前日
終業式から2日後 渡部が引っ越す前日
渡部と徒仲は喫茶店にいた
「久しぶりだねー!2人でこうやって遊ぶのも!」
徒仲はぐーっと伸び、テーブルに肘をつく
「そうだね 麻癒、高校に入ってからはずっと野波佳君にべったりだったもんね~」
渡部はストローでジュースを飲みながら言った
「え、、、そ、そうだっけ?」
徒仲は照れながら後頭部に手をあてがう
「でもさー、そんな私らをいっつも見てたじゃん 歩ちゃんと誠哉君2人で」
「え、、、?」
「入学してすぐ焦栄と私が色々あった時、歩ちゃんだってすぐ誠哉君と仲良くなってたよね~」
徒仲は思い返しながら斜め上を見た
「、、、そう、、、だったね 確か、、、」
渡部は少し元気なく答えた
「、、、、、」
徒仲はメニューを眺めながら渡部の様子をうかがう
「もう、、、明日なんだよね、、、?」
徒仲の声は先ほどより小さかった
「、、、うん、もう荷物も殆ど片づいてるよ」
「、、、そっか 新しい家、どんな感じ?」
「新しい、って言っても新築じゃないよ?一戸建てで、、、すっごい普通な感じ 2階建てなの」
「へぇ~、、、その内遊びにいっていい?」
「うん でも結構遠いから、道に迷わないようにね」
「、、、、、」
徒仲は暗い表情で俯いた
「、、、どうしたの?」
渡部は急に黙る徒仲の顔を覗き込む
「、、、ううん、ちょっと、、、」
「?」
徒仲は首を振り、顔を上げる
「歩ちゃん、、、ホントに引っ越しちゃうんだなって思って、、、」
徒仲は無理に笑顔で話そうとしていた
「麻癒、、、」
「なんかまだよく分かんないからさ、、、歩ちゃんが近くにいなくなるって事が、、、」
「、、、私も、そうかもしれない、、、」
渡部は軽く下唇を噛んだ
「、、、歩ちゃんはさ、、、このまま引っ越していいの、、、?」
「、、、え?」
「もう、、、なんの思い残しもない?後悔しない?」
「、、、、、」
渡部は徒仲の言っている意味が今分かった
「、、、誠哉君の事?」
渡部は改めて聞き直した
「、、、そうだよ」
徒仲は頷きながら答える
「、、、そう言われてもさ、、、」
渡部は困った様子で苦笑いする
「このまま引っ越しちゃったら、、、別れるしかないよ?どうにかするなら今しかないんだよ?」
徒仲は少し前のめりになった
「でも、、、私からどうすればいいのか、分かんないの、、、」
渡部は思いつめた表情で言った
「いきなり一緒に住むとかさ、、、訳分かんないでしょ?この前だって、引っ越さなきゃいいとか、凛をこっちに呼べばいいとか、なんの未練もないのか、とか言われたりさ、、、もう何考えてるのか分かんないの 誠哉君が、、、」
渡部はつとめて明るく話そうとした
「、、、ホントに分かんないの?」
「え?」
「誠哉君がなんでそんなむちゃくちゃな事言っちゃうのか、、、ホントに分からない?」
「、、、、、」
渡部は俯き、徒仲から目をそらした
「ホントは、、、分かってるよね?」
「、、、だ、だから分かんないって、、、」
「歩ちゃんがもっと早く言わないからだよ?引っ越す話とか、、、だから誠哉君、動揺して、なのに歩ちゃんは何も言わないし、、、でも誠哉君は歩ちゃ、、、」
「分かってるよそんな事!」
渡部は声を荒げ、徒仲の言葉を止めた
「最後まで言わなくたって、、、分かる」
「、、、じゃあ、、、」
「でも私だって、、、私にだって色々あるの、、、」
「、、、、、」
渡部の声はかすかに震えていた
「、、、ごめんね 問い詰めるような事しちゃって、、、」
徒仲はそれ以上聞こうとはしなかった
「ううん、、、私も、ごめん、、、」
「明日さ、、、みんなで見送りに行くから、、、」
「、、、うん ありがとう」
渡部は息を整え、笑顔で答えた
その頃 学校
野波佳、外山、北脇は春休みだが、制服を着て登校していた
学園祭の会議をするためである
「、、、じゃあ、これで会議は終わりね」
北脇はプリントをまとめた
「なあ、それよりよ、結局桐島来てねえじゃん」
外山は不満そうに2人に言った
「だよな、、、」
野波佳は心配そうにそれだけ呟いた
「、、、はぁ、じゃあ最後にもう一回だけ電話する?」
北脇はパカッと携帯を開きながら言った
プルルルルルル プルルルルルル
プルルルルルル プルルルルルル
プルルルプツッ
ただいま お客様のご都合、、、、、
「やっぱ出ねえか、、、くっそー、サボりやがってあの野郎」
外山は非常につまらなさそうだった
「あいつ、、、大丈夫かよ」
野波佳は頭をかきながら呟く
ピーッと鳴りましたら、ご用件を、、、、、
ピーッ
「誠哉?聞いてるわよね?」
北脇は留守電に声を吹き込んでいた
「明日、昼の11時にみんなで歩さんの見送りするから あんたも来なさいよ?いい?昼の11時だからね!」
北脇はそれだけ吹き込むと、電話を切った
「、、、あいつ、そんなんで来るか?明日」
外山は不安げな様子で言った
「さあね、分かんないわ」
北脇はため息をつきながら携帯電話を閉じた
「、、、、、」
(誠哉、、、明日はちゃんと来いよ、、、明日が最後だぞ、、、)
野波佳は目を閉じ、そう祈っていた




