結局
「どういう事だよ、、、」
桐島は、2人にゆっくりと訊ねた
「え、えっと、、、あの、、、」
渡部は突然の事に動揺し、上手く喋れなかった
「たまたまここで会ったんだ 今さっき」
そんな渡部に代わり、西野は冷静に話した
「、、、そすか」
桐島はそれだけ返事をしながら振り返り、歩き出した
「あ、、、」
渡部は2、3歩踏み出し、振り返って頭を下げた
「し、失礼します!」
「ああ、じゃあな」
西野は少しモヤモヤした気持ちで渡部と桐島を見送った
「、、、、、」
「、、、、、」
桐島と渡部は、2人とも黙って歩いていた
楽しい雰囲気の街並みの中、2人だけが暗い表情をしているように見えた
「、、、あ、あのね、和也先輩とはホントに偶然会っただけだから、、、」
この空気を見かねた渡部は重ねて説明した
「、、、分かってるよ」
桐島はそっけなく返事をする
「、、、ホントに?」
「ああ」
「じゃあなんで怒ってるの?」
「、、、別に怒ってねえよ」
「、、、、、」
渡部はそれ以上どう訊けばいいのか分からなかった
「それより、、、なんで遅刻したんだよ?」
「え?え~っと、、、ちょっと色々あって、、、」
「、、、、、」
桐島は黙って目で訴える
「えっと、、、なんていうか、、、」
渡部はオロオロ目を泳がせていた
「、、、、、」
桐島は小さく息をつき、目をそらした
「うぅ、、、ご、ごめんなさい、、、」
渡部は肩身を狭く感じながら言った
「、、、、、」
桐島は黙って歩きながら、色々と考えていた
(やっぱ、、、安川さんが言ってた通りなのかな、、、)
桐島は再び安川の言葉を思い出していた
『あゆみんの優先順位の一番は、果たしてキリシマンなのか!?って事よ』
『もしかしたら麻癒ちゃんかもしれないし、家族なのかもしれないし、、、キリシマンの順位が私や外山君より低いかもしれないし』
(今日遅刻したのだって、、、最近徒仲とばっか帰ってんのだって、結局は俺より優先するモノがあるからなんだよな、、、)
改めてそう考えるとあまり良い気はしなかった
「、、、うっ、、、う」
「、、、、、?」
桐島は声がする渡部の方を見た
「うぅ、、、ぐす、、、」
渡部は少し下を見ながら涙を流していた
「えっ!?な、ど、どうしたんだよ!」
桐島は予想外の展開に慌てて対応する
「ぐすん、、、ご、ごめん、、、」
「お、落ち着けよ!な!?」
「うん、、、うぅっ、、、」
渡部はなかなか収まる様子はなかった
桐島は近くの広場に向かい、程よく座れる段差に渡部を座らせ、自分も隣に座った
「大丈夫か?」
桐島は渡部の背中を撫でながら言った
「うん、、、ごめん、、、」
渡部は落ち着きを取り戻してきていたがまだ目には涙がたまっていた
「別に謝んなくていいけど、、、」
「ううん、、、」
渡部はメガネを外し、涙を拭った
「ホントはね、、、今日、もっと楽しい日にするつもりだったのに、、、」
「、、、、、」
「私のせいで、、、なんか色々噛み合わなくて、、、」
「、、、、、」
桐島はまた先日の安川の言葉の数々を頭に浮かべていた
(そうか、、、渡部はホントに、この日を楽しみにしてくれてたのか、、、)
そう思いながら渡部を見ると、桐島は妙に胸の奥が苦しくなった
(なのに、俺は、、、)
「、、、謝る事ねえよ」
「え、、、でも、、、」
「渡部がいればよ、それだけで充分楽しいし 何の問題もねえよ」
桐島はポンポンと優しく渡部の頭に手を置いた
「、、、ホントに?桐島君?」
「ああ、、、お前がメガネ外してる顔も、初めて見れたしな」
「え、、、あっ!」
渡部は慌ててメガネをかける
「だからよ、、、そんなに1人で気にすんなよ」
「、、、うん」
渡部は恥ずかしそうに目をそらした
「つうか、、、俺の方が謝りたいくらいだしな」
「え?なんで?」
「ちょっと遅刻したくらいで、妙にカリカリしてよ 悪かったな」
「ううん!それは遅刻した私が悪かったから、、、」
渡部は素早く首を振りながら言った
「いや多分、普段の俺だったらさ、別に気にしてなかったと思う」
「? そうなの?」
「ああ、、、何日か前に安川さんに変な事言われちまってさ 意識してたのかもな」
「真奈美さんが?」
「ああ、あの人に、渡部の中での優先順位の一番は俺なのか、って言われてさ 色々考えてたんだよ」
「優先順位、、、う~ん、、、」
渡部は難しそうに小首を傾げる
「最近は俺が誘っても徒仲とよく帰ってたろ?まあ徒仲とは前からよく帰ってたから普通なんだけど、、、改めて安川さんに確認されて、どう思えばいいのか分からなかった」
「そっか、、、」
「んで、今日もちょっと遅刻しただろ?別に遅刻する事なんかよくあんのにさ、西野さんと一緒にいるの見て、、、なんつうか、、、スネてたんだな 多分」
桐島は自分なりに自分の事を分析していた
「遅刻の理由も聞けなかったから、余計へそ曲げてたっつうか、、、わりいな」
「、、、ごめんね 遅刻した理由は言えない訳じゃないんだよ?」
「え?」
「あの時は言いにくかったのと、、、恥ずかしかったから」
渡部は立ち上がり、手に持っていたバッグを開けた
桐島もつられて立ち上がった
「、、、はい!これ!」
渡部はバッグから綺麗に包装された箱を取り出した
「、、、え?これ、、、」
「バレンタインデーだから、、、チョコレートだよ!」
渡部は笑顔で差し出す
桐島は両手で受け取った
「麻癒と毎日帰ってたのもね、これの準備をするためだったの」
「え、、、、そ、そうだったのか?」
「うん 今日遅刻したのはね、その包装がなかなか上手くいかなくて、、、思ってた時間に終わらなかったんだ」
「そうか、、、確かにあの時じゃ理由が言いにくかったってのは分かったけど、恥ずかしいってなんなんだよ?」
桐島はその部分が少し引っかかった
「恥ずかしいよ!包む事も出来ないようなヤツだって思われちゃうもん!」
渡部は少しムキになって言い返した
「それに何日か前から用意してたって思われるのもホントは嫌なんだよ?自分は不器用ですって宣伝してるようなモノだし、、、桐島君は料理とか得意だから分からないかもしれな、、、」
ガバッ
喋り終える前に、桐島は渡部を抱きしめた
「ふわっ!え、、、?」
「、、、ありがとな」
「う、うん、、、」
渡部はどうしていいか分からず、身を任せる
(、、、結局、ただの勘違いだったんだな、、、最初から渡部は、俺の為に、、、)
桐島はゆっくりと渡部を離した
「じゃあ行くか!」
桐島は振り返り、歩き出した
「え?ど、どこに?」
「渡部が行きてえとこだよ」
「ホントに!?」
渡部は嬉しそうに桐島についていく
「ああ まあ最初の予定通りとはいかないだろうけどな」
「じゃあじゃあ!見たい映画あったからそれ見に行く!その後デパートに行って買い物して~、ご飯食べて~、向こうの大通りでイベントみたいなのやってるから写真取りに行って~、、、」
「お、多すぎだろ!考えろバカ!」
「あ、最初にイベントのとこ行こっか!」
渡部は桐島の腕を抱き寄せ、引っ張りながら言った
「全部は無理だからな!」
そう言いながらも、桐島は言うとおりについていった




