お願い事
時刻は23時49分
桐島、渡部以外の皆はもうとっくに集まっていた
「歩ちゃ~ん、、、もぉ~、どこにいるの~?」
徒仲は不安そうな表情で渡部を探していた
「まあいいじゃねえか もしかしたら桐島と一緒にいるかもしれねえし」
外山はうるさい徒仲を黙らしたい一心で言った
「じゃあ良くないじゃん!私の歩ちゃんなのに!」
徒仲はキッと外山の顔を指差した
「携帯は回線がパンクして繋がらないから誠哉君とも連絡とれないし、、、年越しまでに間に合うかな?あと10分しかないよ?」
徒仲は焦りながら携帯を開いた
「どうだろなー」
野波佳は色々と考えながら返事をした
「俺も桐島にいてほしいなー」
九頭は手を頭の後ろで組み、空を見上げながら言った
「まあそうね、、、」
北脇は周りをキョロキョロ見渡しながら言った
浜と片岡は特に気にせず、屋台で遊びながら歩いていた
瞬と安川も仕方なくそれに付き合っていた
(まだあゆみんもキリシマンも来てないって事は、、、上手く行ってるのかな?)
安川はワクワクした気持ちで2人と合流するのを待っていた
「、、、俺と、、、付き合ってほしい、、、」
「え、、、」
渡部はまた目をそらした
「あの、、、えっと、、、」
渡部の顔はだんだん赤くなってきていた
「、、、ホ、ホントに嘘じゃないんだよね、、、?」
「ああ」
「ほ、本当に?」
「ああ」
「絶対?」
「だから絶対嘘じゃねえって!」
「、、、うん、分かった、、、」
渡部は小さくコクッと頷いた
すると寺でショータイムのような事が起きていた
「ヘーイ!年越しまであと5分を切りました!みんなカウントダウンの準備出来てるかー!」
「ウォーイ!」
その声は当然、2人にも聞こえていた
なんとも胡散臭い寺である
「和太鼓もセットされて、オーディエンスも集まって、あとは年越すだけって感じー!?」
「ノーノーノー!!」
「そうだよねそうだよね!?この5分!つまり300秒の時間無駄にしたくないよね!?」
「オーー!」
「だったら毎年恒例の、、、告白ターイム!」
「イエーー!」
「もし横に気になってる異性がいるならば思い切って、、、告白しちゃおー!」
そんなアホの集団の声を聞き、桐島は動揺していた
(うざい仕切りしてんじゃねえよ!こっちはてめえに言われる前から始まってんだよ!)
桐島は拳を握り、苛ついていた
トン トン
すると渡部は、桐島の肩を2回指先でつついた
「、、、へ?」
桐島は渡部の方を見る
「、、、ふふっ」
渡部は恥ずかしそうに顔をそむけながら笑った
「、、、?」
(なんだ、、、?どういう意味だ、、、?)
桐島が困惑しているとまたアホの集団が騒ぎ出した
「よーしみんな告白出来たかなー!?」
「ワァーー!!」
「じゃあお次は、、、お返事ターイム!!」
「ヤァーー!!」
「返事の方法は簡単!!お断りー!!ならば相手の肩を1回つつく!!よろしくお願いしまーす!!ならば相手の肩を2回つつく!!」
「、、、え?」
桐島はその説明を聞き、慌てて渡部の方を見た
「、、、、、」
渡部は照れながら少し下を見ている
「、、、、、」
桐島はまだ、頭の中で整理がついていなかった
「じゃあそろそろカウントダウン行こうかー!!35秒前!!」
「34!!33!!32!!」
全員が声を合わせてカウントダウンを始めた
「、、、、、」
「、、、、、」
2人は互いに黙ってカウントダウンを聞いていた
21、20、19という声が聞こえてくる
「、、、、、」
渡部はぎこちない様子で、桐島の肩にもたれかかった
「え、、、、、」
桐島も慣れない様子で対応する
12、11、10、9
「、、、来年も、、、来年からも、、、よろしくね」
渡部は手を強く握りなおし、桐島の顔を見上げた
「、、、ああ」
桐島はしっかりとその手と肩に、渡部の温度を感じた
3、2、1
ドコドコドコ!!ドゴーンドゴーン!!
ァアーーー!!
人々の歓声と和太鼓の振動で2人は一瞬ビクッと震えた
「、、、えへへ」
「、、、ははは!」
2人は妙に照れくさそうに笑った
「じゃあお賽銭入れて、お願いしに行こ!」
立ち上がり、次は渡部が強引に手を引いた
「そ、そんな急がなくても、、、」
「ダメ!私もうお願い事決めてるもん!」
「え、、、?なんなんだよ?」
「、、、ふふっ!えっとねぇ、、、」
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「、、、あー!歩ちゃん!」
とぼとぼ歩いていた徒仲は渡部と桐島を発見した
2人はもう手を離していた
「どこ行ってたのー!一緒に年越ししたかったのにー!!」
徒仲は渡部にしがみつき、泣きついた
「ご、ごめんね」
渡部は徒仲の頭を撫でながらなだめた
「じゃあ一緒にお願い事しに行こ!?」
「、、、もう行っちゃったんだけど、、、もう1回行こっか!」
渡部と徒仲はそのまま賽銭箱がある方まで歩いていった
皆もそのままついていく
「お前ももう賽銭行ったのか?」
野波佳は歩きながら桐島に訊ねる
「まあ、、、一応な」
「ふ~んお前がお願い事ね~、、、人って変わるもんだなぁ~」
野波佳は笑いながらからかった
「、、、お前だって、中学ん時とは全然違うけどな」
「だよねー!ちなみにさ、何お願いしたの?」
急に鈴科が割り込んできた
「え、、、ど、どうでもいいだろンナ事、、、」
桐島はテキトーな言葉でごまかした
『、、、そか、、、なんだ、俺と同じじゃん』
『え、、、そうなの?』
『ああ』
『、、、えへへ やったー!じゃあ絶対叶うね!このお願い事!』
「ねえ歩ちゃん」
「なぁに?」
「もうお願い事したんだよね?何をお願いしたの?」
「、、、、、ヒミツ!」
「え~!歩ちゃ~ん!」
「それよりさ!私ら早く歩きすぎだよ!みんなとはぐれちゃう!」
「ごまかさないでよ~!」
パンパン!
みんな揃って手を合わせ、目を閉じた
(歩ちゃんと焦栄と、みんなとずっと楽しく出来ますように、、、)
(麻癒と誠哉と、みんなと楽しくいれますように、、、)
(九頭、誠哉を始め、成績が悪いみんなも一緒に進級できますように、、、)
(瞬さんと安川さんと浜さんと片岡さんが俺の事を好きになりますように、、、)
(みんななんで目を瞑ってるんだ?もう目を開けていいのか?)
(鈴科孤児院が黒字になりますように、、、あ、でも黒字だと良くないのかな、でもな、、、)
(真奈美と浜先輩が、ウチに来てダラダラせずにキチンと生活しますように、、、)
(来年も純の家でダラダラできますように、、、)
(ゲームくれ 面白くなくても良いぞ)
(み~んな幸せになってほしいわ~)
それぞれ、真剣にお願い事をしていた
桐島と渡部ももう一度、目を閉じ、手を合わせていた
(来年も渡部と、初詣にこれますように、、、)
(来年の初詣もまた、桐島君とこれますように、、、)
「、、、、、うん!完璧!じゃあ次行こー!」
徒仲は渡部と腕を組んだ
「元気だな つかうるせえなお前は」
外山は疲れた様子で言った
「ゴチャゴチャ言わない!外山英太のくせに!」徒仲はべーっと舌を出した
「歩ちゃん!おみくじ行こー!あと、向こうにも、、、」
「そんなに引っ張らないでよー!」
「おい桐島ー!俺らもおみくじ引こーぜ!」
九頭は陽気に桐島を誘った
「おー、いってらっしゃい」
桐島は殆ど聞き流していた
そうしている中、ふと桐島と渡部は目が合った
「、、、、、」
「、、、、、」
互いに恥ずかしく、僅かに頬を染めながら目をそらす
「なぁ桐島ー!」
いきなり九頭が目の前に現れた
「う、うるせー!」
桐島は思わず九頭を殴った
「ってえなてめー!」
「うるさいわよ!」
北脇は九頭の頭をはたいた
「なんでだよー!悪いの桐島だろー!」
九頭は2人にやられた頭をさする
「お前がいきなり現れっからだろ!」
桐島はそう言いながらチラッと渡部が目に入った
渡部は楽しそうに笑っていた
「、、、、、」
桐島は渡部の顔を見ていると、穏やかな気持ちになれた
「聞いてんのか桐島ー!?」
そしていきなり九頭の顔が現れた
「う、うわぁー!」
桐島はまた九頭を殴った
「ぐわっ!なんなんだよてめー!」
「だからいきなり現れんなって!」
桐島は、渡部を見て、、、絶対にお願い事は叶うと確信していた
だが、1年後の今の頃にはすでに、2人は互いにもう、二度と会わないと決めているとは、、、、、
今の2人には、知る由もなかった




