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番外編『メッタ刺しバレンタイン』

「こーうちゃん!おはよう!」

「おはよう、七音はいつも元気だな。」

「うん、こうちゃんがいつも私にパワーをくれるからね!」

「あはは、なんだそれ。」

非常に良い朝だ。

隣にいる美少女は幼馴染の七音だ。

そして、今日はなんとバレンタインだ。

きっと七音からも貰えるだろう。

なんて言ったて、ここは乙女ゲームなのだから。

客としても運営としても、恋愛ゲームで、イベントは欠かせない。

だが、俺らとしては最悪だ。

別に好きでもない奴にチョコを渡され、チョコを渡す。

先ほどの会話も、脳内だとこうだ。

(今日もクソみたいな顔ね)

(顔は良いくせに、中身はよくねぇお前に言われたくねぇな)

(もっと愛想よくできないわけ?だから、好きな子に振り向いてもらえないんだよ)

(そりゃ、お互い様だな)

さて、この会話で少女漫画の嫌よ嫌よも好きのうちを思いついたやつは何人いるだろうか。

残念ながら、俺ら二人はどちらも同性が好きなのである。

思春期ならではの悩みだが、乙女ゲーなのでそんなのない。

攻略対象のケツをずっと追いかけまわして、早10年。

このゲーム、10周する奴も普通にいるから、10年くらいは経ってるだろ多分。

「七音〜!おはよー!」

「きゃっ、もう明日ったら、おはよう。」

「こうちゃんも!おはよ!」

「ああ、おはよう」

「ふふ、お二人さんは今日も熱々ですな〜」

「も、もう、明日ったら」

「じゃ、私は会長の手伝いもあるからじゃーねー!」

「頑張ってねー!」

俺の会話一文だけとかあるか、普通ねぇわ。

今、こいつ、照れる場面だったのに、隣にいるんじゃねぇぞって般若の顔でこちら睨みつけてるし、こえーわ。もう無理、大好きなあの子に早く会いたい。

と言っても、会えるのは、ロード中ぐらいだしなぁ…。

「ちゃ…こうちゃ…こうちゃん!」

「うわ!」

「もう、聞いてる?」

「ああ、ごめん、考え事してて…」

「コロ…あのね、今日、バレンタインでしょ、だから、こうちゃんに…」

今、コロすって言いかけたのちゃんと聞こえた。

この耳ではっきり聞いた。

怖い、もう逃げたい。

「今回は頑張って、フォンダンショコラ作ってみたの…」

『七音手作りフォンダンショコラを入手した』

あ〜、やめて〜、ガバスチル特有の突然の手絆創膏だらけなのに、立ち絵に絆創膏がないはやめて〜。

「…ありがとう。」

「ううん、どういたしまして!

あっ、私、今日日直だった!ごめん、先に行くね。また」

「うん、また」

そして、俺は、フォンダンショコラを光の速さでカバンへしまった。

「霜井戸くん、おはよう」

「か、いちょう、おはようございます…」

最悪だ。

というか、明日、明日さえいればいいんだ。

って、先に行ってる〜〜、泣いた。

「どうしたの?あの女どもに何かをされた?」

涙を拭われる。

現在進行形で、悲しいだけなんです。

気にしないで、明日の元へ行って。

「明日が、待ってますよ」

「あら、そうなの?

せっかくのバレンタインだし、帰り私の家に来ない?」

「いえ、せっかくのお誘いですが、母や妹がパーティーをするらしいので…」

もちろん嘘だ。

「目が泳いだ。」

「へ?」

「ねぇ、嘘をつかないで、目が泳いだの。見たわ。私は見た。何もあなたをとって食おうというわけではないのよ。あなたのために目の前でチョコを作るの。ああ、あなたが見てくれるだけ、心臓がどくどくするの。これはもう恋以外の何物でもないわ。大好きよ霜井戸くん…」

「…」

一歩引けば、あちらは一歩進む。

やだー、助けて。

別にヤンデレ好きとかメンヘラ好きとかじゃないし。

どうすりゃいいんだよこれ、まだ話とまんないよ。

「…おはよ」

「あら、旗靡さんと前原さん」

「…」

まさに女子高生という感じの少女とおどおどした少女がいる。

大集結しないで。

「これ、一応渡してあげる。」

「あの、わ、たしも…この前のお礼…」

「私は私がバレンタインのプレゼントです。お好きになさって?」

ああ、こんなイベント大っ嫌いだ。



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