プロローグ
某県農業高校卒業を間近に控えた僕は、肥料工場への就職も決まり、後は、新年度を迎えるだけ……、そう思っていた。
卒業式を終え、帰宅途中の僕は、コンビニに寄ったのだった。買う物を決め、レジに向かった所、その凶行は起こった。
「おい! 金を出せ!」
店内に飛び込んで来たヘルメットを被った男がおもむろに包丁を取り出し、レジにいる店員を脅した。
「(こんな時に、強盗かよ! 包丁さえ手元から外させれば、何とかなる……かも)」
僕は、小学校時分から、空手、合気道、剣道を習って来たが、試合や組み手以外の相手は初めてで、それが悲劇を招いたと、今となっては思う。
僕は、思いきり、背後から、脇腹に肘鉄を食らわせた。
「ぐっ……!」
男が怯んだ所で、腕の関節を捻った。
「ぐあっ!」
男は思わず、包丁を落とし、僕は、それを蹴飛ばした。
「今の内に、警察を!」
「はい!」
僕は店員に呼び掛け、男を抑え込んだ。
しばらく経ち、警察の車両がコンビニの前に着いた。ここで、警察が着いた事による僕の気の緩みと、男の最後の悪あがきにより拘束から男が抜け出してしまった……。
「このガキ!」
男は包丁を拾い、僕に真っ直ぐ突進し、包丁を僕の胸に突き刺した!
「グハッ!」
僕は、激痛と共に、肺を貫通されたのか、息を吸うのも苦しくなった。そのまま、男は包丁を抜き、反対側の胸、腹、鳩尾と何度も突き刺した。僕は、焼けつくような痛み共に、失血により意識朦朧となり、やがて、意識は途切れた。
「(僕は……、もう死ぬな……。父さん、母さん、ごめん!)」
「(少年……、転生の機会を与えよう……。お主には……、創造魔法と無属性魔法及び身体能力のチートを与えよう……。尚、今、話された事は、転生と共に記憶から抹消される。それでは、異世界生活を満喫したまえ)」