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  作者: 外山
68/216

父の話


プルルルルル プルルルルル



ホテルの一階に降りた桐島は、ロビーに座り渡部の父親に電話をかけていた



プルル ガチャ


「はい 桐島君か?」

「はい、、、今、歩さんと一緒にいます」

「え?見つかったのか?ケガとかしてなかったかい?」

「はい 多分大丈夫だと思います、、、」

「そうか、、、良かった」

父は安心した様子で息をつく

「じゃあすまないが、少し歩にかわってくれないか?」

「、、、かわりません」

「、、、え?」

「歩をその家には帰しません」

「、、、?」

父は全く状況を飲み込めなかった

「勝手な事を言ってすいません」

「いや、、、どういう意味だ?」

「、、、今日、凛ちゃんと出会いました、、、」

「、、、凛と?」

「はい、、、それで少しだけ、家の事情をお聞きしました、、、」

「、、、、、」

父は深く息をついた

「歩の事を嫌ってる人達の家に、なんで歩を連れて行くんですか?法事っていうのは、そんなに大事な事なんですか?」

落ち着いた口調だった桐島だが、少し声が大きくなっていた

「、、、、、」

「人の家の御事情に首を突っ込み、失礼な事を言っているのは分かっています、、、でも、、、」

「桐島君、、、少し、会えるかい?」

「え、、、?」

父の思ってもない提案に桐島は驚いた

「君に、、、出来る限り、言える事を話そう、、、」

「、、、、、分かりました」

桐島は覚悟を決め、そう答えた






プツッ


「、、、、、」

電話を切った桐島はゆっくりと立ち上がった

「桐島君」

すると廊下から桐島を呼ぶ声がした

「あ、わ、渡部、、、」

桐島は驚き、少し気まずそうな表情をした

「今の、、、お父さん?」

渡部は桐島が置いていった上着を手に巻くように持ち、おそるおそる訊ねた

「、、、ああ、今の聞いてたのか?」

「うん、、、あんまり聞き取れなかったんだけど、途中から離れて見てた、、、」

渡部は申し訳なさそうに言う

「あの、、、お父さんと会うの?」

「ああ 今からな」

シュンとした様子で言う渡部とは対照的に桐島はサバサバした物言いだった

不安そうな渡部を安心させる為だろう

「、、、私のせい、、、だよね、、、」

「、、、せい、ってなんだよ ただ会ってくるだけだぞ?」

「でも、、、」


ポン


渡部の言葉を遮り、桐島は優しく渡部の頭に手を置いた

「心配すんなよ ちょっと話してくるだけだから」

「う、、、うん、、、」

桐島に頭を撫でられた渡部は急に大人しくなった


「じゃあ渡部は部屋で待っててくれ すぐ帰ってくるからよ」

桐島は出入り口の方を向きながら言った

「あ、、、ちょっと待って」

「ん?」

「さっきは、、、歩、って言ってたみたいだけど?」

渡部はイジワルそうな笑みを浮かべながら言った

「あ、、、だ、だからなんだよ!あの人も渡部で、ややこしいから言っただけだ!」

「ややこしいから、なんて言ったんだっけ?」

「~~!知らん!」

桐島は顔を真っ赤にしながら出入り口に向かって歩き出した

「いいじゃない、、、一回ぐらい呼んでくれたって、、、」

渡部はスネたように呟いた

「~~~、、、」

このまま行くのは少し気がかりな桐島は諦めたように息をついた

「じゃあ行ってくるから ちゃんと部屋で待っとけよ、、、歩」

「え、、、?」

一瞬、理解が出来なかった渡部だったが、すぐに明るい表情に変わった

「うん!じゃあ待ってるね!いってらっしゃい誠哉君!」

渡部は嬉しそうに小さく手を振る

「ああ、、、」

(、、、なんか俺ばっかり言わされてる気がするな、、、)

「、、、まあいいか」

むず痒い気もするが悪い気分ではない桐島であった










桐島は、渡部の父と決めた待ち合わせ場所の公園に向かっていた

大きい運動場に隣接するような形のその公園は少しだけ遊具があり、それらを照らすように等間隔で電灯が立っていた


時刻は6時半を回っており、すっかり日も落ちていた


桐島が着く頃には、もう父は待っていた


「こんばんは 桐島君」

「こんばんは お待たせしました」

2人とも小さく頭を下げながら挨拶した

「とりあえず、座ろうか?」

父は近くのベンチを指した

「、、、はい」

2人は4人は座れるサイズのベンチに座った


「、、、すまないね 娘をここまで送ってくれた上に、こんな迷惑までかけてしまって、、、」

最初に話を切り出したのは父だった

「いえ、、、」

桐島は小さく首を振りながら言った

「凛に、、、会ったのかい?」

「はい」

「凛はなんて言っていた?」

「先ほど電話で話した通り、、、親戚の人達は、歩さんとご両親の事を嫌っていると、、、凛ちゃん自身も嫌っているようでした」

「そうか、、、」

父は顔を上げ、深く息をついた

「、、、凛の言ってる事は間違ってない、、、全ての原因は私にあるんだ」

「え、、、?」

「はっきり言って、、、私以外に悪い者はいない、、、言い訳のしようもないほどに私が全て悪い、、、」

「、、、どういう事なんですか、、、?」

桐島は全く話がつかめなかった

「、、、桐島君 先に訊くが、私に訊きたい事はなんだ?」

父は話をまとめるように言った

「え、、、っと、、、なんで歩さんが親戚から嫌われているのか、、、なんで凛ちゃんを名古屋に置いて埼玉に引っ越したのか、、、の2つです」

桐島は頭の中を整理しながら言った

「そうか、、、なら、全てを話さないといけないな、、、」

父は覚悟を決めた様子で息を整えた


「、、、15、6年以上も前の話になる、、、」

父はゆっくりと話し出した





渡部の父は名古屋の医大を出た後、大学病院に勤めていた

ある日、その病院の教授に、父は呼び出された


「君、、、お見合いをする気はないか?」

「は、、、?お、お見合いですか?」



お見合い、といういささか時代遅れなワードに父は驚いた


教授は昔からの知り合いに、良い男はいないか、娘のお見合い相手を探している、という話をされたらしい

そこで、若く優秀だった彼が選ばれたようだ


教授の知り合い、と言っても教授にとっては頭が上がらないスポンサーのようなモノで、何が何でも1人は用意しないといけなかった


「頼む!私の顔を立てるつもりで、、、」


「、、、分かりました 一度でいいんですよね?」


「ああ!相手方も色んな人とお見合いするようだから、気楽に行ってきてくれ!」




結局、彼はお見合いをする事が決まった



お見合いは相手の家で行われる事になった

彼は教授に新調して貰ったスーツを着用し、相手の家へと向かった


「まぁ、、、教授の顔に泥を塗らない程度に、それなりにやろう、、、」


彼はあまり乗り気ではなかった


お見合い相手を見るまでは





「初めまして 渡部明日香と申します」


「っ、、、」


彼は言葉を失った

身にまとう着物は彼女の為にあるかのように馴染み、丁寧に礼をする仕草には完全に心を奪われていた


「あ、、、こ、こちらこそ初めまして!」


彼は慌ただしい様子で頭を下げる


いつも冷静に生きてきた彼が、走ってもないのにこれほどまでに心拍数が上がったのは初めてだった






2人は自然に惹かれ合い、1ヶ月後には結婚をする事が決まっていた


彼は婿養子として【渡部】の家に入った


1人の子供も生まれた



そして月日が流れ、子供が1才になろうかという時、、、




渡部明日香は、不慮の事故で亡くなった







「え、、、?な、亡くなったんですか、、、?」

桐島は思わず聞き返した

「ああ、、、私の妻はある日、突然亡くなった、、、娘が1才になる直前だった、、、」

「、、、、、」

(亡くなった、、、?じゃあ今の渡部の母親は、、、?)

桐島は頭の中で今ある情報をまとめるが答えは出なかった






父は更に、話を続けた



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