真夏の最悪な話 その3
「もう君とは会えない」
「ごめんなさい真夏さん」
「連絡もしてこないでくれないか」
世界で一番腹の立つ声が耳の奥で聞こえた気がする。最悪だ。ついに、私にも幻聴が聞こえるようになってしまった。
私は目の前にあった水を飲み干した。
少しだけ気持ちの悪さが落ち着いたようだ。
気がつけば、私の前には知らない男の子が座っている。
同い年くらいか。
なんでこんな男と一緒にいるんだ。私。
「僕はハルっていうんだ」と彼は言った。
ハル……?
ハルと言う名前を私は昔聞いたことがある。
あれはたしか小学生の頃。私のことを好きだって言ってくれた男の子の名前がハルだったな。
懐かしい。
あの子、可愛かったな。ハル君。
あれ?
告白された私はどうしたんだっけ?
そうだ。
ハル君はクラスのみんなの前で告白して手紙を渡してきたんだ。
それで、恥ずかくなった私は彼からもらった手紙をビリビリに破いてゴミ箱に捨てたんだっけ。
ってひどい話だ。
まあ、もう、ずいぶん昔の話だ。
どうでもいいんだけどね。
「はあ」
私はため息をついて、彼に言った。
「何か甘くて炭酸入ってるお酒、頼んで」