この学校
桐島と渡部は2人で学園祭を回っていた
だが所詮は学校内の行事
1時間足らずでめぼしい出店は全て回ってしまった
「もう大体一回りしたよね、、、」
「そうだな、、、まあどっちにしろもうそろそろ終わりだけどな」
桐島は時刻を確認した
学園祭の出店の終了は17時
今は17時の10分前だった
「そっかー、、、」
渡部は改めて周りを見渡した 確かに片付けに入っている出店が大半だった
「あっ!そうだ、、、」
渡部は思い出したように手を叩いた
「ん?なんだよ?」
「校舎内って、、、今入れないの?」
「え?いや入れるけど、、、なんで?」
桐島は話が掴めず、ただ答えるだけだった
「久しぶりに、、、学校の中、見てみたいなーって思って!」
渡部は学校の玄関に向かって歩き出しながら言った
「、、、そうか、、、?」
(なんで学校の中なんか見たいんだ、、、?まだ引っ越してから1ヶ月ちょっとしか経ってねえのに、、、)
桐島は少し疑問を抱きながらも渡部と共に校舎の中に入る事にした
校舎内には殆ど人はいなかった
トイレや水道を使用する人と、職員室に数人いるだけで皆学園祭の為に外に出払っていた
電気も、トイレ周辺の廊下や職員室しか点いていなかった
2人は薄暗い学校の中を歩いていた
渡部が先導し、桐島がそれについていっていた
「う~ん、やっぱりここも閉まってる、、、」
渡部は理科室のドアを開けようとするが鍵がかかっていて開かなかった
「まあ普段も閉まってるからな、、、」
「どこか開いてないかな~?」
「各学年の教室くらいだろ、、、つうかいつまで回るんだよ?」
学校中の教室を片っ端から渡部に桐島は訊ねた
「え?全部回るつもりだけど」
渡部はキョトンとした様子で言った
「全部って、、、どんだけかかると思ってんだよ?もう20分は回ってっけどまだ半分もいってねえぞ?」
桐島は携帯電話を開き、時間を見ながら言った
「ん~、そっか、、、」
渡部は腕を組み、頷きながら考えた
「仕方ないなぁ~、じゃあ1年生の時の教室行こっか?」
渡部は少し残念そうにはしたが、すぐに歩き出した
「あっ、、、さ、先々行くなよな、、、」
桐島は小走りで渡部についていった
渡部と桐島が着いたのは、2人が1年生の時のクラスの教室だった
「お~、懐かしいなぁ~」
渡部は教室を見渡した 何の変哲もない、普通の教室である
「誠哉君達は今でもこの教室で勉強してるんだね、、、」
「、、、まあ今は2年だから、違う教室だけどな」
桐島は前の教卓に肘をつき、もたれかかった
「、、、知ってる?それ」
「ん?」
渡部はふと、桐島の足下の教壇を指差した
「教壇、、、それってね、殆どの学校ではもう無いんだって」
「え、、、?そうなのか?」
「うん 私が今通ってる高校も、、、女子校なんだけどね 教壇ないの」
「、、、へぇ~、なんでだろうな」
桐島は何気なく教壇を見つめながら言った
「あとね~、掃除の時間とかないんだよ?用務員というか掃除屋みたいな人達が全部掃除してくれるの」
「それ良いなー、そんなん学校にいるもんなのかよ?」
「多分それは公立と私立の違いかな?だからいっつも床とかピカピカだし」
「こっちとは大違いだな 俺と九頭でこの前掃除しまくってた時気づいたんだけどよ この学校めちゃくちゃ汚れてるからな」
「あはは!そういえば掃除してたねー!」
渡部はその時の桐島達の姿を思い出していた
「、、、2学期始まってすぐの時、一緒に体育祭の実行委員やったよね」
「ああ 俺はあんま乗り気じゃなかったけどな」
「でも誠哉君がやってくれてホント良かった すごく良い思い出になったなぁ」
「まあな、、、瞬さんともその時知り合ったし」
2人は教室の前の方から後ろに移動した
「文化祭も楽しかったなぁ 誠哉君がすごくノリノリで頑張ってくれてたよね!」
「え、、、はは、そうだっけ?」
桐島は恥ずかしそうに笑う
「誠哉君が料理上手なのも、その時初めて知ったからびっくりした!」
「、、、まあな、浜さんとか美嚢先生も手伝ってくれたし、、、」
浜、とは桐島達の2コ年上の先輩で、今は大学の為に東京に住んでいる
美嚢とはこの学校、南涯高校の保健室の先生である
「それに、、、お前も頑張ってくれたしな」
「え?私?」
渡部は驚いた様子で自分を指差した
「おう、なんか緊張してたろ?メイド喫茶やるの決まってから だから心配してたんだけど、いざ本番になったらちゃんと出来たよな」
「、、、そうだったね 確か、、、」
渡部はその時の心境を思い出していた
「、、、やっぱり、誠哉君が頑張ってたから、、、足引っ張っちゃいけないなって気持ちはあったと思う」
「へっ、なんだよ、、、そんなに俺、張り切って見えたか?」
「うん 見えてた」
渡部はニヤニヤ笑いながら頷く
「、、、ホント、色々あったね、、、この学校で、、、」
「、、、そうだな」
「、、、、、」
渡部はゆっくりと教室を見渡した後、窓の外を見た この窓から中庭や向かいの校舎、校庭など学校全体を見る事が出来る
「、、、歩、、、?」
薄暗い教室の中、窓から外の景色を見る渡部の姿は妙に神秘的で、、、
「もう、、、この学校に、私の席は無いんだね、、、」
そう呟いた時の表情は、桐島からは見えなかった
だが、どこか儚げで、今にも消えて無くなってしまいそうな声だった
「、、、歩、、、」
「、、、、、」
渡部はサッと桐島の方へ振り返った
「じゃ!そろそろ外、出よっか!」
そう言った渡部の顔は、いつもの元気な笑顔だった
「、、、あ、ああ」
急な渡部の態度の変化に桐島は少したじろいだ
「、、、あっ!」
桐島はいきなり声を上げた
「えっ!?な、なに!?」
渡部はビクッと体を震わせた
「綿菓子、、、貰うの忘れてた、、、」
「、、、あ!じゃあ早く行こ!」
渡部は桐島の手を引いて小走りで校庭に向かった




