第十 『滲む』
「…犯人?」
「事件っていうか…多分、明日ちゃんも分かってると思うんだけど…」
ちらりと視線を明日にやる。
だが、何を言っているのかさっぱりという顔をしている役立たずしかいなかった。
「た、大変だったもんね、いろいろお仕事お手伝いしてたし…」
「ま、まぁ、うん。ごめんね」
「ううん、大丈夫だよ。お話の続きするね」
穂波が仕事ぉ?
んなわけあるか、自分から進んで掃除もしたことない奴だぞ。
生粋の面倒くさがりだ。
でも、高菜ちゃんが言ってるしなぁ…。
どういうことだ…?
「クラスで募金してたの覚えてる?」
あー…そんな話してたなぁ…シマントスが…。
「ふふっ…」
明日から小さく少し笑いが漏れた。
おそらく、あの時を思い出したからだろう。
明日を無視して、頷く。
「それでね、募金をしようとしていた子の財布がなくなっちゃってて………他の子達がいじめをしてた園ちゃんじゃないのかって…」
「なるほど、確かに事件ではないけど…」
というか、穂波はなんで黙りこくってんだ…?
「私、園ちゃんは盗ってないと思うの!」
少し目元に涙を溜めながら、顔を上気させている。
「だって、園ちゃんいい子だったもの」
いい子”だった”?
中学が一緒だったのか?
「それに、いじめをしてたみんなも園ちゃんを犯人に仕立て上げてて…」
次は、園がいじめられることになった。と悲しそうに告げた。
「私…どうすればよかったのかな…?
声を出そうとしても怖くて出せないの。園ちゃんは違うよ、いい子だよって言いたいのに。」
ボロボロと涙をこぼす。
いじめられていた子がいじめをしていた子に対して、こんなに泣けるだろうか。
俺なら無慈悲に現実というものを叩きつける。
「俺たちも協力するからさ。全部話してくれないか?」
できるだけやさしく微笑んだつもりだった。
眉は上がっているかもしれない。
助けたら、謝らせる。
そしたら、俺にもそいつを助ける理由が出来るのだから。
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