過去編~中学校~3
鈴科愛と菅井南の中学校入学式から2ヶ月半
社交的で明るい鈴科はもちろん、人見知りな南も少しずつ皆と仲良くなってきていた
そんなある日の放課後
桐島、野波佳は教室で帰宅しようとしていた
「あれ?緋斬は?」
桐島は教室を見渡すがどうにも姿が見当たらない
「ああ、アイツ、バイトしてんだって」
野波佳は席を立ち、あくびをしながら言った
「バイト?中学生ってバイトしていいのかよ?」
「さぁ、、、なんか配達系のならいいとかなんとか、、、親と学校の許可があったらな だから新聞配達でもしてんじゃねえ?」
野波佳はそう言いながら教室を出た
「ふ~ん、、、」
桐島は1人で納得しながら頷いていた
「えっ、、、ちょ、ちょっと焦栄さん、、、」
「いいからいいから どうせあのバカ暇だから気にすんなよ」
教室の外で聞き覚えのある声が会話していた
「?」
桐島は声がする方を見る
「きゃっ!」
すると押し出されたように南が教室に入ってきた
「あ、、、またかよ」
桐島は少しげんなりした表情になった
「う、うん、、、ダメ、、、?」
南は遠慮がちにチラッとだけ桐島を見る
「、、、ま、別にかまわねえけど」
桐島は溜め息混じりに返事した
南はパァーっと明るい表情になった
桐島と南は調理室についた
「失礼しまぁーす!」
南は満面の笑顔で調理室のドアを開けた
「別に誰もいねえんだから挨拶なんていらねえよ」
桐島は南とは正反対にテンション低く調理室に入った
「ダメだよ!せっかく先生達に無理言って使わせてもらってるんだから!」
南は準備しながら桐島に言った
「まあ材料も、殆ど活動してねえ調理部の部費から貰ってるしな ま、挨拶とはなんの関係もないと思うが」
「もぉ、冷めてるなぁ、誠哉は」
南は溜め息をつきながら呟く
「、、、前から聞きたかったんだけどなんで俺だけ呼び捨て?焦栄はさん付けなのによ」
「ん~、、、愛がそう呼んでたから真似してみただけ それに、、、」
「、、、それに?」
「、、、なんでもない それより今日は何作る!?」
「そうだな、、、ご飯でいいだろ」
「ご飯は炊くだけじゃない!」
「じゃあ卵かけご飯」
「卵をかけるだけでしょ!」
(それに、、、呼び捨てで呼んだ方が、、仲良くなれる気がしたから、、、)
またある日の放課後
ガラガラ
「おい桐島ー、進路の紙が出てないぞ」
そう言いながら教室に仲谷という教師が入ってきた
仲谷は今の桐島のクラスの担任で、不良として疎まれていた桐島、野波佳、菅井と唯一まともに会話出来る教師である
「進路?」
桐島は心当たりがなさそうな様子だった
「マジで?お前まだ出してねえのかよ」
野波佳は驚いた表情を見せた
「お前出したのかよ?つか俺らが行ける高校なんてあんのか?」
「俺は南涯高校にしといたぜ ちょっと遠いけどよ」
「は?お前あんな普通のとこいけんのか?」
桐島は意外そうに訊ねた
「野波佳は桐島よりは勉強は出来るからな それに南涯高校は中学3年の1、2学期の出席日数を重視して見るらしい 桐島も3年になってからは殆ど休んでないしチャンスはあるんじゃないか?あとは面接だな」
仲谷は細かく説明した
「ふ~ん、じゃあ焦栄と同じとこでいいよ それより仲谷、訊きたい事あんだけど」
「なんだ?」
「緋斬、バイト始めたのか?」
「? ああ、始めたのは中3になる前の春休みくらいからだったかな 最近増やしたとは言っていた」
仲谷は思い出しながら言った
「最近休みがちだったり早退すんのはバイト増やしたからか」
野波佳は納得したように頷いた
「ふ~ん、、、」
(、、、なんで俺らにも言ってくんねえんだよ、、、)
桐島は不満そうに立ち上がった
「桐島 進路は、、、」
「紙なんかどこにあんのかも分かんねえよ 焦栄と同じとこにしといてくれ」
桐島はそう言いながら教室を出た
「あ、、、ったく同じにしても書かなきゃいかんのだがな、、、」
仲谷は溜め息をついた
「ま、俺は帰るわ」
野波佳も続いて教室を出ようとした
「? 俺は、って、、、桐島は帰ったんじゃないのか?もしかしてまたケンカとかじゃないだろうな?」
仲谷は野波佳の言葉に引っかかった
「違うって もうケンカはしねえっつったろ?そうじゃなくて調理室に行ってんだよ」
「調理室?」
「ああ、緋斬の妹の南が料理すんの好きみたいでよ 練習に付き合ってんだってさ」
「料理?桐島、料理なんて出来るのか?」
「さあ?一緒に練習してんじゃねえの?」
「今日は洋風バジル仕立てイタリアンスープを作ろうと思います!」
南は改まって宣言した
「ンナでけえ声出さなくても聞こえてるっつうの それよりお前さ、ジャンル決めろよ」
「へ?」
「色んなモン作りすぎて頭に入んねえだろ 今回のも、、、料理名からして意味分かんねえよ バジルとかねえだろ?」
「いいんだよそんなの!料理名はハッタリが効いてるぐらいが丁度いいの!」
南は桐島の意見を聞き入れようとしなかった
「なんだよそれ、、、」
桐島は呆れながらも笑っていた
「それに、ちょっと作れるだけじゃ意味ないもん」
南は桐島の鼻先に指を立てた
「私はね?色んな料理が作れるすっごーい料理人になりたいの!」
南は笑顔でそう答え、作業に取りかかった
「、、、わがままなやつだな」
桐島はどこか嬉しそうにそう呟いた
「え~っと、次は確かこうだったかな、、、」
「、、、、、」
南はたまに汗を拭いながら必死で料理を作っていた
それを見ていた桐島はふと口を開いた
「南、お前さ、なんでそんなに料理上手くなりたいんだよ?」
「え?」
「ずいぶん頑張ってっからよ 前から気になってんだけど」
「、、、誠哉も知ってると思うけど、私の家はお父さんがいないんだ いわゆる母子家庭ってやつで お兄ちゃんとお母さんと私の3人家族」
南は喋りながら鍋に火をかけた
「私は昔から体が弱くて 、、、お母さんもそうで、ちょっと前からまた発作が出てきちゃったり、入退院繰り返してて、、、あまり良い状態じゃなくて、、、だからお兄ちゃんが最近凄く疲れてるみたいに見えるの」
南は頭に巻いていた三角巾を外した
「だから、お兄ちゃんがお仕事から帰って来た時、お母さんが何でも食べられるようになった時、そんな時ぐらいは、お家でゆっくりおいしいもの食べてほしいの、、、」
「、、、そうか」
「えへへ、お兄ちゃんには言わないでね なんか恥ずかしいし、、、」
南は少し真剣な話になったのが照れくさかった
「じゃあ、調理部に入ったらよくねえか?あんまり活動してないっつっても、やらないよりはマシだろ そしたら調理部の奴らからアドバイス貰えるだろうし」
「、、、、、」
南はその言葉に、あまり良い表情をしなかった
「?」
「、、、毎日付き合わされるの、、、迷惑かな、、、?」
南はおそるおそる上目遣いで訊ねた
「え、、、い、いやそういう意味じゃなくてな、、、」
「、、、、、」
桐島は必死で言い訳しようとするが南は後ろを向き、俯いてしまった
「ぜ、全然迷惑じゃねえよ!ただなんとなく気になっただけだって!つかなんか楽しいしな!俺は1、2年とケンカとかばっかしてたからよ!平和っていうか、、、」
桐島は汗をかきながら慌ててフォローした
だがこういう時にどうすればいいのか分からなかった
「、、、ふふっ!」
「え?」
「、、、はははっ!誠哉慌てすぎー!」
南は腹をかかえて笑い出した
「、、、え?」
桐島はまだ状況がよく分からなかった
「汗かいて目回してさー!ははは!誠哉クンカワイー!」
「、、、なっ!なんなんだよお前は!」
桐島は急に恥ずかしくなってきた
「そんなに慌てた誠哉、初めてみたかも!」
南を笑いで乱れた息を整えながら言った
「ったく、俺の真面目なアドバイスを、、、」
桐島は不満そうに息をつく
「今は調理部は遠慮しとくよ だって、調理部の人達よりすごいアドバイザーがいるもんね?」
南は桐島にウインクした
「まあいいんならいいけどな、、、」
「でもいずれはちゃんと勉強して、菅井レストラン開くからね!その時は料理長として誠哉、頑張ってね!」
「はぁ!?なんで俺が!アホか!」
「菅井喫茶店でもいいかなー!」
南は楽しそうに空想を膨らましていた
「、、、ったく、勝手な奴だな、、、」
桐島はそう息をつきながら優しい笑顔で南を見ていた
「、、、あ、スープ焦げてねえか?」
「あっ!」
南は慌てて火を消した
「ちょっと焦げてる、、、もぉ~、誠哉が見ててくれないから、、、」
「人のせいにすんなバカ!」




