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  作者: 外山
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二度目の



桐島は夕食も風呂もいつものように済ませ、就寝前にゆっくりしていた


「、、、ふぅ」

風呂から上がり、居間についても長めの髪が気になるのか、まだタオルを頭につけていた

「、、、、、」

いつもならくつろげるこの時間でも、桐島の表情は暗く沈んだままだった


パカッと携帯を開き、物思いにふける

「、、、、、」

(歩、、、)

この時間に携帯を開くと、毎日のように渡部と電話で話していた日々を、自然と思い出してしまった

「、、、、、はぁっ!」

桐島は空気を吸い込み、それを一気に吐いた

(、、、女々しい自分が、本当嫌になるな、、、)

桐島は足をテーブルの下に入れたまま寝転んだ









学園祭の日の最後


桐島と渡部は改札口付近にいた


「誠哉君、、、私と、、、別れてください」

「、、、え、、?」

「、、、、、」

渡部はゆっくりと頭を上げた


「、、、は?な、なんだよそれ、、、」

桐島は何を言われているのか、理解出来なかった

「、、、、、」

渡部は桐島の質問には答えず、黙って俯いた

「、、、なんで、、、そんな事言うんだよ、、、?」

「、、、誠哉君も、思ってたでしょ?」

「、、、え?」

「遠距離、、、辛いって思ってたでしょ、、、?」

渡部は顔を上げ、桐島を見ながら言った

「え、、、お、思ってねえよ、、、」

「、、、、、」

渡部はまた先ほどのように俯いた


「、、、なんか、、、あったのか?」

「、、、、、」

桐島が問いかけるも、渡部は俯いたまま動かない

「ここ最近、、、なかなか電話に出なかったりすぐ切ったりしてたけど、、、なんか関係あんのか、、、?」

「、、、、、」

渡部は下唇を軽く噛んだ後、口を開いた

「気になった、、、?そういうの、、、」

「、、、あ、ああ、そりゃあな、、、」

「、、、じゃもう無理だよ、、、」

「な、なんでそうなるんだよ!?」

渡部のテキトーな言い方に桐島はカチンときた

「、、、、、」

渡部はまた俯いた どう話をしたらいいか分からないようだ

「俺は、、、別れたくねえ」

「、、、、、」

桐島ははっきりと自分の意思を口にした

「、、、じゃあ、、、これ以上続けて何になるの?」

「え、、、?」

「遠距離恋愛、、、ずっと別れないでいて、何が残るの、、、?」

「、、、そ、それは、、、」

桐島は渡部のその言葉に、なんと言えばいいか分からなかった

「、、、ね?、、、もう意味ないんだよ、、、」

渡部はそう口にしながらそっと微笑んだ

「、、、、、」

桐島は何も言えない自分が悔しく、強く拳を握りしめた

「、、、もう、、、行くね?」

渡部は改札機に向かって踏み出した

「、、、、、」

(意味、、、ない、、、?)

気がつくと桐島は、渡部の腕を掴んでいた

「えっ、、、?」

渡部は慌てて振り返り、掴まれている自分の腕を見た

「意味ないって、、、なんだよ、、、」

桐島は考えるよりも先に言葉がついて出た

「誠哉君、、、」

「何になるとか、、、何が残るとか、、、そういうんじゃねえだろ、、、」

(それを認めちまったら、、、絶対ダメだ、、、)

桐島は掴んでいる腕を見ながら必死で頭を回す

(何にもならねえ、何にも残らねえかもしれねえけど、、、俺はただ、、、)

桐島はバッと勢いよく顔を上げた

「俺は歩の事が、、、っ!!」

「、、、、、」

桐島はそこまでしか言えなかった

物理的に、である

桐島の口は、渡部の口によって塞がれたからだ


「っ、、、、、」

「、、、、、」


目の前にはいつもの渡部の顔があった

目を瞑り、強引に口づけをしてきた渡部に、桐島は目を見開き、ただただ驚くだけだった

重ね合うだけの口づけ

だが2人にとっての二度目のキスは、とても冷たく、悲しく、そして何とも表せない苦しい味がした

この瞬間だけは、周りの喧騒も一切気にならず

ただ、2人だけの世界が広がっていた



「、、、、、」

「、、、ん、、、」

渡部はゆっくりと唇を離した

「、、、、、」

渡部は少し見上げるように桐島の顔を眺めた


「、、、別れよ、、、?」

「、、、、、」


そう言葉にする渡部の顔は微笑んでいた だが、目から少しずつ涙が溢れ出ていた

「、、、、、」

桐島は呆然とした表情で、渡部の顔を見た

「、、、、、」

そんな渡部の顔を見てしまうと、桐島はもう、何も言えなかった

桐島が呆然としている間に、渡部は改札機を通った

「あっ、、、」

「、、、、、」

慌てて声をかけようとした桐島に、渡部は背中を向けながら立ち止まった

「、、、じゃあ、、、ね?」

渡部は振り向き、微笑みながら言った その目に、涙はなかった

「、、、、、」

桐島は最後の最後、何も言えなかった

出来るのは、駅の奥へと消えていく渡部の背中を見つめる事だけだった

「、、、歩、、、」

渡部には決して聞こえないが、桐島は最後にその名を呟いた










そして現在


桐島は気は沈んだままだが、学校にはちゃんと来ていた

教室の前で教師が授業を行っているが、桐島の耳には残らず、右から左へ流れていた

「、、、、、」

机に肘をつき、頭を支えながらボーっと窓の外を眺める


学園祭の日、最初に渡部と会った瞬間の事を思い出していた

(あの時、、、歩がいきなり目の前に来て、、、)

桐島達の焼きそばの店に、先に徒仲が来て後から渡部が走ってきた、あの時である

(いつもの歩だった、、、いつもの笑顔なのに、めちゃくちゃ嬉しくて、ドキドキして、、、)

桐島はその時の渡部の姿を思い出していた

(あの時は、、、久しぶりに会えたからだとか、前より好きになったからとかって思ってたけど、、、そうじゃなかった、、、)

桐島は視線を、窓の外から自分の机に移した

(もう、、、歩に会えねえような、、、そんな気がしてた、、、そんな気がしたのに会えたから、、、あんな気分になったんだ、、、)

その時分からなかった気持ちが、今になってやっと分かった


(バカみてえだよ、、、ホントはとっくに気づいてたんじゃねえか、、、歩がいなくなる事に、、、)

桐島はまた視線を窓に移し、外を眺めていた

(理由は分かんねえけど、なんとなくそんな気がしてた、、、なのにそれを認めたくねえからって、気付かねえフリして、、、)

改めてそう認識し直すと、更に沈んだ気分になった

(、、、へっ、、、かっこわりぃな、、、)










放課後


今日は久しぶりに天気が悪く、雨が降り出しそうな曇り空だった

帰宅する桐島は昇降口にて靴を履き替えていた


ガタッ


桐島の隣で、昇降口に敷いてある木を踏む音がした

「、、、?」

顔を上げそちらを見ると、徒仲が立っていた

「誠哉君、、、」

徒仲も、桐島同様沈んだ表情だった

「徒仲、、、どうした?」

桐島は上履きを下駄箱にしまいながら訊ねる

「ちょっと、、、話したいんだけど、、、」

徒仲は拳を握りしめ、溢れそうな感情を抑えるような言い方だった

「、、、なんだよ 焦栄とケンカでもしたか?」

桐島は冗談混じりに軽く笑いながら言った

「、、、歩ちゃんの事だよ」

「、、、、、」

桐島は小さく息をついた

「、、、なんもねえよ 俺から言う事は」

桐島はテキトーな様子でそう言い放ち、外に向かって歩き出した

「誠哉君からは無くても、私からは訊きたい事いっぱいあるよ!」

徒仲は急いで靴を履き替え、桐島についていく


「、、、じゃあなんだよ?何が訊きてえんだ?」

桐島は昇降口を出てすぐ右の校舎の壁にもたれながら聞き返した

「、、、なんで、、、別れちゃったの?」

徒仲は躊躇しながらも思い切って訊ねた

「、、、前も言っただろ?フられたんだよ」

「だからなんでフられたの!?」

徒仲は間髪いれずに訊き直す

「、、、知らねえよ」

桐島は目線を下げ、いじけたような言い方をした

「知らないって、、、なんかないの?心当たりみたいな、、、」

「ねえよ なんにもねえ」

「、、、歩ちゃんから、理由、、、聞かなかったの、、、?」

「、、、、、」

桐島はフッと息をついた

「、、、なんで聞かなかったの、、、?」

「、、、聞けるかよ、ンナ事、、、」

桐島は下唇を強く噛んだ

「え、、、?」

「あいつ、、、これ以上付き合ってたって意味ない、って言ったんだよ、、、そんな事言われて、なんて言い返すんだよ、、、」

「、、、あ、歩ちゃんが、、、?」

徒仲はおそるおそる聞き返した

「ああ、、、それにもう、、、なんつうか、、、」

桐島はキスした後の渡部の表情を思い出していた




『、、、別れよ、、、?』




「、、、あいつは、完全に吹っ切れてるっていうか、覚悟決めてるっつうか、、、ちゃんと考え抜いたんだって顔しててよ、、、」

桐島はその表情を思い出すと、どうしようもなく切ない気持ちになった

「だから、、、ちゃんと問いたださなかったの?」

「、、、何も言えなかったんだよ、、、あの顔見たら、、、」

「、、、、、」

徒仲はまだ、どうにも腑に落ちなかった

それを見た桐島は、出来るだけサバサバした口調に変えた

「ま、、、あいつにも色々あるんだろ、、、テキトーに決めた訳じゃなさそうだったし」

「、、、誠哉君はいいの?それで、、、」

「、、、なにがだよ」

「その、歩ちゃんの色々、、、何も知らないで、ただフられて逃げられて、、、そんなんでいいの?」

「、、、、、」

桐島は徒仲のその言葉に反論はせず、眉間にシワを寄せながら考えていた

「、、、うるせえな、ったく」

そう呟くと、桐島はさっさと歩き出した

「あっ、誠哉君!」

「仕方ねえだろ、、、これが歩が出した答えなんだからよ、、、」

呼び止める徒仲に、桐島は背中を向けながら答えた


「答え、、、」

徒仲がそう呟く頃には、桐島はもう離れた場所にいた

「、、、おかしいよ、、、意味分かんないよ 歩ちゃん、、、」


空からはポツリポツリと雨が降り出した








雨の中帰宅した桐島は、そのまま風呂場へと直行していた


気持ち悪い雨と汗を流し、先ほどの徒仲との会話で優れなくなった気分もいくらかマシになった

「、、、、、ふぅ」

桐島はタオルを首にかけたまま風呂から上がった

居間に座り、荒っぽく頭を拭いた

「、、、、、」

しかし、頭をよぎるのは先ほどの徒仲との会話の事ばかりだった

「、、、ちっ、くそ、、、」

(仕方ねえだろうが、、、俺にはもう、どうしようも、、、)

桐島はドサッと寝転び、何気なく携帯電話を開いた


「、、、え?」

待ち受け画面の左下、【着信1件】と出ていた






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