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攻略対象者番外 『攻略対象者:前原高菜の思考』

前の場所で私のどんくささがたたり、いじめに遭うことになった。

あの時は私が悪かったとは思う。

だけれど、謝ったのだから許して欲しかった。

それは入学式が始まる直前だった。

旗靡さんは隣の席だった。

「よ、よろしくね」

人見知りだった私は、出遅れないように、とりあえず隣の人に話しかけた

「うん、よろしく」

隣の人は、愛想よく返事してくれた

「えっと…」

旗靡はたなびき園だよ。旗が靡くって書いて、旗靡。そこに楽園の園。」

「そうなんだ、いい名前だね。わ、私は、前原高菜だよ。」

「うん、一年間よろしくね。高菜ちゃん」

その会話から一年後、悲劇を起きた。

霜井戸あきらという青年が距離を縮めてきた。その時、私は自分が攻略対象であることが理解できた。

悲劇、それは攻略対象者としては緊張の一瞬であり、嬉しい場面だろう。

事実、私も嬉しかった。

「あのさ、高菜。俺、前から…ずっとお前のことが好きだったんだ」

その告白セリフを聞いて、私はその場で死んでしまうくらい嬉しかった。

だが、他の攻略対象者としては面白くないのだろう

私は、園ちゃんに屋上に呼ばれた。

「なんで、生きてるの?愚図、死んでよ、お前にわかる?好きな人を取られた気持ちをさ…?」

「ごめんなさい…!!だから…まってよぉ…いやぁぁぁぁ!!!!」

私は屋上から突き落とされた

もちろん死んだ。

そして、電脳世界バグに飛ばされる前に聞こえてきたのは、現実世界リアルからの言葉

「ふぅ、これで高菜のルートは全攻略。死んだのは愉快だったな」

そして笑う声。

あれから、私は攻略されることを恐れた。

攻略されると思ったら、場所を変えようと試みたが、図書室フィールドから出れなかった。

「助けて」

そう呟くと、来たのは園ちゃんだった

助けてくれることなんてなく、私はいじめられることになった。

もちろん、外見的傷はセーブをしたらなくなる。

次の攻略者は霜井戸孝乃という名前にしたらしい。

そして傍らにいるのは、幼馴染の上野さんだった。

いつでも優しくしてくれる上野さんは、すごく好きだった。

けれど、この人はあの上野さんとは違うかもしれない。

だから怖いのだ。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

考え事をしていると先生が話し始めた。

「黙れ、知らせの時間やぞ!あー、高菜と七音は図書委員会があるから1−5に集合な」

…やだなぁ、怖い、何されるんだろう?

「何するんですか?」

「飾り作りと本作りや、高菜と七音でやってくれよ。」

本作りはいつも、上野さんがやってくれてたんだよね

?上野さんがキョロキョロしてる

私を探してるのかな?

いや、でも私じっと見られてるけど、あれ、睨んでるわけじゃないよね?

やだ…怖いなぁ

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「やめて!」

「やだよ、あんたが私のものを取ったんだからなぁ!!!」

「もう、チャイム鳴っちゃうから!!」

髪を切られた…うぅ、変になっちゃったなぁ

「チッ、覚えてろよ」

「う…ひっ、なんでぇ…!」

泣くことしかできない自分にだいぶ呆れている

どうすればいいのだろうか、あの頃のように仲良くなりたいのにな…

「おい、台無し」

「うるっせぇ、美少女」

「褒め言葉じゃねえかw」

突然、声が聞こえてきた

それは少し低い声をした女性の声だった

(見られる前に、逃げなきゃ)

私は、とっさに誰かいるかも確認せずに走り出した。

すると、誰かにぶつかり、相手を転ばせてしまった。

その時、警戒心と恐怖が大きく渦巻いていたからだろう

「あ、ごめんね」

という相手の横をごめんなさいと小さな声で呟いてから、走り去ってしまった。

〜・〜・〜・〜・〜・〜

やってしまった…

相手は多分、上野さんたちだ。

どうしよう…いじめられるかな…?

先生の話は耳から通り過ぎていく

「火事だぁ!」

という、教室に響き渡る声でやっと我に返った

少し慌ててしまったが、どうやら台風の件について話しかったからだろう

ハァと小さくため息をつく

「えっと、前原さん。今日の図書委員活動どうしよっか」

えぇ!?待って、待って、怖い…とりあえず、先生に聞きにいくしかないよね?

「…先生に、聞いて、みるね」

怖くて、途切れ途切れだけど、聞こえてるから大丈夫だよね?

私はタタタッと先生の前に小走りで行き、聞く

どうか、ありませんように…!

「ん、ああ、やってくれるんなら助かるけどなぁ」

あっ、断れない…!

どうしよう、どうしよう

そんな私の焦りなど知らず、先生は私に質問してきた

「あかんか?なら、だいじょ」

「だ、大丈夫です。やりますので!」

小さい声だろうが、結構頑張った

先生の話を遮ってしまったことになど、その時恐怖の念しかなかった私は気付かなかった

「お、おう。じゃあ、頼むわ」

「はいぃ…」

やってしまった

もう、伝えるしか…

そうだ!いいこと思いついた!

「あの、あの!」

何度か呼んでいるが、考え事をしているせいだろうか

五回目にしてやっと気づいてくれた

「あ、ごめんね、どうだった?」

よかった、無視かと思って、泣きそうだった…

「えっとね、あるらしいんだけど、私だけで終わりそうな仕事なの、帰ってもらっても大丈夫だよ」

これでどうだ!帰って!帰っていいんだよ?

けれど、上野さんは突然私の手を握り、にこりと微笑んみながら言った

「一人でやるより二人でやる方がいいよ!私も図書委員だし、やらなきゃ職務放棄だもん!

一緒にがんばろ!」

…職務放棄かぁ、その発想はなかったや

でも、優しい人かな?

私は少し、胸の内が暖かくなっていることに気付かなかった


「この本と…ここの本お願い。」

「うん、任せて!」

淡々と仕事をやってくれている

少し時間が経った頃、無言が辛くなったのだろうか

「あのさ、前原さんの趣味って何?」

前原さんって呼ばれるのちょっとむず痒い…

「…高菜でいいよ、えっと、趣味っていうのか、分からないけど、本を読むのが、好きだよ」

趣味で読書っていうのはふざけてるって、誰かが言ってたからなぁ

「そうなんだ、どんな本がおすすめか教えてくれない?」

おすすめって言われてもなぁ…

私の好きなジャンルはファンタジーと恋愛だもんなぁ…

やっぱり、恋愛系おすすめした方がいいかもしれないけど、上野さんだったら…

「…決意の花弁」

「あっ」

え、なに?なにがあったの…!?

すると、彼女は恐る恐るという態度で聞いてきた

「あのさ、もしかしてー…続き借りてる?」

「あ、一巻借りてる人?」

「うん…実はね、えへへ」

彼女は嬉しそうにニコニコと微笑みながら、持っている本を愛おしげに抱いている

(本当に本が好きなんだろうなぁ)

私もホッと安堵の息を吐いた

「よかった、借りてるのがいい人で…たまにね、本がなくなるの」

「そうなんだね…なんとかしなきゃ!」

「ダメだよ、なんかしたらね、もっと激しくなるの」

「うーん…なんとかできないかな?」

「どうだろう?」

私は気づけば、淡々と楽しく話していることに気がついた

ここの上野さんはきっとまだなにも知らないんだろうな…

いいなぁ

「ごめんね、すこし…おトイレ行ってもいいかな?」

「うん、大丈夫。あと、これだけだから、先帰ってもいいよ」

私のことなんか気にしなくていいのになぁ

「ダメ!全部返すまで、私帰らないから!じゃあ、行ってくるね」

頬を膨らませて、怒るように宣言した後、彼女は少し笑い走り去った

…よかったぁ!いい人だったんだなぁ!

私がニコニコしていると、私の脳から機械音声が響いた。

【前原高菜の好感度、現在6です。】

えっ、まって…霜井戸くんには会ってないのに?

なんで、好感度が上がってるの?

まって、じゃあ…私は”誰に攻略されてる”の?

「懲りないよねぇ、お前さ」

「ひっ!?」

この声は私の脳裏に焼き付いている

『なんで、生きてるの?愚図、死んでよ、お前にわかる?好きな人を取られた気持ちをさ…?』

一緒なんだ、あの時の声と

私は後ろを振り向かずとわかっている

「そ、園ちゃん」

「キモチワリィんだよ!テメェの口から二度とんな声聞きたくねぇんだよ!チッ!」

「怖いから、やめてよぉ…!」

「大丈夫、大丈夫。今からやることわかってんだろ?!」

「いやぁぁぁ!!!」

助けて…!助けて!上野さん!!!

そんな助けもむなしく、私の体は傷つけられていく。

「や、やめて!」

「ちょっとぉ?何口答えしてんのぉ?」

「そうそう、叫んでもいいのよ?たちゅけてーままーってさぁ」

「あはははは、超ウケるんだけど」

「やだぁ、やめてよぉ!」

「前原さん、ひどぉい。私たち仲良くしてあげてるだけじゃない?」

だが、私は少し期待を抱いていたのだ、きっと誰かが助けてくれると

私のその願いは数秒後に叶うことになった

「ちょっと!なにしてるの!?」

「うげ…って上野ちゃんじゃーん?なーにぃ?混ざりたいのぉ?」

取り巻きの一人がケラケラ笑いながら、上野さんに話しかけた

だが、その言葉を無視して、上野さんは私に手を伸ばしてくれた

「大丈夫!?なにされたの?」

自分で望んだはずなのに、ここに上野さんがいることが怖い

「だ、大丈夫だから…離れて…」

弱い力で押すが、彼女は一向に離れてくれない

「ちょっとぉ、無視ィ?ひどぉい、ねぇ園ぉ、一緒にやっちゃう?」

「いいねぇ!ね、園やっちゃおうよ!」

「…いいわよ、やりなさい」

悪魔の決断は突然だった。

だが、私が止めるすべもなく、上野さんは私の腕を掴み走り出した

「高菜ちゃん!」

「えぇ?!」

「職員室近くまで走るよ!」

「う、ん!」

逃げるっていう道は、私にはなかった

体力がないからだ、だけど彼女が強く握っている手を見て、私はなぜか彼女を信じなければならないと思ったのだ

【前原高菜の好感度、現在8です。】

…嗚呼、やっと気づいた。

何故気づけなかったのだろうか…きっとありえないからだろう

(だって、攻略対象者が攻略対象者に攻略されるなんてありえないから)

「ごめん、持たない…!」

彼女の体力は私と同等だ。

それなのに、彼女は私にはないものを持っている気がして、悔しくなった。

(園ちゃんもこんな気持ちだったのかな?)

胸がぎゅーってなって、とっても痛くなる

これはなんという感情に当てはめればいいのだろうか、私にはわからない。

「もう、大丈夫かな?ごめんね、いきなり」

「大丈夫、でもあんなことしなくてよかった。貴方も同じことになる。」

涙がボロボロとこぼれた、まるで心臓が潰れそうなのだ

「蹴られて、殴られて、髪も切られて…明日はあの子たちから逃げてね。」

なにかに縛られて、そのまま死んでしまいそうな勢いだ

けれど、私の心情など露知らずに、彼女は目に決心を抱きながら

私の目をじっと見据え、強く言った

「逃げない、絶対に逃げない」

「だって…ひぐ、痛いんだよ?ずず、ボロボロになった上野さん見たくない…」

まだ、言い訳を続ける私に微笑み、言った

「私は、痛い思いはしたくない。けどね、お友達をほっとくほどの裏切り者じゃないの。

ねぇ、高菜ちゃん。お願い、その時だけでもいいから…守らせてくれないかな?」

昔夢見た王子様を思い出した、子供の頃のかすかな恋。

お姫様に憧れた、あの日の思い出。

『私ね!お姫様になって、王子様に迎えに来てもらうの!』

あの日の私へ

王子様みたいなお姫様に私は助けられたの、ずっとずっと、憧れていたけれど

私には十分だから、あなたがいるというだけで私はずっと…ずっと幸せでいられそうなのだから。

「ありがとう…お友達か、えへへ、ふふ」



【おめでとうございます!前原高菜さんの攻略を成功しました!】



どうか、私を連れ去ってください。上野さん。







おめでとうございます!前原高菜さんの攻略を成功しました!



(私の中のイメージ)高菜ちゃんは、可愛いですよ。

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