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  作者: 外山
91/216

昔話



鈴科孤児院


ここは身寄りのない子供達が集まる場所


今はおばあさん、鈴科愛、受付のおっさんこと草津談司の3人が働いている




目が覚めたおばあさんは鈴科孤児院の中の、ある部屋に入った


「、、、、、」

おばあさんは部屋を眺めていた

書斎や立派な机などが置いてあり、まるで社長室のようだった

おばあさんは机の上に立ててある写真を手にとった

「、、、今日、久しぶりにせいちゃんが遊びに来てくれますよ」

おばあさんはその写真に向かって言った

その写真には、色黒で掘りが深く威厳ある強面な男が写っていた






昼前頃


ガチャ


鈴科孤児院の出入り口が開いた


受付のおっさんこと草津談司は顔を上げた

「お、誠哉君 久しぶり」

草津は笑顔で挨拶した

「うん おっちゃん久しぶり」

小さい時から知っている為か、桐島は草津と喋る時は少し子供っぽい喋り方になる

「もっと頻繁に来てくれてもいいんだけどね?お母さんも愛ちゃんも喜ぶから」

草津の言う【お母さん】とは鈴科孤児院の長でもあるおばあさんの事である 血も戸籍上も母子の関係ではないが、草津は昔からそう呼んでいた

「ごめん 最近ちょっと忙しくてさ」

桐島は靴を脱ぎ、スリッパに履き替える

「ま、いつでも来てよ 何があろうと、ここは誠哉君の家だからさ」

「うん ありがとう」

桐島はそう答え、中へと歩いていった






その頃、鈴科孤児院の子供達はお絵かきの時間だった


「愛ちゃーん 青色無いー!」

子供の1人が叫びながら鈴科を呼ぶ

「はいはい じゃあこっちのグループと一緒にクレヨン使おうね」

鈴科は2つのグループを一つにさせる事で解決した

「愛姉ちゃん!何書いていいか分かんなーい!」

「なんでもいいんだよ?ほら、野球ボールとかさ バットでもいいし」

鈴科はその子が好きな野球のボールとバットを持ってきた

「愛姉ちゃーん!」

「はーい!どしたのー?」



「ほほ、、、」

そんな忙しそうな鈴科と子供達を、おばあさんは部屋の壁にもたれ座りながらあたたかい目で見守っていた


ガラガラ


そんな中、部屋のドアが開く音がした

「元気でやってるかー?」

そう言いながら入ってきたのは桐島だった

「あー!誠兄ー!」

「せーにーおかえりー!」

子供達は皆、桐島の足下に群がってきた

「おう!騒がしいな相変わらず!」

桐島は手当たり次第に子供達の頭を撫でていった

「久しぶり誠哉!」

鈴科も遅れて挨拶した

「ああ、、、ん?絵描いてんのか?」

桐島は部屋の様子を見ながら言った

「うん さあみんなー!もとの場所に戻ってー!」

鈴科がそう言うと、桐島の足下にいた子供達はもとの配置についた



「おばあちゃん お久しぶりです」

桐島はおばあさんの横に座りながら言った

「ほほ、久しぶりだねぇ、せいちゃん、、、」

おばあさんは笑顔で優しく答えた

「いつもいつも、忙しい中悪いねえ」

「いやそんな、、、何度も言ってますけど、好きでやってるだけですから」

おばあさんと桐島は会話をしながら子供達の様子を見守る

「一生するつもりですよ ここには恩がありますから」

「、、、、、」

(恩、、、)

おばあさんはフッと下を向き、考え込んだ

「、、、? 大丈夫ですかおばあちゃん?」

「、、、いやぁ、大丈夫だよ、、、」

おばあさんは笑顔で首を振りながら言った


そこに鈴科がやってきた

「おばあちゃーん!誠哉のとっておき情報教えてあげよっかー!?」

鈴科はいきなり現れ、おばあさんの隣に座る

「ほほ、是非教えてほしいねぇ」

「なんだよ愛、、、変な事言うなよ」

桐島はおばあさん越しに鈴科に釘を差した

「実はねー誠哉に、、、彼女が出来ましたー!」

鈴科はパチパチと拍手をする

「ほっほっ、それはおめでたいねぇ」

「別におめでたくはないですよ、、、」

桐島は2人を呆れ顔で見る

「相手は歩さんって言うの!クリスマスイブの日に一度、ウチに来た事あるんだけど、、、」

「そうかい、、、あゆみ、あゆみ、、、」

おばあさんは頭の中にあの日の映像を思い浮かべる

「メガネかけてて、黒髪ロングの!」

「普通思い出せねえよ 一回しか会ってないんだから」

鈴科が説明する横で桐島はため息まじりに言った

「メガネ、、、あー、あの子かねぇ」

おばあさんはピンときた人物がいるようだ

「えっ!?分かったおばあちゃん!?」

「多分だけどねぇ、細身で、、、確か、渡部歩ちゃんだったかい?」

「す、すごいですね、、、よく覚えてますね」

おばあさんがズバリ言い当てた事に桐島は驚いた

「せいちゃんが友達を連れてくるなんて珍しいからねぇ、、、」

「そうですか、、、まあついてきたっていう言い方の方が正しいですね」

「ほっほっ、まあいいじゃないかい」

おばあさんは笑いながら桐島を宥める


「でも今は遠距離恋愛中なの 先月引っ越しちゃったんだ」

鈴科は少し淋しそうな目をしながら呟いた

「そうなのかい、、、今はどこに住んでいるんだい?」

おばあさんは鈴科からの言葉に対し、桐島に質問した

「今は愛知県の方に、、、名古屋ですね」

「、、、名古屋、、、かい?」

おばあさんは驚いた表情で桐島を見る

「、、、? はい、名古屋に引っ越しましたよ?」

桐島は頷きながらもう一度答えた

「、、、そうかい」

おばあさんは何かを考え込むように頷いた

「、、、?おばあ、、、」

「それでさそれでさー!最近歩さん、どんな感じなの!?元気!?元気!?」

桐島の言葉を遮り、鈴科は勢いよく質問をぶつけてくる

「え、、、ま、まあ元気じゃねえか?」

桐島は鈴科の曖昧な質問にテキトーに答えた

「じゃあ私は、、、そろそろお昼ご飯でも作ろうかねぇ」

おばあさんはそう呟きながら立ち上がった


「あ、、、」

少し様子がおかしいおばあさんに桐島は何か訊きたかったが、おばあさんは足早にキッチンに向かって歩いていった

「あ!もうこんな時間、、、みんなー!そろそろお片付けしよっかー!」

鈴科は子供達のもとへと戻っていった

「、、、まあいいか、、、」

桐島も立ち上がり、皆の手伝いを始めた










夕方頃


草津は受付の席で雑誌を読んでいた


(今日は誠哉君、夜までいるのかな、、、それともそろそろか、、、?)

草津は外の様子を窺った

外は夕日で赤くなっていた


トッ トッ トッ


すると廊下の奥から足音が聞こえてきた

(誠哉君か?)

草津は顔を上げ、足音が廊下から出て来るのを待った


「あ、、、お母さん」

廊下から歩いてきたのはおばあさんだった

「談司さん ちょっといいかい?」

おばあさんは近くのイスに座った

「どうしたんですか?改まって」

草津は雑誌を閉じ、受付の台の下にしまった

「いやねぇ、、、少し昔話をしたくなったんだよ、、、」

「昔話、、、ですか しかしわたしゃあ、お母さんが埼玉に来てからの付き合いですからねぇ、そんなに昔の話は、、、」

草津は恐縮しながら笑ってみせた

「何言ってるんだい、もう20年の付き合いじゃないか、、、ねえ?」

おばあさんは優しく微笑みながら語りかけた

「20年、、、もうそんなに経ちますかねえ、、、」

草津は昔を思い浮かべるかのように少し上を見た


「で?昔話というのは?」

草津は前かがみに座り直し、おばあさんに訊ねた

「、、、その前に、せいちゃんの話なんだけどねぇ」

「、、、誠哉君ですか?」

「あの子に、、、恋人が出来たらしくてねぇ」

「え、、、へぇ~、そういえば、もうそうゆう年頃ですね」

草津は少し驚いた後、嬉しそうに頷きながら言った

「その彼女さん、、、引っ越しちゃったらしいんだよ、、、」

「引っ越した?」

「ええ、、、それで今も恋人同士なんだって」

「へぇ~、遠距離恋愛、ってやつですかね?どこに引っ越したんです?」

「それがね、、、名古屋らしいんだよ、、、」

「え、、、な、名古屋ですか?」

草津は目を見開きながら聞き返す

「ええ、、、」

「名古屋ですか、、、よりによって、、、」

草津はイスに深くもたれ、ため息をつく

「やっぱり、、、何かと縁があるのかもしれないねぇ、名古屋とは、、、」

おばあさんは手をスリスリさせながら呟く

「、、、、、美希ちゃんの事、、、誠哉君にはなんて言ってあるんでしたっけ?」

草津はその名を出すのを一瞬ためらったあと、思い切って口を開いた

「、、、一応、交通事故、とだけ、、、」

「、、、そうですか」

草津は深く息をつきながら言った

「わたしゃ今でもはっきり覚えてますよ 誠哉君のお父さんが初めてここ、鈴科孤児院に来た日の事、、、」

草津は出入り口に目をやった

「そういえば、、、誠哉君もどことなく、お父さんに似てきましたね、、、」

「そうかもしれないねぇ、、、」

おばあさんは複雑そうな表情で答えた


「あの時のおじさんの判断は、、、正しかったんでしょうかねぇ?」

草津はふと、思い出したように話を変えた

「、、、美希のお葬式の時の話かい、、、?」

「はい、、、本当に、誠哉君のお父さんのせいなのでしょうか、、、?美希ちゃんが、、、亡くなったのは、、、」

「、、、、、」

草津の言葉におばあさんは何も言わなかった

「、、、すいません」

「いいや、、、いいんだよ」

思わず謝った草津に、おばあさんは首を振りながら答えた

「でもあの時、誠哉君のお父さんが嘘をついてるようにはとても見えなかったんです、、、もちろんおじさんとお母さんにしたらそんな事関係ないのは分かってますけど、、、」

草津はそこで言葉を止め、息を整えた

「、、、今更、どうしようもない話でしたね、、、すいません」

草津はもう一度、正面から頭を下げて謝罪した

「どうにかする必要もないんだよ、、、もうずっと、このままでいいんだよ、、、」

おばあさんはただただ、願うように繰り返し呟いた

「せいちゃんはね、、、自分の両親の事を、一度も私達に訊いた事がないんだ、、、」

「、、、確かに何も、、、何故でしょうね?」

「それはね、、、せいちゃんが今、幸せだからなんだよ、、、そんな事、知る必要はないと思ってるんだよ、、、」

「、、、この場所にいるみんなが、、、家族だから、ですかい?」

「、、、、、」

草津の言葉におばあさんは黙って頷いた

「でももし、、、せいちゃんがその事について訊いてきたなら、、、全て話す覚悟は決めとかないとねぇ、、、」

「、、、ええ」

草津はおばあさんの言葉に深く頷いた

「とは言っても、、、私にも分からない事ばかりだけどねぇ、、、」

「そうですね、、、これ以上、知らなくていいんだと思いますよ 私達だって、誠哉君、愛ちゃん、子供達みんなのおかげで、、、幸せなんですから」

「、、、そうだねぇ、、、」

2人は互いに微笑みながら、皆の顔を思い浮かべていた

















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