一周目幼馴染の思い出話
クリア特典 『1周目七音譚』
前髪を整えていると、後ろから影がさす。
「もうっ!コウちゃんてば。」
▽「ごめんごめんっ!」
「次やったら許さないからねっ!」
そう言いながら、一緒に登校する。
隣を歩いているのは、霜井戸孝乃。
私の幼馴染だ。
そして、私は今回が初めての上野七音だ。
前の私は、更新でバグが見つかっちゃって、消えちゃったみたいだ。
今が初めて会ったような気がする主人公にドキドキしてしまう。
▽「ずっと見て、どうしたんだ?」
「ん〜、かっこよくなったなぁって、なんちゃって。
……でも、大きくなったよねぇ。」
ほら、こんなに身長差出来ちゃった、と手を水平にして振っていると、バランスを崩しかける。
「きゃっ!」
「▽七音っ!」
間一髪のところで、コウちゃんが私を支えてくれる。
力強い腕に、自分とは違う性を感じて、すぐに離してもらおうとする。
「あ、ありがと」
▽「七音、顔赤いよ。体調悪いんじゃないの?」
「ち、違うよっ!」
もうっと、顔の暑さを誤魔化すように走り始める。
「行こっ!遅刻しちゃうよ!」
コウちゃんは走り出した私を追って走る。
そうして、私たちの高校生活は始まった。
「で、今の私が完成よ。」
「ねるねるねでもやってた?」
「やだ、あんな激甘な私の方が良かったかしら。
今からでも遅くないわよ?」
腕を絡ませると、幼馴染の顔が顰められていく。
面白い。
「勘弁してくれよ、お前はもう悪友みたいなもんなのに。」
「そうね、私もごめんよ。」
パッと腕を離し、遠くから手を振ってくれる明日の元へと向かう。
コウちゃんは、明日へと駆ける私を見て微笑んでいる。
どうやら、この男は私たちには興味ないようだから。
「悪友さん、行きましょう。」
「おう。」
「え、ワルいダチってこと?!」
「誰よ、明日に変なこと教えたの。
……おい、目を逸らすな、クソ男。」
「痛い痛い痛い」
私の全力つねりを痛いというが、まったく痛がっている様子はない。
ただの茶番、でもただの恋愛物語より退屈はしない。




