種明かし
「自分で食べろ」
「食べさせて」
「恥ずかしい」
「私は恩人…でしょ?」
痛いとこ突くなよ
「じゃあ、はい」
「大きいね。****。」
わざとか。わざとなのか。
「口ちっさ。これぐらい入るだろ。」
本当に風音の口は小さかった。
チーズが口の周りにつく。
「********」
「あーうるさいうるさい」
そんな俺を見て風音は笑った。
なんつーか、こんなやり取りが幸せだった。
俺は大事な事を忘れてた。
「なぁ、風音の言ってるのが本当だってのは信じる。だけどさ、俺が明日を迎えた時、風音は明日いるのか?」
「んー、わかんないけど。明日の私がいるとしても、多分賢次とは会わないと思う。」
「なんで?明日の風音には今日の俺の記憶がないとか?」
「その可能性もある、けど。それ以前にね、私は明日引っ越すんだ」
「マジで?」
「それがイヤで、明日なんか来なければいいのにーって思って寝たら、朝起きても今日だったの。」
「確かに、引っ越すのは嫌かも知れないけど、そんなに嫌なのか?遠いとか?」
「お父さんと暮らすの」
「父親?」
「離婚して、お父さんに引き取られるの、お母さんは育てられないって。大人は悪口しか言わないでしょ?お父さんはお母さんの悪口しか言わないの。だからイヤ。」
「俺に何か出来ないか?」
「え?」
「俺は風音に命を救われた。俺も風音を助けたいんだ。そりゃ家庭のことに俺が首突っ込むのもどうかとは思うけど、それでもお前が辛い現実に直面してるのを放って置けない。」
「私は…もっと賢次と居たいかな。でも、それが出来るのは今日まで。私はまた今日を繰り返す。それじゃあまたね」
風音が立ち上がる。
「あ、おい!!」
「またね!ご馳走様!!」
風音が走り出す。待てよ。
「ピザとアイス!どーすんだよ!」
「賢次にあげる!!」
あげるって俺の奢り。そうじゃない。そんなことはいい。
「風音!!」
「賢次、大好きだよ!!」
風音はもう店の外に出てしまった。
最後の一言。なんだよあれ。
そんなこと言われたら。なんで今日あったばかりなのに、俺はこんなに惹かれているんだ?命の恩人だから?風音が可愛いから?違う!何か、そう、これは運命的なもの。
畜生、明日なんかいらない。風音に会えればなんだっていい。
明日が来なければいい。