六話
五歳を迎えた。これからは、剣術・武術の訓練が始まる、これは領地内の5歳以上の男子は義務で、女子は希望により参加という事になっている。まあ、領地内の人口が5000人程だし、領地の面積も広いという事も無いので、集まるのに、さほど苦労はしないみたいである。市町村で言えば、村という規模だからね。
生前、剣道等やっていた僕にとっては、訓練は苦にならなかった。戦国時代ではないけど、他の領家と小競合いがあるらしい。後に、砂糖で儲けた以後、それを奪おうと他の領地から攻撃を受ける事になったのは言うまでもない。
ここで、僕の創造魔法と戦略を遺憾なく発揮した。要衝には鉄条網、境にある山林には罠(獣害対策も兼ねている、落とし穴、滑る坂(無属性魔法スリップの付与による)等)を仕掛け、容易に侵入、侵攻出来ない様にしている。後、画期的だったのは銃の開発である。正直、火薬の開発は容易でなかったし、技術の流出を避ける事、保存が大変な為に火縄銃レベルだけど、弾丸の形状改善等で射程が伸びたので、実用化された。魔法を使える者に対しては、魔力による発射、弾丸に魔力を込める機構を取り入れた魔銃というものも開発した。勿論、自衛や護身用のみならず、猟銃としても用いられた。
そして、訓練においても、射撃の訓練が取り入れられた。僕自身、射撃の経験は無く、なかなか安定しなかったけど、徐々に安定し、実用レベル迄至った、それは僕だけでなく、皆、そうだった。これらもあって、他の領地との小競合いは無くなった、というか……、避けられた。
五歳を越えると、社交界に顔を出さないといけないらしい……。
ここ、ヤマト皇国においても、世界に倣い、ダンスが出来る事も素養の一つとなって久しいらしく、ダンスの練習が始まった。相手は、まず年齢が近い同士で、それは有力者の娘さんだったり、一般住民の娘さんだったり、である。僕は、勿論、生前に、ダンスの経験というのはフォークダンス位しかなく、社交ダンスの経験は無かったので、凄く苦労した。自分は、四男だから社交界に出なくて良いでしょ?なんて言ったけど、バッサリ斬り捨てられた……。
相手の少女は勿論だけど、僕も緊張しているんだよね……。講師の女性が、動きが固いとかエスコート出来てないとか……、叱咤される事ばかりだった。相手の少女も、僕が、四男坊とは言え、領家の息子であるから、粗相が無い様に、ってガチガチになっていた。
「そんなに緊張しないで? 失敗したからって、とって食う様な事にはならないからさ……。それに、僕達は同年代でしょ? えっと……、君の名前は?」
僕は、緊張を和らげようと名前を訊ねた。
「はい……、真由香と申します……」
少女は答えた。
「真由香ちゃんね……、僕は玲央……、玲央って呼んでよ?」
僕は、笑顔で少女にお願いした。
「玲央……さん?」
少女は戸惑いながら答えた。
「ウーン……、せめて、君にして貰えないかな?」
「玲央……君」
「ありがとう! 真由香ちゃん!」
僕は笑顔で礼を言った。
「はぅ……」
ポッと音を立てる位の勢いで少女は赤面した。
「お坊っちゃまは罪作りな方ですね……」
講師の女性がボソッと呟いた。
「未成年女子を赤面させた罪で……」
「いや……、それは罪じゃない……ですよね? というか……、違うと……」
「鈍感罪っていうのも作ろうか?」
「鈍感って……、何ぞ、ですか?」
僕は戸惑いっぱなしだった。
「そういうのを言うんだよ? わかるかな? わかんねえだろうな……」
「あの……、ダンスの練習は……?」
気を取り直した少女が尋ねていたが、暫く、聞いている者は無かった。