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  作者: 外山
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電話

ある週の金曜日 放課後


「おーい桐島!掃除行こーぜ!」

隣のクラスの九頭は桐島を迎えにきた

「ああ 今日で終わりだしな!」

桐島も九頭につられて元気よく出て行く

山のようにあった掃除の時間も今日で全て清算されるのだ


「歩ちゃーん!帰ろー!」

皆が帰宅していく中、徒仲も渡部と一緒に帰ろうとしていた

「、、、、、」

渡部は浮かない表情で黙っていた

「、、、?歩ちゃん?」

徒仲は顔を近づけ、もう一度渡部を呼ぶ

「えっ?あ、、、な、なに?」

渡部は慌てて顔を上げ、返事をした

「だから!一緒に帰ろ!?」

徒仲はじれったそうに言った

「う、うん、、、」

渡部は返事はしたが、また浮かない表情で座ったままだった

「、、、歩ちゃん?大丈夫?」

徒仲は、渡部の様子を心配するように訊ねる

「、、、ごめん、やっぱり先に帰ってて、、、?」

渡部は気を遣うような喋り方だった

「え、、、うん 分かった じゃまた来週ね!」

徒仲は渡部の気持ちを汲み取り、先に帰る事にした

「ごめんね、、、」

渡部が小さく手を振ると、徒仲も笑顔で返した









桐島と九頭は廊下の窓拭きをしていた

「それにしてもさー!俺らのおかげでかなりキレイになったよな!この学校!」

九頭はキュッキュッと窓を拭きながら話す

「おー、食品加工室なんかは保健所から誉めてもらったしな 俺らって掃除上手いんじゃねえか?」

桐島も楽しそうに話していた

「掃除もさー、ちゃんとやってみると意外と楽しいよなー!」

「俺は住んでるアパートで軽く掃除してるからな 今更楽しさとかはねえよ」


「なんだよ、冷めてんなー」

2人はそんな会話をしながらも手慣れた様子で窓拭きをしていた

「、、、あ」

桐島は窓の外の景色にあるモノを発見した

(渡部、、、?なんでこんな時間に帰ってんだ?)

いつも放課後になるとすぐに帰る渡部が、30分以上も後に帰っていた

(それに、、、なんか元気ねえな、、、)

遠目に見ても、どことなく元気がないのは見て取れた

(そういや、、、今日はずっと元気なかったよな、、、)

桐島は1日を振り返っていた

「あ、桐島!サボってんじゃねえよ!」

「ばっ、サ、サボってねえよ!」

桐島は慌てた様子で窓拭きを再開した










最後の掃除が終わった2人は職員室に一言報告し、帰宅するため靴を履き替えていた

「いやぁー!やっとオワッタナー!」

九頭はそう言いながら外に出た

「ああ」

「じゃあ帰るわ!またな!」

九頭は先に小走りで帰っていった


「、、、、、」

桐島は携帯電話の電話帳から渡部の家の番号を見ていた

「、、、う~ん、、、アイツがケータイ持ってたら電話すんのになぁ、、、」

桐島は困った様子で呟いた 渡部は携帯電話を持っていないのである

「やっぱり、親が出るんだよな 家の電話って、、、」

桐島はそう思うと緊張してなかなかかけられなかった

「、、、まあいいか!別に!俺が電話したからって元気が出る訳じゃねえし!」

桐島は自分に言い聞かすように言った

だが言った直後に、渡部の今日1日の様子と帰り道を歩いている姿を思い出した

「、、、う~ん、、、」

桐島はもう一度、渡部の家の番号を見る

「そういや、、、俺からかけた事ねえよな 渡部の家に、、、」

いつも電話をかけてきてくれるのは渡部だった

「、、、しゃあねえな たまには俺からかけるか、、、」

桐島はついに、渡部の家の番号に電話をかけた


プルルルルル プルルルルル


「、、、、、」

この字余り気味の発信音が桐島を更に緊張させた


プルル ガチャ


「はい 渡部です」

「あ、、、は、き、桐島と申します!あの、歩さんはおられますでしょうか?」

桐島の人見知りは電話越しでも変わりはない たどたどしい喋り方だった

「、、、桐島君?」

電話の相手は渡部本人だった

「え、、、あ、渡部か?」

桐島はホッと安心したように言った

「うん、、、どうしたの?すっごい慌てながら喋ってたみたいだけど」

そう言いながら電話越しにクスクス笑う渡部の声は普段より落ち着いて聞こえる

「っ!しゃ、しゃあねえだろ!誰が出るか分かんねえんだから!」

桐島は、弱い部分を渡部に見られた様で気恥ずかしかった

言い返したが渡部はまだ笑っている

「なんだよ、、、元気そうだな」

桐島はホッと息をつきながら言った

「え?」

「今日、なんか元気ないように見えたからよ でも、大丈夫そうだな」

「、、、、、」

「?」

急に黙りこくる渡部を桐島は不思議に思った

「もしかして、、、心配してかけてきてくれたの?」

「え、、、?え~っと、、、ま、まあそうだな、、、」

渡部の問いに桐島は照れながら答えた 改めて訊かれると妙に恥ずかしい気分だった

「そっか、、、ありがとう」

「い、いや、、、別に礼言われるような事じゃ、、、」

「ううん、、、桐島君の声、聞いたらすごく安心した、、、」

渡部は噛み締めるように呟く

「、、、やっぱり、なんかあったのか?」

「、、、、、」

桐島は訊ねるが渡部は黙ってしまった

「、、、言いたくないなら、無理には聞かねえよ」

「、、、ううん、大した事じゃないんだけどね」

渡部は少し明るい口調に変わった

「明日と明後日の2日間でね、、、名古屋に行かないとダメなの、、、」

「え、、、?」

「法事なんだけどね、、、」

「な、名古屋って、、、法事で?なんで?」

「前言ったと思うけど、、、私、名古屋出身だから、、、親戚はみんな名古屋にいるんだ」

「あ、、、そうか」

桐島は以前、聞いた話を思い出していた


「、、、ん?なんでそれで元気ないんだよ?」

「、、、、、」

「、、、ま、分かったよ 気ぃつけて行ってこいよ?」

「、、、うん」

「、、、、、」

「、、、、、」



「、、、明日何時に行くんだよ?」

桐島は沈黙を破るように言った

「え、、、?」

「見送り、行ってもいいか?」

「、、、う、うん 来てくれるの、、、?」

「ああ、せっかくだしな あれだろ?新幹線で、東京経由で行くんだろ?」

「うん!えっと、、、朝の10時ぐらいに駅に行く予定なの」

「じゃあ10時に行くからな?」

「うん!ありがと!」

「おう、またな」


元気を取り戻した渡部の声を聞き、安心しながら桐島は電話を切った






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