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  作者: 外山
85/216

過去編~中学校~5

6月 下旬


少し蒸し暑さが増してくる季節だった


急な発作で入院した南は、数週間後には無事に退院していた


そして放課後 いつものように、桐島と調理室で料理の練習をしていた




「よーっし、イイ匂いしてきた!」

南はサバの味噌煮を作っていた

桐島はイスに座りながらそれを見ている

「毎日毎日、、、そんなに練習必要かよ?」

「別にいいじゃん!どうせ誠哉、暇なんでしょ?」

「まあ暇っちゃあ暇だけどよ、、、」

桐島はイスに座り、テーブルにもたれた

「そういや、なんか緋斬に食わしてやったか?」

「うん!最近は毎日作ってるよ!卵焼きが一番好きって言ってたかな」

「オーソドックスだな、、、まあいいや じゃあ緋斬お気に入りの卵焼きもちょっと作ってくれよ」

今まで桐島から南に何かを注文した事はなかった

「え、、、う、うん!これ作った後にね!」

なので南は少し動揺したが、それ以上に嬉しかった




「はいサバの味噌煮完成!じゃあ今から卵焼き作るね♪」

南はサバのお皿を置き、慌ただしく卵焼きに取りかかる

「おう」

桐島は調理室の箸を手に取った

「、、、?」

(なんか足りねえ感じするな、、、)

桐島は匂いを嗅ぎ、検証していた

(ま、とりあえず食うか、見た目はまあまあ、、、)

パクッと一切れ、口に運んだ

「、、、う」

桐島は顔はたちまち歪んだ

「ど、どう!?」

卵焼きを作りながら南は桐島に訊ねる

「い、いや、、、簡単に言うとマズい、、、」

「え、えぇ!?なんで!?」

「、、、まず醤油が、、、」





桐島は数箇所、問題点をズバズバ突く

南はそれを聞き、がっつりヘコんでいた


「、、、はぁ~ やっぱりまだまだだなぁ、、、」

「んな落ち込むなよ」

「だったらもう少し優しい言い方してよねー!淡々と述べちゃってさー」

南は不満そうにしながら卵焼きを完成に近づけている

「なんでお前がキレてんだよ、、、こんなもん食わされて、キレたいのは俺だっつうの」

「、、、、、んふふ♪」

南は嬉しそうに笑いながら卵焼きを皿に乗せた

「? 何笑ってんだよ?」

「んー?だってさー 誠哉、全部食べてるんだもん!あんなにマズいのに!」

「え?ああ、まあな 捨てんのもったいねえし、、、」

「だから私ね、作った料理は最初に誠哉に食べてほしいの」

南は手早く卵焼きを一口サイズに切り分ける

「え、、、?」

「全部食べてくれるのって、、、すごく嬉しい!」

南は満面の笑顔で卵焼きを桐島の前に置く

「、、、そ、そうか?」

桐島は少し恥ずかしそうに頬を引っ掻く

「、、、ん?」

桐島は、今の南の言葉に疑問を抱いた

「どうしたの?」

「緋斬は美味くなかったら全部食ってくれねえのか?あいつ、お前が作ったもんならなんでも食べそうだけどな」

「う~ん、どうだろ でもお兄ちゃんに美味しいもの食べさせたくて料理の練習してるんだし、、、美味しくないの出したくないじゃん」

「まあそりゃそうか、、、」


桐島は目の前に出された卵焼きに意識をうつした

「自信作だよ自信作!お兄ちゃんが一番好きなやつ!」

「ふ~ん、、、ま、見た目は悪くねえな」

「偉そうに言ってないで食べて食べて!」


南が急かす中、桐島は卵焼きを一切れ口に運ぶ

「、、、、、」

「、、、どう?」

よく咀嚼している桐島に、南はおそるおそる訊ねた

「、、、美味い」

桐島は湧き出てきた言葉を素直に口にした

「ホント!?よかった~」

南は一安心といった様子でイスに座る

「食感も良いしすげーふわふわだし形も綺麗だし、、、それになんか、、、」

桐島は皿の上の卵焼きの一切れを箸で開いた

「あれ?なんにも入ってない、、、」

「ふふん♪」

南は得意そうに鼻で笑う

「青じそみてえな、、、ゆずみてえな、、、そんな味がしたんだけどな」

「すごいでしょー?色にも殆ど出てないし!」

南は自分で作った卵焼きを一切れつまみ、パクッと食べた

「んー♪上手く出来てるー!」

「なんだこれ?どうやってやったんだ?」

「南特製の出汁を作ったの!完全にオリジナルだよ!」

「へぇ~、、、」

桐島は頷きながら感心していた

「誠哉にはこんなの出来ないでしょー?」

南のその言い方に桐島はカチンときた

「出来るっつうのこんぐらい!今から作ってやるよ!」

桐島は立ち上がり、腕をまくった

「出汁のレシピは教えないよー」

南は舌を出しながらイジワルそうな笑みを浮かべる

「要らねえよ!」








数日後のある日の昼休み


桐島はいつものように教室の机にいた

半分ぐらい眠りながら窓側にもたれ、外を眺めていた


「よお誠哉」

「ん、、、」

桐島は目を覚まし、声がする方を見た

「あ、、、緋斬か、、、」

桐島はあくびをしながら菅井の姿を確認する

「ゆっくり窓際で寝てられるなんて、やっと俺らにも平和が訪れたよな」

「、、、まあな 窓際で寝ててももう石ぶち当てられる事はねえよ」

「ははっ、んな事もあったっけなぁ」

桐島、野波佳、菅井の3人は1、2年の時は色んな所で色んな奴らとケンカをしていた

「それよりよ、最近南の料理がだんだん美味くなってんだけどよ やっぱお前のおかげかよ?」

「、、、へっ、そうかもな」

桐島は無愛想な答え方だったが内心嬉しかった

「そんでよ、アイツ、菅井レストランだか喫茶店だかなんだか開くっつってたろ?そこの料理長にお前を用意するっつってたぞ」

「ああ、そんな事言ってたな、、、ま、俺はなる気はないけど」

「んでよ、こんなの作ってんだよ」

菅井は笑いながら一枚の紙を桐島の机の上に置く

「ん?」

桐島はその紙に書いてある文字を読んだ




【菅井レストラン・喫茶店 桐島料理長の一品 無料券 00001】




そう手書きで書いてあった

「なんだこれ、、、迷惑な話だな」

桐島はそう呟きながら優しく微笑んだ

「つか最後の数字、これなんだよ?」

桐島は00001を指差しながら言った

「ああ、製造ナンバーだってよ」

「何枚作る気だよ」

「ははっ!ま、ありがたく食わしてもらうからよ?」

菅井は無料券を懐にしまい、教室の出口に向かう

「? 緋斬!どこ行くんだよ?」

「早退して今からバイトなんだよ ちゃんと学校から許可貰ってっからよ?」

緋斬は後ろ手に手を振りながら教室を出る


「あ、そうだ」

緋斬は振り返り、体半分教室に入った

「南な、体調は一応良くなったけど、まだちょっと不安定な状態だから気をつけて見てやってくれ」

「おう、分かった 仕事頑張れよ」

「わりぃな誠哉」

そう言って浮かべた菅井の笑顔はどこか悲しかった

「、、、?ああ なんだよ気持ちわりぃな」

普段からあまり礼を言い合わないので、改めて言われると妙に気恥ずかしかった

「へっ じゃあまたな」

菅井は軽く手を振り、去っていった







更に数日後の放課後


いつものように桐島と南は調理室にいた



「いや~、もう少しで夏休みだね~」

南は右肘をさすりながら窓の外を見る

「そうだな、、、ゴホッ」

桐島は失敗作のお好み焼きを食べさせられていた

「あー!せき込むな!失礼ねー!」

南は桐島の様子を見逃さなかった

「クソマズいんだよ、、、生焼けなのに焦げてるし 緋斬はお前の料理、上手くなったとか言ってたけど、、、」

桐島は菅井の言葉を疑いながらお好み焼きの出来を評価する

「そりゃそうだよ!お兄ちゃんには、誠哉が美味しいって言った料理しか作ってないもん!」

「俺は毒味役か、、、」

桐島はそう呟きながらもまた一口食べる



「それよりさ、もう少しで夏休みだね」

南は改めて話を切り出した

「ん?ああ、そうだな」

桐島はお好み焼きを食べながら話を聞いていた

「私さー、今まであんまり遠出とかした事ないんだよね」

「ふ~ん、遠出って、旅行みたいな事か?」

「うん!小学校の時は名古屋に住んでたんだけど、、、あんまり学校に行けないぐらい体が弱くてさ、殆ど入院してたんだ」

「そうか、、、」

(名古屋ね、、、そういや緋斬が言ってたな 緋斬のお祖父さんの都合で埼玉に引っ越してきたって お祖父さん、去年亡くなったらしいけど、、、)

桐島は菅井から聞いた話と南の言葉を頭の中で一致させた


「だからさー、いつか旅行とかしてみたいな~って、夏休みになるといっつも思うんだ」

南は想像を膨らませ楽しそうにだったが、やはり悲しそうでもあった

「、、、そんなに行きてえのか?」

「うん!思い出じゃん思い出!いつか誠哉も一緒に、、、」

「じゃあ、行くか?」

南のその表情を見ると、桐島はそう言わずにはいられなかった

「、、、え?」

南はキョトンとした表情をする

「多分、日帰りぐらいなら簡単に行けるぞ?旅行ってほどすごいモンじゃねえかもしれ、、、」

「行く!」

桐島の言葉を遮り、南は激しく頷いた

「行く行く!絶対行く!この夏休みだよね!?ホントに行ける!?」

「あ、ああ、行けると思うけど、、、」

南の乗り気ように桐島は少し引いた

「やったー!絶対行くからね!ありがとう誠哉!」

「礼を言うような事じゃねえけどよ、、、」

南の歓喜ぶりにつられ、桐島もなんだか嬉しかった

「お兄ちゃんも呼ぼ!」

「え?」

「愛も呼んで焦栄さんも呼んで、みんなで行こ!」

「ちょ、ちょっと待てよ南、、、」

桐島は南を一旦落ち着かせる

「へ?なに?誠哉」

「あのさ、、、なんつうかな、、、」

桐島は言いにくそうに頬を引っ掻いた

「?」

「一応、、、2人で行こうかなって、おもってたんだけど、、、俺は」

「、、、え、、、えぇ!?」

南は驚いた表情の後、かぁーっと一気に顔が赤くなった

「ま、、、嫌ならいいけど、、、」

「い、、、嫌じゃない!嫌じゃない!ふ、2人でもいい、っていうか、、、その方がいい、、、かも、、、」

南は最後の方の言葉をごにょごにょとごまかした

「そか、、、じゃ、まあ2人で行こうぜ、、、」

「うん、、、」

桐島は照れくささをお好み焼きを食べる事で紛らわしていた


「、、、でも私、お金ないしなぁ、、、お兄ちゃんがいないと」

「別に大丈夫だよ 俺出すし」

「え、、、で、でもさぁ!それはちょっと、、、」

「大丈夫だって 俺に両親いないの知ってるだろ?んで保護者はおばあちゃんだけだから、いわゆる生活保護ってのを貰ってんだよ 俺、全然金使わねえからそれなりに貯まってて、それ使うだけだから」

桐島はイチからちゃんと南に説明した


「う、う~んと、、、よく分かんないよ、、、」

「ま、とにかくそこは心配しなくていい」

「そっか!じゃあ大丈夫だね!」

南は安心した笑顔になった


「あとな、緋斬とか焦栄とか愛とか、みんなには内緒な」

桐島はコソコソ話をするように声をひそめた

「え?なんで?」

南もつられて声が小さくなる

「サプライズでお土産プレゼントしようぜ その方がおもしれえだろ」

「、、、うん、確かにそうかも!」

南はニヤリと笑ってみせた

「お兄ちゃんが驚きながら喜ぶ顔も見たいしね!」

南はそんな表情を浮かべている菅井を想像していた


「よし、じゃあどっか行きたいとこあるか?」

「いっぱいあるよ!まず北海道でしょー!?大阪とか京都も言ってみたいし~!他には四国とか、鳥取も行ってみたいな!砂丘があるんだよね!?」

「ま、待て待て!日帰りだぞ?あと行く場所は一カ所な!」

「え~?一つしか行けないの~?」

「当たり前だ!」











こうして桐島と南は、夏休みに日帰り旅行に行く事が決定した






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