第四 『図書委員日誌』
「この本と…ここの本お願い。」
「うん、任せて!」
この5冊を片付けたら、穂波のところへ行こう
喋ることがないと暇だな、趣味とか聞いてみようかな
「あのさ、前原さんの趣味って何?」
「…高菜でいいよ、えっと、趣味っていうのか、分からないけど、本を読むのが、好きだよ」
やっぱり、本が好きなんだな…
「そうなんだ、どんな本がおすすめか教えてくれない?」
図々しいかもしれないけど、仲良くなりたいしなー
「…決意の花弁」「あっ」
俺の初めて読んだ本だ、続きがなかったんだ
もしかして
「あのさ、もしかしてー…続き借りてる?」
「あ、一巻借りてる人?」
「うん…実はね、えへへ」
俺がそう返事すると、高菜ちゃんは嬉しそうに笑った
「よかった、借りてるのがいい人で…たまにね、本がなくなるの」
あー、たまにあるよなー…何度言っても屁理屈言って聞かない奴
俺なら、煽りに煽ってから、痛い思いして、先生にチクるね
そいつからは目の敵にされるけどな
「そうなんだね…なんとかしなきゃ!」
「ダメだよ、なんかしたらね、もっと激しくなるの」
「うーん…なんとかできないかな?」
「どうだろう?」
あ、やばい、本を片付け終えた…
「ごめんね、すこし…おトイレ行ってもいいかな?」
「うん、大丈夫。あと、これだけだから、先帰ってもいいよ」
にこりと微笑み、俺に帰宅を促すが、残っている本は場所も全て違い、しかも15冊程度も残っている
「ダメ!全部返すまで、私帰らないから!じゃあ、行ってくるね」
そう言うと驚いた顔で、だが嬉しそうな声で、うんとだけ返事をされた
(中庭だったよな?)
(おう)
(まさかの通じた)
(あったりめぇだろ、だって俺らは…竹馬の友だろ?)
あ、ぶん殴りたい…つか、なんでこいつ走れメロス知ってるんだ?
ヤギにも知能が満たない馬鹿だったはずだぞ?
いや、そこはどうでもいいんだよな
「で、何?」
「何って言われてもー…えっとな、俺さ、サポート係じゃんか?」
あー、言ってたな
「で、それがどうしたんだよ」
「それでさ、お前の好感度も現れたんだよ」
…常識的に考えたら、俺の好感度はあって当然だろ?
だって、俺も攻略対象なんだからな
「そういうことじゃなくて、お前が攻略しようとしてる子の好感度が現れたんだよ」
は?ゲームのシステム上、それはあるのか?
「ありえないはずなんだよ。だから、お前が攻略しようとしてるのは、ゲームの通路的には合ってないけど、この世界からの離脱条件としては合ってるかもしれないんだよ」
「…わかった。頑張る。とりあえず、現在の状況報告よろ」
「はいよ、言われると思ったから、俺の視点から見えてるの写したから。」
穂波から紙を渡された
その紙には、穂波アドバイス!魅惑のあの子を落としちゃおう!と書かれていた
(ダサい…)
(うっさい)
高菜ちゃんの欄には、ハートが三つ見える
(上限は10個だから、それは通常通り)
なんか、テレパシーっぽいので話すのやめてくんねぇかな?
「前原高菜:3、旗靡園:2、小崎古味:4…園ちゃんは、あの件があったからわかる。
けど俺さ、小崎さんだけ会ってないんだけどさ、なんか上がってない?」
「あー、それはな、興味がある程度だから気にするな。あと、古味ちゃんを攻略するなら、選択肢に気をつけろ。この世界もろとも俺らは滅びかねないからな」
まじか、おしおし、やってやろうやってやろう…俺がんばるよ
「そんだけだから、あと戻らなくいいの?」
そういえば、俺トイレだったな
「もうそろそろ戻ったほうがいいな、じゃ」
「おう、じゃあな」
一心同体の親友に背を向けて、長い廊下を走る
まだ、帰ってないよな?
やっと、図書室付近までやって来た時だった
「や、やめて!」
「ちょっとぉ?何口答えしてんのぉ?」
「そうそう、叫んでもいいのよ?たちゅけてーままーってさぁ」
「あはははは、超ウケるんだけど」
「やだぁ、やめてよぉ!」
「前原さん、ひどい。私たち仲良くしてあげてるだけじゃない?」
図書室内部から聞こえてきた声は、女子たちの声だった
拒絶する声は、明らかに高菜ちゃんの声だった
俺は慌てて、中に入った
「ちょっと!なにしてるの!?」
「うげ…って上野ちゃんじゃーん?なーにぃ?混ざりたいのぉ?」
俺はそいつを無視して、高菜ちゃんに歩み寄った
「大丈夫!?なにされたの?」
「だ、大丈夫だから…離れて…」
弱い腕力で俺を押そうとする
「ちょっとぉ、無視ィ?ひどぉい、ねぇ園ぉ、一緒にやっちゃう?」
「いいねぇ!ね、園やっちゃおうよ!」
「…いいわよ、やりなさい」
俺はその話を聞いて、俺も一緒にやられるのかと考えた
高菜ちゃんを守りながらやるとしても…無理がある。
守りきれない可能性がある、だから
「高菜ちゃん!」
「えぇ?!」
俺は高菜ちゃんの手を強く握り、走り出した。
「職員室近くまで走るよ!」
「う、ん!」
ひどく小さな声が聞こえた。
体力は大丈夫だろうか?
すこし、息が荒い気がする…
七音の体力ももやしなの忘れてた
「ごめん、持たない…!」
俺らは近くの教室に入った
「上野ちゃぁん?どこぉ?叩きのめすから出てよぉ」
「チッ、あんたら遅いのよ」
「嬢様こわぁい、まぁいいや明日にしようっとぉ」
「そうね」
会話がほんの少し聞こえて、そのあと、出口の方へと足音が消えた
「もう、大丈夫かな?ごめんね、いきなり」
「大丈夫、でもあんなことしなくてよかった。貴方も同じことになる。」
泣きそうな顔でつぶやいた。いや、目からは涙が溢れていた。
「蹴られて、殴られて、髪も切られて…明日はあの子たちから逃げてね。」
「逃げない、絶対に逃げない」
俺は、ついやけになって即答してしまった
その様子から、高菜ちゃんはもっと泣き出した
「だって…ひぐ、痛いんだよ?ずず、ボロボロになった上野さん見たくない…」
どうやら、少しは好感度上がってる気がするが、どうだろうか
「私は、痛い思いはしたくない。けどね、お友達をほっとくほどの裏切り者じゃないの。
ねぇ、高菜ちゃん。お願い、その時だけでもいいから…守らせてくれないかな?」
すると、高菜ちゃんはあっけらかんとしていたが、すぐにフフと笑った
「ありがとう…お友達か、えへへ、ふふ」
…あー、わかった。オーケーオーケー、穂波が攻略させたがらなかったのがよーくわかった
今度は俺があっけらかんとしてしまった。
その時だった、俺の頭の中で音が鳴り響いた
テレレレー
『おめでとうございます!前原高菜さんの攻略を成功しました!』
ん?友達になるだけでいいのか?なら簡単だな
とりあえず、明日のことについて考えなきゃな
前原高菜攻略完了