来客
春休みまであと一週間となった土曜日
朝の9時
桐島は自宅のアパートの周りをほうきで掃除していた
この掃除も、アパートの一室をタダで使わせて貰う為のモノだった
「ふぁ~あ、、、眠いし寒いし、、、早く暖かくなんねえかな、、、」
そんな事を呟きながら桐島は縮こまる素振りをした
(これ終わったらもう一回寝るか、、、)
そう決めると、掃除をする手にも力がこもった
「そういや、、、最近あの変な夢、全然見てねえ気がするな、、、頭痛もなくなったような、、、」
軽く頭を撫でながらふと呟いた
「最後に頭痛とか変な夢見たのいつだっけ?いつから見ねえように、、、」
♪~♪
すると携帯の着信音がポケットから鳴り出した
「電話か、、、頭痛とかはまあいいや 無い方がいいんだし」
桐島は携帯を取り出し、パカッと開いて画面を見た
「、、、ん?」
(誰からだこれ、、、?)
画面には直接電話の番号が書いてあり、名前が出ていない
番号を登録している相手からではなかった
「、、、はい」
桐島はおそるおそる電話に出た
「あ、誠哉さんですか?」
電話から聞こえた声は女の子だった
「、、、?はい、まぁ、、、」
桐島はしっくりこない様子で返事をする
「、、、もしかして、もうお忘れですか?」
「え?」
「私ですよ 渡部凛です」
「、、、え、えぇ~!?り、凛ちゃんかよ!?」
桐島は怪訝な声色で言った
「なんですかその言い方?失礼だと思いますよ!」
凛はスネた様子で言い返す
「あ、ああ、、、ごめん、、、」
桐島は仕方なく謝った
(ちょっと苦手なんだよな、この子、、、)
困った様子で軽く頭をかく
「、、、まあいいです それより今から、そっちに行きますんで」
「は?」
「あと2時間後には埼玉についてると思うので、姉さんと一緒に駅で待っててください じゃ」
「え、、、い、いやちょっ、、、」
プツッ ツーツーツー
「、、、なんだよいきなり 勝手なヤツだなぁ」
桐島はため息をつきながら携帯をポケットにしまい、急いで掃除を進めた
桐島と渡部は駅の改札口付近のベンチに座っていた
「お前、、、凛ちゃんに俺の番号教えただろ?」
桐島は問い詰めるように言った
「え?うん 教えたけど、、、」
渡部はキョトンとした様子でこたえる
「、、、ま、まあいいけど、、、」
桐島はしっくりこない様子で頷く
(、、、こんな事で腹立ててる俺がおかしいのか、、、?いやでも、個人情報だしな、、、)
桐島は前屈みに座り直し、床を見ながら考え込んだ
「あ、つうか凛ちゃん、何しにくるんだ?」
「え?」
「なんでこんな時期なんだよ?あと一週間もすれば春休みな、、、」
と、桐島はそこで言葉を止めた
驚いた表情で渡部を通り越した向こうを見ている
「?」
渡部は桐島の視線の先を見た
そこには野波佳、徒仲、外山、北脇、九頭というお馴染みの面々がこちらに歩いてきている姿があった
「な、、、なんでアイツら、、、」
桐島が驚いているのを尻目に、渡部は立ち上がった
「みんなー!こっちこっち!」
渡部は楽しそうに皆を手招きする
「え、、、お、お前が呼んだのか!?じゃあ凛ちゃんが来る事は前から分かってたのかよ!?」
桐島は慌てて渡部に訊ねる
「う、うん ごめんね それは知ってたんだけど、誠哉君にだけは言わないでって言われて、、、」
渡部は申し訳なさそうに謝る
「、、、そ、そか、OK OK、、、」
(あのクソガキ、、、)
桐島は顔をひきつらせた笑顔で答えた
「歩さんに妹がいるなんて、全然知らなかった」
北脇は渡部の妹を見るのが楽しみそうにしていた
「私も、いるって事しか知らなかったよ!名古屋に住んでるんだよね!?」
徒仲は昔、渡部から聞いた事があるようだ
「桐島は知り合いなんだよな!?」
「なんで教えてくんなかったんだよ?」
九頭と外山は桐島に訊ねた
「別に、、、言う必要ねえし、、、」
桐島はもじもじした様子で答える
(あんまりこいつらと凛ちゃん会わしたくねえんだよな、、、)
桐島は気取られない程度に小さく息をつく
「どうやって知り合ったんだ?」
九頭は身を乗り出して言った
「、、、この前、名古屋に行った時に、、、ちょっとな」
桐島はため息混じりに面倒そうに言った
「え、、、お、お前、名古屋行ったのかよ!?」
野波佳は九頭を押しのけ、桐島に問いただす
「、、、ああ、、、」
「そ、、、そうか、、、」
2人は妙に真剣な表情で会話をしていた
「??」
その変な空気を皆は不思議そうに見ていた
「、、、まだ、行ってねえけどな、、、」
桐島は野波佳から目をそらし、小さく呟いた
「、、、そか、分かった、、、」
野波佳は頷きながら返事をした
「、、、? 焦栄?何の話?」
徒仲は野波佳の左肘をつつきながら訊ねる
「ん?ああ、、、」
「姉さん!」
野波佳が言いにくそうにしていると、改札口を出た辺りの場所から声が聞こえた
そこには大荷物を持った凛がいた
「あ、、、凛!」
渡部は手を振りながら凛に駆け寄る
「ちゃんと1人で来れたんだぁ~!」
「大丈夫だってば!乗り換えも一回しかなかったもん!」
キャピキャピと楽しそうにしている渡部姉妹を桐島はケワシイ表情で見ていた
「あ、誠哉さん!お久しぶりです!」
桐島に気づいた凛は軽くお辞儀をしながら挨拶した
「、、、久しぶりだな」
桐島はため息混じりに言った
「なんでそんなにテンション低いんだよー!?変なヤツだな!」
九頭はガバッと桐島と肩を組んだ
桐島は黙って面倒そうにしている
「皆さん、歩姉さんの友達ですよね?」
凛は皆の顔を順に見ながら確認する
「友達友達!つかすげえかわいいなぁ!さすが渡部の妹だな!」
外山は色んな角度から凛をじろじろと見る
「あ、、、ありがとうございます、、、」
凛は居心地悪そうに苦笑いする
「やめなさい!九頭!」
「おう!」
北脇が九頭の名を呼ぶと、九頭は外山を取り押さえた
「や、やめろ!もうしねえよ!」
外山は九頭から逃れ、桐島のもとに駆け寄る
「ちっ、、、おい、あとであの子の写真取らせてくれよ 多分売れそうだしよ」
外山はひそひそと小さい声で言った
「まだそんな事やってんのかよ、、、」
桐島は呆れた様子でこたえた
「凛ちゃんかぁ、、、歩ちゃんの妹ってどんなのか想像した事あったけど、やっぱり思ってたのと違うなぁ、、、」
徒仲はじーっと凛を見ながら考え込む
「どんなふうなの想像してたの?」
渡部は少し気になり、訊ねた
「んーっとねぇ、、、ただシンプルに歩ちゃんのミニチュア版みたいなの想像してたんだけど、、、実際は、歩ちゃんより少しキリッとした顔で、歩ちゃんより真面目そうで、歩ちゃんより将来立派になりそうな子だね!」
「ただの渡部の悪口だな」
考え込んだ後、スパッと言い切った徒仲に、野波佳は間髪入れずにツッコんだ
「でも、久しぶりにお姉ちゃんに会えたのに、私達もいていいの?」
北脇は気を遣ったよいな言い方をした
「いえ、私が是非姉さんのお友達に会いたかったんです!こちらこそ、お忙しい中すいませんでした!」
「ははー 別に全然忙しくねえよ!」
九頭は笑いながら答える
「、、、、、」
(ふん、外面かぶりやがってよ そんなヤツじゃねえだろ お前は、、、)
桐島は面白くなさそうに皆と凛の会話を眺めていた
「、、、、、」
凛はそんな桐島をじーっと見ていた
「、、、あっ、すいません、、、」
凛はふらつきながら桐島にぶつかった
「ちょっと荷物が重くて、、、」
凛は、少し息が乱れ辛そうな表情になった
「あ、ああ、、、」
(、、、まさかこの展開は、、、)
「ありがとうございます♪荷物まで持って頂いて!」
「、、、大丈夫大丈夫、、、全然いいよ、、、」
嬉しそうに礼を言う凛に対し、桐島は苦笑いだった
(クソ、、、なんで俺がここまで、、、)
凛の思い通りになっているようで桐島は良い気分ではなかった
渡部に着いていくように皆歩き出す中、徒仲はふと訊ねた
「ところで歩ちゃん?今からどこ行くの?」
「うん とりあえず、着いてきて!行く所は決めてるから」
渡部はバシッと答え、進行方向を指差した




