第* 『現実と虚像のパスワード』
目が覚めた。
時折、聞こえる音が心地いい。
白い部屋の中、棚の上にある花は色とりどりで目立つ。
「あー…」
やることがないので、声を出してみる。
「あれ…?」
男の声、手を見ると、ゴツゴツしている。
「私…?」
「あはは…、私って誰…?」
隣から、声が聞こえた。
男の人の声。
「ねぇ、そこにいるの…誰?」
話しかける。
「…七音、助けて…。コウちゃん…かいちょ、う…やだよぉ…」
返事は返ってきていないのかもしれない、代わりに返ってきたのは…
「私の名前…誰なの?」
隣のベッドにかけられている、カーテンをめくると、そこには一人で笑い泣いている、ふわふわの髪をした男の人がいた。
「ひっ…!」
思わず、カーテンから手を離す。
「誰…?」
私の存在を認識させてしまった。
「や、ヤダ…こないで…」
「だ、れ?七音?コウちゃん?会長?…それとも、私の体?」
カーテンが相手によって、思いっきり破られる。
「返して…!私のぉぉ…からだぁぁ!!返せ”!!あ、あ”ぁぁ、イヤァァァァァ!!!!」
叫ぶ、叫ぶ、ひたすら叫んでいる。
「誰なの…?!ねぇ…!」
なんで、叫んでいるの?
強い気持ちで溢れる。
私がそう言うと同時に、ピタッと止まった。
私の方に顔を向ける。
「あなたが…新しい…主人?」
そう、問いかけると同時に笑顔を作る。
「私の名前は、『宇保町明日』!よろしくっ!!」
ニカッと、微笑んでいる。
だが、目は濁り、まるで死んでいるかのように見える。
私は、気づいた。気づいてしまった。
それは、親友だということに。
「明日なの…?」
「うん!…あれ、違うのかな…?『高岡穂波』?それとも、宇保町明日かな?どっちなんだろう…?」
「明日!!」
私は、混乱している親友を抱きしめる。
「ヤダ、触らないで…。汚い手で私に触れないで…!」
じたばたと暴れ、今にも叫びだしそうになっている親友を抑えて、泣きながら叫ぶ。
「私だよ…?七音だよ?あなたの大親友の上野七音だよ…!」
「あっ、あ、あぁ…?七音?本当に?」
親友の目から涙が溢れる。
「うん、私だよ…!!」
「…あぁ…、七音…、ねぇ、外を見て」
親友の目からは涙が溢れている。
それは恐怖の涙ではない、だが、声は現状を理解できているような声ではない。
「外…?」
私は、白い部屋を見渡す、だが、窓は見つからない。
「天窓かな…?」
上を見る。
真っ赤、赤い、赤い。
生きているかどうかを疑ってしまうくらいに、その色は私を不安にさせる。
「ねぇ、私、生きてる?私って、明日で合ってるの?」
「…大丈夫!生きてるよ!絶対に、だって、明日こんなにもあったかいんだもん。」
頭をゆっくりとつける。
「私も、明日も、あったかいんだよ。生きてるって信じてあげなきゃ…、ね?」
「わ、あ、私は…」
「明日だよ。あんな笑顔、明日にしか出来ないもん。これからも、見せてよ。その笑顔で、皆も笑顔になってたでしょ。私もそうだよ。」
ニッカリと歯を見せて、笑う。
明日は、ホッとしたように笑う。
「私たち、なんで、男になってるんだろう…?それに点滴もしてるし…」
「私の方は…、『飯岡健』さん?」
私は、ネームプレートを見ながら、答えた。
そして、私は小さく呟いた。
「ここって、どこなんだろう…」
小さな不安、後に大きくなる不安。
どうすれば、元に戻れるの…?




