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真夏の最悪な話 その2
私は知らない男性と手をつないで歩いていた。
最悪だ。
ガンガンする頭を振りながら、なんとか記憶をよみがえらせようとする。
しかし、何も思い出せない。
「あの〜」
隣にいる男が気の抜けたような声を出す。
「お水とか飲みますか?」
私は何も言わずに、手を差し出した。
彼は、急いで自販機で水を買って私に渡した。
それを一気に飲み干すと、少しだけ気分がまともになってきた。
「あの〜、名前、聞いてもいいですか」
男がおどつきながら聞いてきた。
「真夏だよ」と、私は言った。
「え?まなつ?」
そう、私の名前は真夏。そして私は……。
そうだ。
頭の中に、数時間前までの記憶が、短いイメージとともに浮かんできた。
……クズどもが。
ろくでもない記憶が、苛立とともによみがえる。
「え?いま、舌打ちしました?」
隣の男が怖そうに私を見ている。
「あー。今日は嫌なことがあったんだよね。最悪」
嫌な記憶と、酒の気持ち悪さが混ざって、とても不愉快な気分だ。
苛立ちと苦悩を足して不快で割ったような複雑な表情の私を見て、彼は言った。
「少しお茶でもしていきます?」