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  作者: 外山
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一番最初



学園祭当日



実行係の生徒達や、担当の先生達はいつもより早く登校し、準備に取りかかっていた


文化祭と違い、学園祭は校舎内を使用せずに、校舎の周りに出店などを出していた


学園祭開始は10時からだが桐島達は9時半には準備は終わっていた


「、、、はぁ、なんでイチから全部準備しなきゃなんねえんだよ」

桐島はうんざりした様子で呟く

テントや鉄板、食材などその他の材料は全て校門前までトラックで運ばれてくるだけで、そこから運ぶのも組み立てるのも生徒達の仕事だった

「文句言わないでよ 実行係でもないのに付き合わされてる私達の身にもなってくれる?」

北脇はテントの後ろの方でため息をついた

桐島、外山の他に北脇と野波佳も実行係として参加していた

「、、、つうか焼きそばってなんだよ、、、俺ばっかり作るんだろ?」

桐島はコテでカンカンと鉄板を叩く

「お前がそれでいいって言ったんだろ?」

「、、、そんな事言ったっけなぁ、、、」

外山の言葉に桐島は納得いかない様子だった 焼きそば、と決定した時、桐島は渡部とケンカをしていたため会議中ずっと上の空だった


「はっはー!お前らには負けないぜー!」

するといきなり、向かいの店の男子生徒(九頭寿)が桐島達を指差しながら言った

「、、、、、」

桐島達は誰一人、何も言わなかった

「お前らの1億万倍売り上げてやるからなー!ミトケヨー!」

男子生徒は自信満々な様子で笑っていた

「、、、なぁ、あいつの店、何を出してんだよ?」

野波佳はコソコソ小さい声で呟いた

「テントとイスと机しかねえぞ、、、つかテント要らねえだろ」

外山も野波佳に続いて小声だった

「なんかね、、、腕相撲するらしいわよ」

北脇は小さく男子生徒の方を指差す

「腕相撲?腕相撲でどうやって稼ぐんだよ?」

桐島は北脇の指の先にいる男子生徒を見ながら言った

「一回500円で、九、、、あの男子生徒に腕相撲の勝負を挑めるの 勝てれば賞金5000円だって」

北脇は以前、男子生徒からその内容を聞いた事があった

「へぇ~、、、でも確か九、、、あの男子生徒って、力とか強えんだろ?」

野波佳は桐島に確認するように訊ねた

「ああ、力も強えし打たれ強さもあるし足もやたら速いな あの男子生徒は」

桐島は何度も頷きながら言った

「、、、、、」

外山は男子生徒の方を見た


「何人でも挑戦してこいよー!歴代で一番売り上げてやるぜー!ひゃっはー!」

男子生徒はたった1人だった 他の全ての売り出しチームは数人構成なのにである

おそらく、バカなのを利用され1人だけに仕事を押し付けられたのだろう

「おいおいスーパーボールなんか水に浮かしたって俺には勝てないぜー!」

男子生徒は隣の出店に挑発行為をしていた


「、、、とりあえず他人のフリな」

改めて確認する外山の言葉に皆は頷いた




「あ、そうだ 麻癒から聞いたぞ?今日、渡部来るんだろ?」

野波佳はふと思い出したように言った

「え?、、、ああ、言ってなかったっけ?」

「言ってないわよ 私も徒仲から聞いた」

「俺も」

北脇と外山は桐島を責め立てるような口調だった

「、、、そ、そうか?」

桐島はハハ、と元気なく笑う

「で?来るんだよな?何時頃来るんだよ?」

「、、、まあ来るはずだけど、、、」

野波佳の言葉に、桐島は少し不安そうに呟く

「はず?ってなんだよ?」

外山は桐島の言葉に引っかかった

「、、、いや、、、まあなんでもねえよ」

(なんか、、、歩、ずっと様子が変なままなんだよな、、、)

桐島は頭をかきながらテキトーにごまかした

「何時かは知らねえけど、、、一応開始時間は伝えといたし、徒仲と一緒に来ると思うぞ」

桐島は前の鉄板の方を向き、皆に背中を向けた



(まさか、、、来ねえなんて事、ねえよな、、、)

桐島の不安な気持ちは募るばかりだった





10時になり、学園祭は始まった


他校の生徒や親子、保護者、近所のお年寄りなど色んな人達がお客としてやってきていた

「ほぉ~、結構いきなり人いっぱいだな」

外山は人ごみを見渡しながら呟く

「これだけお客さんがいっぱいなら焼きそばも結構売れそうね」

北脇も少し後ろの方から呟く

「じゃあそろそろ作り始めようぜ 鉄板は温まってるだろ?」

野波佳は鉄板の上に手をかざした

「そだな、、、」

桐島は頭に巻いた白いタオルを手で確認しながら立ち上がり、イスを邪魔にならないよう横にどけた


「疲れたら言ってね 一応順番に回す予定だから」

北脇は麺の入ったボウルを桐島に渡す

「おう」

桐島はボウルを受け取った

「ちゃんと全部の材料あるか、、、?」

桐島は周りを確認しながら言った

「いいからさっさと作れよ 細かい事なんかどうでもいいからよぉ」

外山はあくびしながらテキトーな態度で言った

「バカかてめえは!始める前にちゃんと確認しとかねえと上手くいかねえもんなんだよ!料理は!」

桐島は後ろを振り向き、コテで外山を指した

「はいはい、、、いつもだるそうなくせに料理になったら変なスイッチ入りやがる」

外山は桐島に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いた


「ったく、、、じゃあとりあえず人参とキャベツから、、、」

「あ、いたいたー!」

すると人ごみの中から甲高い声が聞こえてきた

「ん、、、?」

桐島は顔を上げ、人ごみを見渡した

「麻癒ー!」

野波佳は前に出て、桐島の横に並び徒仲の名を呼んだ

「焦栄ー!」

徒仲は両手で手を振りながら、桐島達の店の前に来た

「もぉー!どこなのかよくわかんなかった!」

徒仲はスネたような口調で野波佳に甘える

「わりぃわりぃ!でもよくすぐ見つけたな!」

「うん!焦栄がいる場所ならすぐ分かるよー!」

2人は楽しそうに店前でいちゃついている

「、、、、、」

(あれ、、、徒仲1人、、、か?)

桐島は徒仲の周りを見るが、誰もいない

「ねえ徒仲 歩さんは一緒じゃないの?」

「渡部、帰ってきてるんだろ?」

北脇と外山は後ろの方から徒仲に訊ねる

「え?歩ちゃん?」

徒仲は2人の言葉に対し聞き返すように言った

「、、、、、」

桐島は黙ってゴクッとツバを飲み込んだ


「ちょっ、、、麻癒!」

すると隣の店の陰からフッと人が現れた

「はぁはぁ、、、速いってば 急に走ったりして、、、」

「あはは!ごめーん歩ちゃん!焦栄と誠哉君が見えたからさー!」

「もう、、、」

そう言って、息を整えながら顔を上げたのは渡部だった

「、、、あ、、、」

渡部は鉄板を挟んだ向かいにいる桐島と目が合った

「、、、誠哉君、、、」

「、、、あ、ああ、、、」

(歩、、、)

桐島は何故か上手く言葉が出なかった


「、、、久しぶりだな、、、」

桐島は落ち着いた様子で呟いた

「、、、うん 久しぶり」

渡部は安心したように笑顔で言った

「、、、、、」

その笑顔はなんら変わりないいつもの笑顔だったが、今の桐島の心には深く沁みた

(なんで、、、こんなに、、、)

桐島は自分の胸を押さえた 渡部の顔を見ただけで気分が高揚して、緊張して、どうしようもなく嬉しくなる

何故そうなるのか、今の桐島にはよく分からなかった


「なんだよ せっかく会えたのにそれだけか?」

外山はニヤニヤしながら桐島と肩を組む

「な、なにがだよ、、、」

桐島はうっとうしそうに外山の顔を見る

「外山君も紗菜ちゃんも野波佳君も、みんな久しぶりだね」

渡部は改めて皆に挨拶した

「うん 歩さん」

「おう 久しぶり」

北脇と野波佳も久々に渡部と会えて嬉しそうだった

「それより渡部 桐島の野郎な お前の事になるとかなり弱気でよ~、女々しい相談ばっかしてくるからウザえんだけど」

「はっ!?黙れてめえ!」

外山の言葉にかぶせるように桐島は怒鳴る

「ふふっ、そうなんだ?」

渡部はニヤニヤしながら桐島に訊ねる

「う、、、うるせえ!してねえ!してねえよ!」

「んぐふっ!!」

桐島は肩で外山の顎を突いた



「じゃあ焼きそば一つ、貰おっかな」

渡部は指を一本立てながら言った

「え、、、た、食べるのか?」

「うん!」

桐島の問いかけに渡部は元気よく頷く

「私が最初のお客さんでしょ?」

「、、、?ああ」

「誠哉君の焼きそば、、、一番最初に食べるのは私!」

渡部はふふん♪と楽しそうに言った

「、、、しゃ、しゃあねえな じゃあ作るか!」

桐島は嬉しそうに作業に取りかかった



少し作業が進み、麺やソースを入れると水分が蒸気になり、煙のように白く曇った

ジュージューと良い音がなっている

「なんか思ったより時間かかるなこれ、、、もうちょっと待ってくれ」

桐島は店の前で作業を見ている渡部に言った

「うん」

渡部は桐島を見て、ふと気になる事があった

「、、、、、」

渡部はテントの中に入り、桐島の後ろに回った

「ん?どうした?」

桐島は作業の手を止めずに渡部に訊ねた

「頭のタオル、、、これじゃすぐほどけちゃうよ?」

「え?」

渡部は桐島の後頭部の結び目に触れた

「一回外していい?」

「お、おう、、、」

渡部はタオルを一度外した

「じゃあ巻き直すね」

渡部は桐島の額に手を回し、前髪を全てタオルの中におさめた

「誠哉君、ちょっと髪の毛長いからちゃんと入れないとね」

「あ、ああ、そだな、、、」

渡部にタオルを巻いてもらうのは妙にドキドキした

「それでこの結び目だけどね、さっきは普通に結んでるだけだったでしょ?」

「ああ そうだけど、、、」

「普通に結んで、、、それを、、、」

渡部は内側にぐるんと丸めた

「こうしたらなかなかほどけないから、ね?」

渡部は横から桐島の顔を覗き込む

「お、おう、、、悪いな」

桐島は照れ笑いしながら言った


「なんか、、、私達がいる事忘れられてるわね」

「なー」

北脇と外山は荒んだ目で2人を見る

「えっ、、、」

渡部は急に恥ずかしそうな表情になった

「なっ、なにがだよ!あいつらよりマシだろ!」

桐島は野波佳と徒仲を指差した


2人は店前でひたすらいちゃついている

会話を聞かずともいちゃついている事がよく分かった


「別にあいつらは俺らがいてもいなくても変わんねーもんな」

「ねー」

外山と北脇は引き続き荒んだ目で2人を見る

「、、、ンナ事どうでもいいんだよ!ほら、パックよこせ!」

桐島は外山からパックを奪うように受け取り、焼きそばを盛り付ける

「あ、どうやら愛の焼きそばが出来たみたいね」

「なー」

「、、、、、」

2人の言葉に渡部は黙って赤くなっていた

「いいから黙っとけお前ら!!」

桐島はしつこい2人を怒鳴りつけた


「ほらよ、、、出来たぞ」

桐島は完成した焼きそばを店の前にいる渡部に手渡した

「わぁ~、じゃあさっそく食べよ!」

渡部は箸を口と手で割り、パックのゴムを外した

「え、、、こ、ここで食うのかよ?」

桐島は店の周りの様子をうかがいながら言った

「ふわぁ、湯気出てるよ!」

桐島の気遣いなどお構いなしに渡部はパックを開いた

「そりゃできたてだからな、、、」

「じゃあ、いただきます!」

渡部は手を合わせ、桐島を見ながら言った

箸で掴まれた焼きそばの麺は、スルスルっと口に吸い込まれていった

「、、、うんうん」

渡部はもぐもぐと咀嚼している

「、、、、、」


桐島はなんでもなさそうなフリをしながら、かなり渡部の様子が気になっていた


「、、、やっぱりおいしい」

渡部は幸せそうな表情を浮かべながら言った

「、、、そうか?」

桐島は素っ気なさそうな言い方だが、内心はかなり愉快だった

「味がおいしいのはもちろんだけど、、、なんていうのかな、、、」

渡部はう~ん、と考えた後、桐島の顔を見た

「おいしさって、、、味だけじゃないんだなって思った!」

渡部は一番しっくりくる言葉が見つかったようだ

嬉しそうにその言葉を口に出した

「え、、、」

桐島は少し驚いた後、嬉しそうに笑った

「、、、なんだよそれ 味は良くなかったのかよ」

「だから味も良かったの!でもそれだけじゃなくて、、、」

渡部は目を泳がせながらまごまごする

「ん?」

「、、、好きな人が作ってくれたから、、、おいしさも特別って事」

「っ、、、」

渡部は顔は下を向いているが、ちゃんと桐島の目を見ていた

その上目遣いが、桐島を一層ドキッとさせる

(、、、俺だって、歩の事は好きだ、、、)

「、、、バ、バカ 誰が作ったって味なんか変わんねえよ」

「そ~お?でもおいしいよ!」

「、、、そ、そか?」

(さっき久しぶりに歩の顔見た時、妙な気分になったのは、、、前より好きになったからか、、、?)

桐島は頭の中で状況を整理していた

「ん~!おいしっ!」

渡部は口いっぱいに焼きそばを入れ、もぐもぐと味わっていた

「、、、、、」

(そんな事、今はどうでもいいか、、、)

桐島は、渡部が焼きそばを食べている姿を眺めながら息をついた

(俺の好きな人は、、、離れてても、一緒にいてくれるんだから、、、)

「これからゆっくり考えりゃいいよな」

桐島は納得したようにボソッと呟く

「んん?はんて?」

「ははっ、口ん中いっぱいじゃねえか 何言ってんのか分かんねえよ」

「ん~!」



その様子を外山と北脇は荒んだ目で見ていた

「なんか、、、俺達がいる事忘れられてるな」

「ね~」

「しつけえなもう!!」






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