終わり
「朝か。3月9日。6時17分。いつも通り」
私は今日を繰り返している。
昨日、明日。という言い方もおかしいが。
昨日と同じ今日が来て、今日と同じ明日が来る。
もう何回繰り返したかわからない。
私は明日を拒絶した。
それから私は今日を繰り返している。
この繰り返しの今日の中、何周目からか、私はずっとある人と一緒に過ごしている。
その人は絶対に危ない目に合っている。
ある時は車に轢かれそうになったり、ある時は線路に落ちそうになったり。とにかく彼は危ない。
私が助けると、決まって毎回食事に誘う。
私は初めて一緒に食事した時のことを、何周今日を繰り返したわからない今でも覚えている。
ファミレスに行った。
二人でマルゲリータピザを食べ、バニラアイスを1つずつ。
私も彼も満腹だったが、彼は「これだけは絶対いつも食うからさ」とバナナパフェを頼んだ。
別の今日、彼は何も覚えていない。いや、知らないのか。
こんなにも私は彼と過ごして、こんなにも彼を想っているのに、次に会った時、彼は私を知らない。
それが辛くて、彼を見捨てようともした。だけど、本当に彼を助けられなかったあの時の今日を思い出すと、そんなことは出来なかった。
何度も繰り返すうち、彼に対して私は適当に答えるようになった。
次第に私は壊れていった。
今日も彼は私を知らないだろう。
それはとても辛い。
でもそれい所に私は彼が大好きだ。
だから今日も私は彼を助ける。
「危ない!!」
車に轢かれそうになった彼に飛び付く。彼は倒れる。
「大丈夫?」
返事はわかってる。あ、ありがとう!!俺、危うく死ぬとこだった!!でしょ
「ありがとう。また助けてもらったね」
え?今、なんて
「今日は何がいい?またラーメン食べようか?」
なんで?またってどういうこと?
「最初からファミレス行こうか?ピザ食べようか?」
そんな、これって
「風音、昨日の。いや、今日の返事を伝えに来たよ」
彼が私を抱き寄せる。
「賢次…」
「風音、俺もお前が大好きだよ」