理由
もう20分以上は経っただろうか
桐島と渡部はずっと噴水ショーを見ていた
色んな感想を述べながら楽しそうにしている渡部とは対照的に、桐島はなんとなく、ぼーっと眺めているだけだった
(ったく、、、いつまで見てる気だよ、、、)
桐島は小さく息をつき、目だけ渡部を見る
「わぁ!次はレジャーバードだ!」
渡部は小さく拍手をしながら目を輝かせている
「、、、、、」
(まあ、こいつが楽しいんならいいけど、、、)
桐島はベンチに深くもたれた
(、、、え?)
桐島は自分の考え方に違和感を感じた
(、、、なんで渡部が楽しいんならいいんだよ、、、よくねえよ!俺が嫌なんだから!)
桐島は片手で頭を押さえながら小さく首を振る
(、、、つーかそもそも嫌なのか、、、?もう30分ぐらいここにいるけど、、、別にイライラとかしてねえよな、俺、、、)
桐島は落ち着いて現状を把握しようとした
(俺は噴水ショーには興味がない、寒い、30分座らされている、、、それで嫌じゃねえって事は、、、)
桐島はバレないようにチラッと渡部を見る
渡部はフードを被ったままマフラーを口元で押さえている
(もしかして俺、、、渡部の事、、、す、、、す、、、)
すると渡部はくるっと桐島の方を振り向いた
「? どうかした?桐島君」
「はっ!?いや!な、なんもねえけど?」
渡部の急な呼びかけに桐島は必死で平静を装った
「そう?」
渡部は少し不審に思いながらも特に気にする事はなく、また噴水ショーに注目していた
「、、、、、」
(、、、もし好きになるんなら、、、もっと早くなってるはずだよな、、、)
桐島はふと、渡部と初めて会った時と、それからの日々を思い出していた
(なんでか全然分かんねえ、、、分かんねえけど、何故か初めて渡部を見た時、、、)
桐島は隣にいる渡部を見た
(絶対、、、深く関わっちゃいけねえ気がした、、、)
桐島はぐっと下唇を噛み締めた
(あの頭痛も酷くなったり、変な夢を見る回数も増えたような気がする、、、それと渡部が関係あんのかは知らねえけど、、、)
その事を思い出すと、軽くだが例の頭痛が起こった
と、同時に酔うような気持ち悪い感覚にもなった
「じゃあ、そろそろみんなのとこ行こっか?桐島君!」
渡部はイスから立ち上がりながら言った
「まだ噴水ショーの途中だけど、、、まあ仕方な、、、」
「座れよ」
「、、、え?」
桐島はイスに座ったまま、先ほどまで渡部が座っていたスペースをポンポンと叩いた
(でも、、、それでも、、、)
「、、、?」
(さっきまであんなにつまらなさそうにしてたのに、、、)
渡部は桐島の意図が分からなかった
(あ、分かった!ホントは噴水ショーが好きなんだ!)
渡部は一つの答えが閃いた
(関わっちゃいけねえ気がしても、、、頭痛がしても変な夢見るようになっても、、、、、、)
「え~?なんで~?早くみんなのとこ行かないとダメなんじゃないの?」
渡部はイジワルそうにニヤニヤしながら言ってみせた
「いいから、、、座れよ」
桐島は先ほどと同じ様子だった
「だからなんで~?」
渡部は桐島から「噴水ショー」というワードを引きだそうとしていた
(それでも俺が、、、渡部といる理由は、、、渡部といたい理由は、、、)
「好きだからだよ」
桐島はぶっきらぼうに呟く
(お、言った言った♪)
渡部は誘導した通りになり、楽しそうだった
「何が好きなの~?主語が足りないよ?」
渡部は何故か勝ち誇った表情で言った
「お前の事が」
「、、、え?」
渡部の表情は一気に変わった
(もうなんだかんだ理由つけてごまかさねえ 俺はそうやってずっと、自分の気持ちから逃げてただけだ)
「、、、俺は、、、渡部の事が好きだ」
「、、、、、っ!」
桐島の突然の言葉に、渡部は息を呑む事しか出来なかった




