最後の学校
終業式
渡部が南涯高校に通う最後の日
式は無事に終わり、放課後
春休みに心を浮き立たせていた生徒達も殆ど帰宅していた
「やっと春休みかー!でもあんまり暖かくないよな!」
九頭は桐島達の教室にやってきた
「この時期は毎年こんなもんだよ」
机に座ろうとする九頭を押しのけながら外山は呟いた
「あのさー!みんなちょっといい??」
徒仲は手を上げ、皆の注目を集める
「なに?唐突に?」
北脇は帰り支度を済ませ、徒仲の言葉に耳を寄せる
「近い内にさ、みんなで遊ぼ!?浜さんと片岡さんも呼んでさ!」
徒仲は皆の顔をぐるーっと見渡しながら言った
「歩ちゃんのさ、、、お別れ会みたいな感じ もうそうそうみんなが揃う事もないと思うし!」
「え、、、わ、私の?」
渡部は自分の話をされているとは全く分からず驚いた
「ふ~ん いいんじゃねえか?な?誠哉」
野波佳は横にいる桐島に話を振った
「、、、、、」
桐島は何かを決心したような表情をしていた
「ね?歩ちゃん 引っ越す前に一回ぐらいさ!」
「、、、あの、多分、、、」
徒仲の話に渡部は困った反応を見せていた
「誠哉もいいだろ?」
「、、、んなもんする必要ねえよ」
野波佳の呼びかけを桐島は一蹴した
「え?」
野波佳を始め、渡部も徒仲も皆も桐島の意外な言葉に引っかかった
「お別れ会なんて、、、んな事する必要ねえ」
桐島は立ち上がり、目線を下に向けたまま言った
「す、する必要ないって、、、!」
その桐島の乱暴な物言いに北脇は怒りを感じていた
「ど、どういう意味なの、、、?」
徒仲は、桐島に何か考えがあるのだろうと思った
「、、、歩が名古屋に行かなきゃいいんだろ?」
桐島は徒仲に訴えかけるように言った
「そ、そういう事じゃねえんじゃ、、、」
外山は遠慮がちに口を出した
「だったら、、、俺の部屋に住めよ」
桐島は渡部の前に立ち、イスに座っている渡部を見た
「、、、え?」
渡部は急な桐島の言葉に目を丸くさせた
それは他の皆も同じだった
「お、おい 誠哉 何言ってんだよ」
野波佳は注意するような口調で言う
「せめて高校卒業するぐらいまでこっちにいろよ 両親が名古屋に行くんなら、俺の部屋ぐらい貸すからよ」
桐島の目はいたって本気だった
「おー!スゲー!ドーセーってヤツじゃねえの!?」
九頭は目を輝かせながら響きのいい言葉を表した
「九頭!余計な事言うんじゃないわよ!誠哉、あんたねえ、なにむちゃくちゃな事言って、、、」
「お前らは黙ってろよ!」
桐島は北脇の言葉を遮り、怒鳴りつけた
「、、、、、」
桐島のその言葉で、皆黙りこくった
「、、、俺は、、、歩に話してんだよ、、、」
桐島はぐっと渡部の顔を見た
「、、、、、」
渡部は目をそらし、下を向きながら首を振った
「なに言ってんの、、、そんなの無理に決まってるじゃない、、、」
渡部はゆっくりと口に出した
「、、、なんでだよ」
「そんな無茶な事、お父さんとお母さんだって許すはずないし、、、」
「頼んでみなきゃ分かんねえだろ?なんなら俺も一緒に頼みにいくから」
「、、、そんな事されたって、、、困る」
渡部は下を向き、呟くように言った
「だいたい、、、ホントに親戚の人たち、許してくれたのかよ?」
「え、、、?」
渡部は桐島の言葉に引っかかった
「今までずっと色々あったのにいきなり、、、おかしくねえか?それかお前の両親が、早く凛ちゃんと一緒にいたいからって無理やり作った話だったりすんじゃねえのか?」
「っっ!」
渡部の表情は一気に厳しくなった
「もしそうだったら、向こうに行ったってまた嫌な思いを、、、」
ガタッ!
渡部は勢いよくイスから立ち上がった
パァン!!
破裂音が静かな教室に響く
渡部は左手で思い切り、桐島の頬を叩いた
「いい加減にして、、、テキトーな事ばっかり言わないでよ!」
渡部は桐島の顔を睨みつける だがその目には涙が浮かんでおり、桐島の顔はぼやけて映った
「なっ、、、」
桐島は、叩かれ赤くなった頬に手を添えた
「なにすんだよ!」
「誠哉君の言ってる事が訳分かんないからだよ!」
桐島に負けじと渡部も強く言い返す
「訳分かんねえだと、、、!?」
桐島はその渡部の言葉に顔を歪ませた
「そうだよ、、、だって、、、」
渡部が喋り出すのと同時に桐島は教室の外に向かって歩き出した
「あっ、、、ちょっと待っ、、、逃げないでよ!」
渡部は精一杯の力を声に込めた
「、、、お前がそう言うんなら、、、もう何も言わねえよ」
桐島はそれだけ言い残し、教室を出て去っていった
「あ、、、」
渡部は一瞬追いかけようとしたが、すぐに手を下ろした
「、、、も、もう、訳分かんないよね!?ホント、何考えてるんだろ、、、」
渡部は振り返り、皆に同意を求めるように言った
「歩ちゃん、、、いいの?」
徒仲は心配そうに渡部に訊ねる
「いいのいいの!今話したってケンカになるだけだし、、、」
渡部は元気に言ってみせたが、言葉尻はどこか暗かった
「あのバカ、、、なに意地張ってんだよ、、、」
野波佳はため息まじりに言った
「あ、、、麻癒、さっきの話だけど、、、」
渡部は振り返ったその場所に立ったまま言った
「え、、、っと、お別れ会の話?」
徒仲は先ほどの会話を思い出し話を繋げる
「うん、、、それね、多分無理かも、、、」
渡部は言いにくそうに呟く
「え、、、え?ど、どういう事?」
「もう、、、引っ越すの明明後日だから、、、色々と忙しくて、、、」
「、、、え?し、明明後日!?」
徒仲は思っていたより早い事に驚いた
「明明後日って、、、月曜日よね」
北脇は教室についているカレンダーを見る
「それ、桐島は知ってんの?」
「、、、まだ言ってない、、、」
外山の問いに渡部は首を振りながら答えた
この日になっても、2人の関係は一切修復されなかった




