っ取り早くカール様との婚約を破棄してしまおうという結論に至りました。そのためにわたしはせっせとカール様よりもいい点数をとり、女子なのに剣術や馬術を鍛えて女性らしさがまったくない女性を演じ続けました。そして、今日やっと努力が実り婚約破棄を言い出してもらえました。もともと政略結婚ではなかったので双方の同意さえあれば簡単に破棄できるような婚約でした。
リディアちゃんが転校してくるのは二年生の春で今は一年生の後期の授業が終わりつつあるので本当にギリギリでした。あとは、リディアちゃんが転校して来たら仲良くなるのみ。今から楽しみです。
そして、待ちに待ったリディアちゃん転校イベント発生中です。
「リディア=ワトソンと申します。これからよろしくお願いします」
ああ、なんと声までカワイイだなんて…。乙ゲーヒロインって基本的に声つかないから想像するしかなかったのに声が聞ける日が来るとは、神様に感謝します。
「ワトソンさんって元庶民なのですってね」
わざわざクラス中に聞こえるように言うなんて。
「そうなのですよ」
「そんなことよりも、ワトソンさんお昼ご一緒してもよろしいでしょうか」
リディアちゃんをいじめようとしているクラスメイトとの関係よりもリディアちゃんとご飯を一緒に食べたいと思った私はさっそくお昼に誘ってしまいました。いきなり誘って変に思われなかったかと思っていた時に
「是非に」
とリディアちゃんの天使スマイルいただきまして今にも昇天にしそうです。
その後、私はリディアちゃんと毎日ご飯を食べたりお茶会をしたりしました。婚約破棄に躍起になりすぎてあまりお友達と呼べる人がいなかったので幸せですわ。
ただ、リディアちゃんずっと私といませんか?
私の気のせいですかね?イベントは入学後すぐに発動するはずで夏には部活とか委員会とかに入っていたり、入っていなくても特定のキャラとは仲良くなっているハズなのですが…。私が気付いていないだけですわよねー。
「おい。ミリア」
なんか聞こえた気がしますがまあいいですわよね。
夏はリディアちゃんのイベント入っちゃうから遊べないのは残念ですわねー。
「おい、聞こえているだろ。無視するな、ミリア=グレイス」
ああ、これ振り向かないといけないやつですよね。
「なんですの、カール様」
「お前、最近リディア嬢と仲良くしているじゃないか。リディア嬢が転校してきてからというものお前の成績は落ちていき、剣術や馬術の授業にもあまり顔を出さなくなった。悪いことは言わないからさっさと離れろ」
今まではカール様に嫌われるためだけに勉強も剣術も馬術もやっていただけで、婚約が破棄された今どれもそこそこでいい。というよりあまりよすぎると嫁の貰い手がなくなってしまうのである程度やりすぎないようにセーブしなくてはならないのですがそんなことはカール様に伝える必要はないのでとりあえずは忠告は無視しておこう。
「意味が分かりませんわ。わたくしが誰と仲良くしていようと私の勝手ですわ。では」
「おい、話聞けって。ミリア」
「ミリア、元気か?」
「毎日話しているのですからわざわざ聞かなくてもわかるでしょう。それよりもご学友をお待たせしていますわ」
「ああ、じゃあもういくわ」
なんなのですかね?
あの日を境によくカール様に話しかけられるようになりました。初めは気が向いただけかと思いましたが最近は毎日話しかけてくるようになってカール様との関係が修復されたのではないかと言われるようになってきてはっきり言って迷惑です。確かにカール様は乙ゲーの攻略対象なだけあってイケメンでいい声をしていますが、そんな人に絡まれると目立ってすぐ噂されてしまいます。それに、リディアちゃんがあまりいい顔しないのできっとリディアちゃんの邪魔になると思うのです。どうにかできませんかね。
ある日登校したらリディアちゃんの下駄箱には一通の手紙が入っていました。
そろそろ夏休みになりますし、休み前は告白が増えるのでラブレターというものですかね。転生前はずっと女子校育ちでラブレターなんて見たことがなかったのでちょっとはしゃいでしまいます。
開封した手紙を見せてもらうと
「リディア=ワトソン殿
お話ししたいことがあるので、18時に空き教室に来てください」
とかかれていました。これは告白したいとのことですよね
「リディアさん、それは絶対ラブレターですわ。行くべきですわ」
でも、手紙を見てリディアちゃんはずっと顔をしかめています。知らない相手とか嫌いな相手だったりしたのですかね。
「放課後は先に帰っていてくださりますか」
「え、わかりましたわ」
まあ、仕方ありませんよね
放課後になり、先に帰ろうとして忘れ物に気付いて教室に行こうとしていた時にたまたま聞いてしまいました。
「リディア、ミリアの邪魔をするな」
「あら言いがかりはやめてくださりませんか?ミリアさんの邪魔なんてしていませんわ。あなたこそ最近ミリア様の邪魔ばかりなさるのですね。あなたとの婚約はあなたからの希望で破棄されたと聞きましたが」
あれ?なんかわたしの話をしてるっぽいですね。
よく聞こえませんわ。もう少し近づいてみますか。
「勢いに任せて言ってしまっただけで、まだ破棄はしていない。」
「あら勢いで婚約破棄を言い出すなんてどうなんですの?でも、ミリア様はもう婚約者ではないとおっしゃっていましたわよ。」
話をしているのはカール様とリディアちゃんのような気がするのですが、仲がよさそうですね。これはお邪魔になってしまいますし、さっさと去りますか。
「では、どちらが邪魔をしているかミリアさん本人に聞いてみませんか?」
「ああ、いいだろう。ミリア出てこい」
二人とも気付いていたのですね。
「私とカール、どちらが好きですか?わたしですよね?私のほうがカールなんかよりもずっとミリアさんを幸せにできますわ。元庶民とはいえミリアさんを養うくらい簡単にできるぐらいの財産は持っていますのよ」
「いや、俺だろう?幼少期に婚約してからずっと一緒だったじゃないか。俺は昔からお前が好きで変わってしまったことが受け入れられなくて間違えた選択をしてしまったがもう間違えない。リディアなんかより俺の手を取ってくれ」
「婚約破棄したくせに何を言っていますの」
「お前なんかまだミリアに男だとも思われていないくせに」
「恋愛対象から外れた人に言われたくないですわ」
なんで二人ともこんなに必死なんですかね。というか
「リディアちゃんって男だったのですか」
衝撃的な事実でした。
「「それでどっちが好きなんだ(ですの)?」」
ずっとカワイイ少女だと思っていた友人が私のことを好きで男性で、破棄したと思っていた婚約が破棄されていなかったどころか嫌われたと思っていたのに好かれていたとか。
これはいったいどうしたらよいのでしょうか。
まだ恋をしたことのない私には難しいのでしばらく保留の形にしてほしいなと思いつつ、本気を出した二人にアプローチを続けられ、私が答えを出すのはもう少し先のはなし…




