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  作者: 外山
87/216

思ってる事



桐島達が2年生になり、一週間ほど経ったある日の放課後



桐島はいつものように、帰宅しようと靴を履き替えていた


すると、瞬と安川が後ろから歩いてきている事に気づいた

「あ、、、」

(なんか真剣そうな話してるな、、、)

桐島はなんとなく声がかけづらかったので、耳だけ澄ます事にした



「もうサイアクだよ~、、、CだよC!?頑張らないとダメじゃ~ん、、、」

「頑張ればいいじゃない まだ時間あるんだしさ」

「Aの純は余裕だね~ 私なんて、、、東茉山なんかでCって、もう普通に行ける大学なんてないよ、、、」


どうやら2人は進路の話をしているようだ

「ちなみに卆壬はどうだった?」

卆壬とは浜と片岡が通っている卆壬大学の事である

「D、、、真奈美は?」

「怖くて確認してない、、、まあ卆壬なんて行くつもりないけどさぁ、、、」


と、ここで安川は桐島の存在に気づいた

「おっ、キリシマンじゃん なにしてんの?」

「なんもしてませんよ 帰るだけです」

桐島は携帯を開き、時間を確認しながら言った

「歩ちゃん最近どう?元気?」

「まあ、、、電話越しの感じでは元気です」

「どうせさ~、毎日毎日電話してるんでしょ?あゆみんと」

安川は桐島の目の前へぐっと顔を寄せる

「なっ、、、べ、別に毎日って訳じゃ、、、」

「ウッソ~?外山君から聞いたわよ?授業中、机に[あゆみ]って書いてたんでしょ?遠い目してさ」

「え?真奈美それホント?」

瞬は安川の話を聞き、引いた目で桐島を見る

「そ、それこそ嘘だろ!大体外山は同じクラスだけど席は離れてるし、授業中に俺の机なんて見れねえよ!」

桐島は根も葉もない話を必死に否定する

「え~?ホントに?」

「ホントです!ったく、安川さんか外山かどっちの嘘だよそれ、、、」

ニヤニヤしながら訊いてくる安川に桐島は力強く答える

「ふ~ん、でも電話ぐらい、毎日した方がいいかもね」

「、、、え?なんでですか瞬さん」

「やっぱり遠距離だし、、、普通に付き合ってた時と色々違うでしょ?」

「、、、まあ、、、はい」

「なんていうのかな、、、互いにすごい不安なんじゃないかなーって思ってね 離れてたら、前より相手の考えてる事分かんなくなるだろうし」

「、、、確かにそうかもしれないです、、、」

桐島は真剣な表情で瞬の話に耳を傾ける

「不安だと悪い事ばっかり考えちゃうしね 浮気してるんじゃないかとか、もう自分の事好きじゃないんじゃないかとか」

「そういうもんなんですかね?」

「それでちょっと何日か連絡取り合わなかったとするでしょ?そしたらね、なんか電話とかかけづらくなるの」

「え?なんでですか?」

「なんでかはよく分かんないけど、、、色々余計な事考えちゃうんだろね そういうのの積み重ねで別れるパターンが多いんだって 遠距離恋愛って」

「へぇ、、、そうなんですか、、、」

桐島は頷きながらしっかり頭に刻み込んだ


ふと、桐島の視界に安川が入った

「、、、やっぱり瞬さんは為になる事言ってくれますね~ 誰かと違って」

桐島はニヤリと笑いながら2人に言った

「っ!、、、ぐぬぬ、、、」

安川は悔しそうに唸りながら桐島を睨む

「ふん!毎日毎日電話なんかしたらねえ、うっとうしがられるだけだからね!」

安川は苦し紛れに桐島の鼻先を指差した

「私だったら絶対嫌よ!毎日電話してくる男なんて!その内ストーカー呼ばわりされるかもね!」

安川はそうわめきちらし、足早に帰って行った

「ま、待ってよ真奈美~!」

瞬もそのまま安川についていった


(、、、初めて勝った)

今まで安川には言いくるめられてばっかりだったので、初めて言い勝った事が桐島は愉快だった







家に帰った桐島は、軽く部屋の掃除をしながら時間を潰していた


ふと時計を見ると時刻は17時半


桐島はいつも、17時半から18時過ぎ辺りの時間に渡部に電話をかけていた

もしくは22時以降の寝る前である



「、、、そろそろ電話かけても大丈夫かな、、、」

桐島は掃除の手を止め、携帯を開いた

「、、、、、」

しかし、すぐには電話をかけられなかった

先ほどの安川の言葉が桐島の中で引っかかっていた




『私だったら絶対嫌よ!毎日電話してくる男なんて!』




「、、、やっぱ毎日電話されたら迷惑か、、、?」

桐島は一旦携帯を閉じ、考え出した

「誰ともあんま喋りたくない時とかあるだろうしな、、、疲れてる時とか、、、」

壁にもたれ、天井を見上げていた

「めんどくさい時とかもあるかもな、、、それに歩はまだ向こうの生活に慣れてねえだろうし、、、」

色々考え出すとキリがなかった

(、、、とりあえず今日はやめとくか、、、)

桐島は携帯をテーブルに置いた


「、、、、、いやダメだ!」

桐島はすぐに置いた携帯を手に取った

「確かこれ、瞬さんが言ってたヤツだ、、、色々考えたら不安な気持ちになるとかなんとか、、、危ねえ」

桐島はブルブル首を振り、意を決して携帯を開いた


♪~♪


「っっ!!」

するとちょうど携帯に着信が入り、桐島はビクッと震えた

「なんだよ開けた瞬間に、、、え?」

画面には電話番号の下に【歩の家】と書かれていた

「え、、、あ、歩、、、?」

いつもこちらからかけてばかりだったので、桐島の頭は一瞬混乱した

(もしかしてご両親、、、いや凛ちゃんか、、、?それか歩から、、、?)


♪~♪


考えている間も着信音は鳴り続ける

桐島はあらゆるパターンを想定しながらその電話に出た


「、、、はい」

「あ、誠哉君?出るの遅いよ~」

「、、、なんだよ凛ちゃんかよ」

桐島は溜め息混じりに答えた

「あれ?分かりました?似てると思ったんですけど」

電話をかけてきていたのは凛だった

「まあ似てなくはねえけど、、、普通に分かるよ」

凛のモノマネをつまらなさそうに一蹴した桐島はまた溜め息をつく

「で?どうした?俺になんか用か?」

「いえ、じゃあ姉さんに代わりますね」

「え?」

「ごめん誠哉君!凛が変な事しちゃって!」

「え、、、あ、別にいいけど、、、」

今度は本物の渡部だった

「私が、今から誠哉君に電話するって言ったら凛が今のモノマネ試したいって聞かなくて、、、」

「やっぱ分かるもんなんですね~ ちょっとわざとらしすぎたかも、、、」

「え、、、そ、そうか」

電話越しに凛の声が離れていくのがよく分かった


「ごめんね?どうしてもしたかったみたいなの」

「全然謝んなくていいって 何にも怒ってねえからさ むしろ久しぶりに凛ちゃんの声聞けてよかったし」

「そう、、、?ならいいけど、、、」

「、、、、、」

桐島は覚悟を決め、渡部に訊いてみる事にした


「あのさ、、、ちょっと訊いて良いか、、、?」

「え、、、な、なに?」

桐島の声が急に真剣になり、渡部は戸惑っていた

「、、、今日はお前からしてくれたけど、いつもは俺から電話するだろ?殆ど毎日ってぐらい」

「うん そうだね」

「そういうのって、、、やっぱ、ちょっと嫌か?」

「へ?な、なんで?嫌じゃないけど、、、」

「え、、、そ、そうか?」

桐島は少し明るい声色に変わった

「うん 当たり前だよ 私は嬉しいよ?誠哉君の声聞けたら」

「、、、だ、だよな、、、わりぃ、変な事訊いて!」

(なんだ、、、やっぱり大丈夫じゃねえか、、、)

桐島は心の中でホッと息をついた










翌日

放課後、桐島は安川に昨日の電話での話をしていた


「、、、ってな感じで、全然迷惑そうじゃありませんでしたよ」

桐島はやたらとドヤ顔で安川に言った

「、、、はぁ、なにいってんの?キリシマンったらさぁ、、、」

安川はため息をつきながら首をふる

「な、なにがですか!」

「あのねえ、、、そんな事、キリシマンが訊いたらイーミなぁいじゃーん!」

安川はテンポよく手を上げ、桐島に向かってビシッと指を向けた

「、、、はぁ!?どういう意味ですか!?」

「だからぁ、キリシマンにそう訊かれたらあゆみんとしては、どれだけ嫌がってたって!そう答えるしかないっつってんの」

「、、、、、」

桐島は安川の言葉を聞き、考え込んだ

「普通に考えてさ~あ?うん♪ホントはうっとうしかったんだ♪キャピなんて言えないでしょ?そう思ってたとしても」

「、、、確かに、、、」

桐島は頷きながら答えた

「あゆみんの答えは最初から一つに絞られちゃってたのよ!だから真意はまだ分からないわよ~ウフフフフ、、、、、」

安川は怪しげな笑いを残し、去っていった

「、、、、、」

桐島も安川の言葉を気にしつつ、帰路についた







桐島はいつものようにさっさと帰らず、住宅街をゆっくりウロウロしながら帰っていた


「確かに安川さんの言う通りだよな、、、あんな風に訊かれて、迷惑だなんて言える訳ねえよ、、、」

いじけたように小石を蹴りながら歩く

「つうかンナ事訊かれる事自体がうっとうしいよな、、、はぁ、安川さんに流されて、あんな事訊くんじゃなかったなぁ、、、」

ちょうど座りやすい石段があったので、桐島はため息をつきながらそこに座った

(、、、いや、訊いたのは俺だしな、、、人のせいにすんのはやめよう、、、)

後ろに手をつき、赤くなった空を見上げる

「、、、とりあえず今日はかけんのやめとくか、、、」

(瞬さんがそういうのダメだって言ってたけど、、、今電話かけたって話す事ねえし、、、)

桐島が半ばふてくされ気味にため息をついていると、ズボンのポケットに入っている携帯がブーブーと振るえ出した

「っっ!? な、なんだこの鳴り方?」

桐島は携帯を取ろうとポケットを探り、ある事に気づいた

(あ、、、そういや今マナーモードしたままだ、、、マナーモードは確かこんな鳴り方だったような、、、)

ポケットから携帯を取り出し、慌てて開いて画面を確認する

画面に出ていたのは【歩の家】だった

「えっ!?ま、また歩から、、、?」

桐島は条件反射でそのまま電話に出た

「も、もしもし、、、」

「こんにちは 誠哉君」

電話の声は間違いなく渡部だった

「あ、ああ、こんにちは、、、」

「ふふっ、わざわざ言い返さなくていいよ」

渡部は電話越しにクスクス笑っていた

「ああ、、、」

「今日も私からかけてみたんだけど、、、今大丈夫だよね?」

渡部は少し不安そうに訊ねる

「え?あ、大丈夫大丈夫 今下校中だし、、、」

「まだ帰ってなかったの?いつもより遅いね」

「まあな、ちょっと色々考えてたら遅くなっちまった」

「へぇ~、、、なに考えてたの?」

「えっ、、、えっとな、、、まあ、、、」

渡部の直球な質問に桐島は動揺した

「なに?難しいこと?」

「う~ん、、、難しい、、、ような難しくないような、、、」

桐島は言いにくそうに誤魔化しながら言った

「、、、もしかして、昨日の話?」

「え、、、昨日?」

「うん 昨日、誠哉君が言ってた話、、、毎日電話するの嫌か?って、、、」

「あ、、、」

桐島は頭の中の情報をまとめ、整理する


「、、、ああ、それの事だけど、、、」

「、、、昨日も言ったように、そんな事ないよ?いつも嬉しいよ?私は」

「、、、でもお前の場合はさ、携帯じゃなくて家の電話だろ?だからかけられたら困る時とかあるかなって、、、それに俺にそんな事訊かれても、答えようがないだろうし、、、」

桐島は不安に思っていた事を全て渡部に話した


「、、、誠哉君は、私とこうやって電話してるの嫌?」

「え、、、?」

「めんどくさいなーって、よく思う?」

「お、思わねえよ!思った事ねえし!」

「それは、、、私も同じだよ?」

「、、、、、!」

「誠哉君とこうして電話してる時間は、、、私にとって大事な時間、、、私と誠哉君、2人だけの時間、、、」

渡部はゆっくりと噛み締めるように、優しく囁いた

「歩、、、」

「昨日ね、誠哉君に電話をかける前に、、、凛とこんな話をしてたの」

「え、り、凛ちゃん?」




渡部は昨日の凛との話を桐島に語った


渡部と凛は2人とも渡部の部屋にいた

「そろそろ誠哉さんから電話がかかってくる時間ね 姉さん」

凛は渡部のベッドに腰掛けクッションを膝の上に置き、そこに肘をついていた

落ち着いた表情で渡部をからかう

「い、いいよ!時間まで覚えなくても!」

「無理に覚えた訳じゃないよ いつも同じくらいの時間だから勝手に覚えたの」

「~~、、、いいからそろそろ出てって 誠哉君から電話くるから!」

渡部は少し不機嫌な様子で部屋まで配線を引っ張っている子機を見つめる

「、、、いつも思うんだけど、姉さんから電話はかけないの?」

「え、、、?う~ん、、、まだかけた事はないけど、、、」

「じゃあたまには姉さんがかけてあげたら?」

「え?なんで?」

凛の提案に渡部は首を傾げる

「彼女の家の電話にかけるって、結構緊張すると思うよ?誰が出るか分かんないし、毎回覚悟キメて電話してるんじゃない?」

「、、、そうかな?別に全員知り合いなんだから緊張しなくてもいいのに、、、」

「あと、、、誠哉さんとしては自分からばっかりかけてる訳でしょ?それもあんまり良くないと思う」

「、、、なんで?」

ここまで言われても渡部はまだよく分からなかった

「一方通行みたいでしょ?自分ばっかりが喋りたくて、相手はそうでもないんじゃないかって錯覚するかも?ってゆうか今の状態じゃ絶対そう思うよ」

「え、、、そんな事ないのにな、、、全然、、、」

渡部は再び子機を見つめる

「じゃあ一回ぐらいかけてあげたら?それだけで誠哉さん、少しは安心するんじゃない?」

「、、、じゃあかけてみよっかな、、、」

渡部はおそるおそる子機を手に取る

「、、、、、」


ピッ ピッ ピッ


(あれ、、、なんだか緊張する、、、)

渡部は一つ一つ電話番号を入力していく



ピッ、、、プルルルルルル プルルルルルル


(あ、かかった、、、)

渡部は妙に緊張しながら子機を耳に当てている


「あ、そういえば、一度誠哉さんに試したい事あったんだ♪」

凛はひょいと渡部から子機を奪う

「あっ!凛!」

「ちょっとだけちょっとだけ、、、しっ」

凛は渡部を落ち着かせ、静かにするようジェスチャーする

「、、、もう、、、」

渡部は頬を膨らせ、渋々ながら承諾した








「で、凛ちゃんのあのモノマネか、、、」

桐島は改めて納得した

「うん、、、あと昨日、誠哉君との電話が終わった後、もう一つだけ凛が言ってたの」

「?なんて言ってたんだ?」

「、、、遠距離恋愛は、互いにちょっと声を聞かないだけで、すぐすれ違いが生まれるモノだって、、、」

「え、、、?」

「普通なら言わなくても伝わるような事も、全部不安な気持ちに繋がるから、、、ちゃんと言葉にした方が良いって言ってた」

「、、、、、」

(凛ちゃん、、、瞬さんと同じ事を、、、)

桐島は瞬に言われた言葉を思い出し、凛の言葉と照らし合わせた


「そう言われるとちょっと不安になっちゃって、、、それに誠哉君に電話する時、何でか分かんないけどすごい緊張するし、、、」

渡部はあくせくしながら一つずつ言葉を繋げる

(なんだ、、、歩も、同じような事考えてたのか、、、)

桐島は言いしれぬ安心感を感じた


「だからやっぱり、、、思ってる事はちゃんと口に出そうと思って、、、」

「そうか、、、そうだよな」

「うん、、、だから言うね、、、?」

「ん?」

「大好きです 誠哉君」

「っっ!?なっ、なんだよいきなり、、、」

突然の渡部の言葉に桐島は顔を真っ赤にしながら言葉を返す

「だって、思ってる事言った方が良いらしいから!」

「そ、、、そうだな、、、」

渡部の嬉しそうな雰囲気は声からしっかり桐島に伝わっていた

「じゃ、ま、、、俺も、、、同じかな、、、」

桐島はボソボソっと呟く

「、、、え?なにが?」

渡部はニヤニヤと笑いながら意地悪そうに聞き返す

「ね~ね~?何が同じなの?」

「~~、、、俺も、、、その、、、好きだよ、、、あゆ、、、」

桐島はゴニョゴニョ言葉を濁し、最後は何を言っているのか分からなかった


「え~?分かんない!もう一回!」

「だ、だから、、、す、好きだって、、、」

「誰が誰を?」

「う、、、し、知らねえよもう!」








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