アビリティ
「僕腹が立ってきました。あなた勝手ですよ。自分のギルドのために人攫いしてるようなものじゃないですか!」
「じゃもとの世界に何か未練でも?」
(あれおかしいな私の召喚そういう不満ほとんど無いんだけどな…)
「カレーライスが食べたい。ラーメンが食べたい。味噌汁飲みたい」
「はい?」
「未練ですよ!」
「うちのギルド召喚者だらけですので多分その料理なら食べられると思いますよ」
「じゃ何のために僕を召喚したんですか。これじゃ価値が落ちてしまいますよ?」
(未練とは180度ぐらい逆の不安の気もするけど…)
「それがそうでもないんですよ。特に日本人はいないんですよ」
「それすごいんですか?」
(文句多かったくせに食いつき良いな…)
「いえ別に…」
しばらく会話が途切れて間が空いた。
(いやー参ったな。また失言…)
「どこから来たか?じゃないんですよ。異世界から召喚されると付与される能力ってのがあるんですよ。私はこれをアビリティと読んでいます。召喚した人に特有の能力なので誰一人かぶりが無くて価値の無い人なんていないわけです」
「それは素晴らしい。で僕の能力は?」
(ヤマト確か異世界に来た不安とかそういう話してなかったか…、いや良いんだけどやっぱり私の召喚成功してる飯が大丈夫だから頭切り替えたのかな?)
「実はそれは私は分からないんですよ。自分にどんな変化があったか?はオープンと唱えればいろいろと依頼に必要な情報が手に入るはずです。ヒントぐらいはそこにあると思います」
ヤマトはオープンと唱えると空中に様々な情報出てきた。
(なるほど所謂ステータスって奴か、アビリティがどれなのか?分からないけど、小まめに見て変化した項目を調査してみるか)
「良いでしょう。冒険者やりましょう。僕も不本意ではあります。なんと言うかマスターあなたの姿勢が気にいらない。だってあなたばかり得するじゃ無いですか?いろいろ依頼がありますが、これ仲介料を取ってるんでしょ?僕らにはいきなりこんな場所につれてこられて何をして良いか?分からない。冒険者になるかしか選択権が無い」
「別の仕事紹介しますよ?食堂もやってるのでまずはそこで働きますか?うちの食堂で出される召喚者独特の奇抜なメニューと言うのが人気なんですよ。人手は足りないぐらいです」
「たった2つじゃないですか!」
「あくまでうちでやとうならいろいろ召喚者に詳しいから気遣いも出来るという事で便利かと思ったからです。町の方でも知り合いに頼んでみますか?」
「そもそも」
「冒険者やりたく無いのですか?」
「いやアビリティ試してみたいですね」
「なら良いじゃないですか…」
僕は上手く丸め込まれた気分になって釈然としなかったけど、だからって向こうの世界に戻れない事に全く未練は無かった。だからその相手があっちでどうです?って勧誘されたらまだ良かった。でもそれ怪しいからついていかないかも…。釈然としない気持ちはある。でも結果論ではあるが、これは悪くない選択肢だとは思っていた。でもマスター僕はアビリティの内容知るまでは文句言ってやるからなって気持ちは残ってた。相手に落ち度がある限りはなるべくゴネた方が良い。もしかして強制送還が無いのか?をそのうち聞いてみよう。意図がばれると足元見られるから気をつけないと。