表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 外山
78/216


週は明け、月曜日


3学期、桐島達の1年生最後の一週間


そして渡部にとって、南涯高校最後の一週間が始まった







昼休み


「滅多に行かないな~、屋上なんて」

徒仲はそんな独り言を呟きながら階段を上り、屋上に向かっていた


というのも先ほど、食堂で昼食をとっていると渡部からメールが来たのだ


内容は[ご飯を食べたら屋上に来てほしい]との事だった


「何の用だろ、、、?別に教室で済ませばいいのに」

徒仲は今更ながら少し疑問に思ったが、特にひっかかりはしなかった




ガチャ


屋上に出ると、まだ決して暖かくはない風を感じる


屋上を見渡し左側に目をやると、フェンスの近くに渡部がいた

渡部の他にも野波佳、北脇、外山、九頭といった面々も集まっていた


「あれ?みんなも歩ちゃんから呼ばれてたんだ」

徒仲は皆のもとに駆け寄る

「おー、屋上って結構広いよな!」

九頭は屋上の見渡した後、フェンス越しに下を見る

「私も歩さんにメールでね」

北脇は携帯を見せながら言った

「俺も ったく、この寒ぃなかなんだよ~教室でいいじゃん」

外山は極端に寒がるが、それほど寒くわない

「ごめんね すぐ終わる話だから」

渡部は落ち着いた様子で言った

「つか誠哉はいいのかよ?来てねえけど、、、」

野波佳は皆と顔を合わせながら渡部に訊ねる

「、、、誠哉君はいいの」

「それでそれで?話って何?」

徒仲はワクワクしながら急かした

「うん、、、あのね、、、」







渡部は皆に話し終えた


春休みに名古屋に引っ越す事

この一週間が、皆と過ごす最後の高校生活になる事を






「は、、、マ、マジで、、、?」

外山は驚き、それしか言えなかった

「い、いつから分かってたの!?引っ越す事!」

北脇は一歩、前に踏み出しながら訊いた

「一週間とちょっと前、、、卒業式の次の日に、親から聞いたの 本当はもう少し前には決まってたらしいんだけどね」

渡部は微笑を浮かべながら言った

「なんでだよー!?薫姉さんも綾ちゃんもいなくなって、、、渡部までいなくなったら淋しいじゃんか!」

九頭は今にも泣き出しそうな表情を浮かべる

「う、うん、、、ごめん、、、」

「九頭 歩さん困ってるでしょ」

北脇は渡部の表情をうかがい、九頭に注意する

「で、でもさ、、、」

「、、、、、」

「、、、いや、、、こっちこそごめん、、、」

渡部のシュンとした表情を見ると、九頭はおとなしくなった


「、、、麻癒、言うの遅くてごめんね 私もどう言って良いか分からなくて、、、」

渡部は中学からの親友である徒仲にも、この事は言っていなかった

その事に少し負い目を感じていた

「、、、、、」

徒仲は何も言わず俯いた

「麻癒、、、」

野波佳は徒仲の気持ちを察し、肩を支えた

「、、、うん、、、分かった」

徒仲は深く頷き、そう答えた

「じゃあ歩ちゃんが引っ越すまでの間、楽しくやろ!感傷的なのは私に似合わないからね!」

徒仲はニカッと明るい笑顔を見せた

「麻癒、、、うん、ありがとう、、、」

渡部の目には徒仲が無理をしているように見えた

今はその徒仲の気遣いが嬉しかった


「その話、、、誠哉にはしたのか?」

「ううん、まだしてない、、、」

野波佳の問いに、渡部は首を振った

「え、、、じゃあ早くしてやった方がいいんじゃねえの?」

外山のその言葉を聞き、渡部は思わず目を背けた








放課後


午後の授業をボーっと受けていた桐島は、放課後も引き続きボーっとしていた


席につき窓から見える景色もいつもと変わらず、つまらなそうに息をつく


「誠哉君」

そこに、渡部が声をかけてきた

「、、、ん?」

渡部の方を向き、力なく返事をする

「今日、、、久しぶりに一緒に帰ろ?」

語尾の口調を強め、笑顔で言ってみせた

「、、、ああ、、、」

桐島は一瞬目線を下げ、そのまま答えた






校門を出て、2人は帰り道を歩いていた


自然ある景色や住宅街、線路の横に流れる川


もう2人にとってはとっくに見慣れた道だった

渡部はふと、道の脇に咲いている花を見つけた

「わぁ!なんの花か分かんないけど咲いてる!」

膝に手をつき、マジマジと見た

「そっかー、ここちょうど日の光が当たりやすいもんね」

渡部は周りや空を見ながら呟いた

「そうだな、、、」

桐島は落ち着いた表情で微笑みながら言った

「~~、、、さっきからそればっかりだね 何にも思わないの?」

渡部はつまらなさそうに頬を膨らす

「何にもって、、、花とか分かんねえしさ」

「私だって分かんないよ?でも、、、見た感じだよ!キレイだなぁとか、いつ咲いたのかなぁとか」

渡部は身振り手振りで説明する

「あんまり考えた事ねえな」

「考えようよ!せっかくなんだから!」

「何がせっかくなんだよ、、、う~ん、、、」

渡部の言葉にしっくりこないままに桐島は考え出した


「、、、私、、、この道、好きなの」

渡部は少し下を向き、目を瞑った

「、、、え?」

桐島は、ゆっくりと話し出す渡部に意識を向ける

「高校生になってから一年間、毎日歩いたこの道、、、誠哉君や麻癒、みんなと歩いたりした道、、、別に何にもない道なんだけど、今は、、、」

渡部はそこで言葉を止め、再び目を閉じた

「今は、、、、、ごめん、何て言って良いか分かんない」

渡部は息をつき、笑いながらごまかした

「、、、、、」

桐島は下唇に力を入れ、決心したような表情になった


「俺も、、、この道は好きだ、、、」

桐島は深く頷きながら言った

「、、、、、」

渡部は黙って桐島の話を聞く

「でもそれは、、、歩がいるからだ」

「、、、え?」

急な展開に渡部は目を丸くさせる

「お前と一緒に歩いてるから、、、俺はこの道が好きなんだ」

「、、、誠哉君、、、」

「なのに、、、」

桐島は唾を飲み込み、口を開いた


「なんで、、、名古屋なんかに行くんだよ、、、」

「、、、え、、、?」

桐島の言葉に渡部は驚く


「し、知ってたの、、、?私が名古屋に引っ越す事、、、」

渡部はおそるおそる訊ねた

「、、、ああ」

桐島はゆっくりと頷いた後、力強くそう答えた






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ