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  作者: 外山
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二学期

9月1日


夏休みが終わった学生達は皆、約1ヶ月半ぶりにけだるそうに登校する


もちろん、それは桐島誠哉も同じだった

桐島は朝、ボーっとしながら登校していた



「ふぁ~あ、ねみぃなぁ~」

あくびしながらそう言ったのは桐島の親友、野波佳焦栄だった

桐島と野波佳は中学からの友達で、中学時代はかなり有名ないわゆる「不良」だった

「横ででかいあくびすんなよ 俺まで眠くなっちまうだろ」桐島はうっとうしそうに言った





2人はもう不良ではなかった ケンカもしないしタバコも吸わない 特に教師に反抗的な訳でもない


もともと桐島はそういう人間だった

ただケンカが強いだけで好き好んでやっていた訳ではない

金がかかるタバコは吸わないし興味がない教師に反抗はしない


変わったのは野波佳だった






学校に着いた2人は教室に入った


「焦栄~♪おはよ~!」

するとすぐに教室の中から1人の女子の声が聞こえてきた

「あ、麻癒!おはよう!」

野波佳は飛びっきりの笑顔でその女子のもとへ行く

「夏休みはさんでも焦栄は変わらないね!」

「そうか?2学期もよろしくな!」



野波佳が変わった原因は「彼女」である

高校に入学したその日に一目惚れし、それから猛アタックを続けた結果、付き合う事になったという



桐島は窓際の一番後ろの自分の席に座った

「誠哉君もおはよ!」

野波佳の彼女は元気よく挨拶した

無愛想な桐島は軽く頷く事しかしなかった


野波佳の彼女の名前は徒仲麻癒

とても活発で常に明るい元気な女の子だった

背は低く、顔つきも幼かった



「桐島君 おはよう」

次に挨拶してきたのは桐島と席が隣の渡部歩だった

メガネをかけており、綺麗な黒髪のロングヘアーだった

野波佳の彼女である徒仲麻癒とは中学からの親友同士だった

「ああ 久しぶりだな」

桐島は軽く頷きながら挨拶を返した

「また眠そうな顔して、、、」

渡部は呆れたようにため息をつく

「みんなそんな感じだろ しゃあねえよ 夏休み明けだし」

桐島はあくびをしながら言った


「、、、もぉ~」

渡部はまだ何かを言いたそうにしたが、無駄だと思ったのか、小さくため息をついた







その日の昼休み 桐島は昼食を買いに購買部に向かっていた


適当にパンを購入し、自販機で飲み物を買おうとしていた

「やっぱここのコーヒーだよな」

桐島はそう呟きながら小銭を投入しカップのコーヒーのボタンを押した


、、、、、


だが何も反応しなかった

「?」

桐島は取り出し口を確認した

コーヒーはない

「なんだよ、、、」

桐島は不満そうな声を出しながら投入金額の表示を見た

しかし何も書いていなかった

おつりも出ていない

「、、、おい!どうなってんだよ!返せよ!俺の110円を!」

桐島はドンドン自販機を叩いた

「クッソ~!イカレてんじゃねえか!」桐島は最後に強く自販機を蹴りつけた

「ちょっとあんた 何してんのよ」

すると後ろから誰かに声をかけられた

「ん?」

桐島は声がする方を振り返る

「なに自動販売機蹴ってるのよ!みんなが使うモノでしょ!?」

桐島が全く知らない女が注意してきた

「はぁ!?うるせえな!こいつが、、、」


「うるさい!?何がうるさいよ!悪いのはそっちのくせに言いがかりつけてんじゃないわよ!」

女は桐島の言葉を遮り、先ほどより勢いのある物言いだった

「、、、!」

桐島は言い返そうとしたが、少し周りの目が気になった

「、、、いいからどいてよ」

女も声を落とし、桐島を押しのけた

「、、、ちっ、クソ、、、」桐島は仕方なく110円を諦め、自販機の前を離れた


チャリン チャリン


女が金を入れる音が聞こえた

「、、、え?」

女は投入金額の表示を見て眉をひそめた

110円しか入れてないはずなのに220円入った事になっている

その事に桐島は気づいた

「あ!それ俺のだ!」

桐島は勢いよく振り返り、また自販機の前に戻ってきた

「え?あんたの?」

女は少し驚いたような言い方だった

「ああ 110円取られたからイラついてたんだよ」

桐島は女に確認を取りながらおつりのレバーを引いた

「あ、そうだったの、、、」

女は少し後ろめたそうな表情をみせた

「ま、だからって蹴っていい理由にはなんねえけど、、、悪かったな 怒鳴っちまって」

桐島は110円を取り、残りの110円を女に返す

「私も知らなかったから、、、ごめん、桐島」

女はお金を受け取りながら謝った

「ああ、、、ん?」

桐島は首を傾げた

「?」

「なんで俺の名前知ってんだよ?名前言ったっけ?」

「、、、はぁ!?ふざけてんでしょあんた!1学期でクラスメートの顔と名前ぐらい覚えなさいよ!」

「え?あ、ごめん、、、」

女のあまりの勢いに桐島は思わず謝った

「北脇紗菜よ!じゃあね!桐島誠哉君!」

北脇はそう言いつけるとどこかへ去って行った

「、、、そうか、同じクラスだったのか」(あれ?北脇は自販機でなんか買わなくてよかったのか?)

桐島はそんな事を考えながら自販機に小銭を投入した







桐島は1人、購買部で買ったパンを食堂で食べていた

「よう 前いいか?桐島」

すると見た事のない男が桐島の向かい側に座った 髪が長く前髪であまり目が見えなかった

「、、、誰だよ?」

桐島は怪しむような目で男を見た

「なっ、、、お前なぁ クラスメートの名前ぐらい覚えろよな」

男は呆れながらため息をついた

(こいつもクラスメートか、、、やべえな そういや焦栄と渡部と徒仲ぐらいしか覚えてねえや)

桐島はそう思いながらも特に深刻には考えなかった

「俺は外山ってんだ 席もお前の隣の隣だぞ?」

「ふ~ん、、、ま、いいけど で?なんか用か?」

桐島は興味なさそうに素っ気なく訊ねた

「ああ ちょっとこれ見てくれよ」外山は自前のパソコンをテーブルに起き、立ち上げた

「パソコンなんか学校に持ってきていいのかよ、、、」

「まあ堅い事言うなよ それよりお前さ さっき北脇紗菜と喋ってたろ?」

「北脇、、、?ああ、、、」

(さっきの女か)

桐島はもう一度名前を確認し、ちゃんと覚える事が出来た

「お前あいつと知り合いか?」

外山はパソコンをいじりながら桐島に訊ねた

「いや、別に知り合いじゃねえけど、、、」

「まあいい ほれ、これ見ろよ」

外山はパソコンの画面を見せた

そこにはいくつか北脇の写真があった

「え、、、?と、盗撮かよ、、、」

桐島は急に外山と喋るのが気持ち悪くなってきた

「まあ盗撮っちゃあ盗撮だけどよ こういう写真を利用して俺のブログの閲覧数を上げてんだよ」

「、、、?」

桐島は意味がよく分からなかった


「場合によっちゃ売ったりな ちろっと加工しただけでやたら売れるんだよ 北脇だけじゃねえけど、こういうかわいいやつが周りにいると助かるな!」


外山は楽しそうに話した

「よく分かんねえけど、、、それ犯罪じゃねえのか?」

「だから堅い事言うなって桐島くんよ~!もしお前が北脇と仲良いんならなんかしらの方法で協力してもらいたかったけど、知り合いですらねえんならしゃあねえな!」

外山は笑いながら食事を始めた

「ふ~ん、、、あ、今北脇だけじゃないっつったけどよ、他に誰がいるんだよ?」

桐島は興味本位で訊ねてみた

「他か?えっとな、、、」

外山はパソコンの画面を桐島に見せたまま顔ぶれを一覧表示した

「この学校なら、3年は浜薫 片岡綾 2年は瞬純 安川真奈美 1年は北脇紗菜だろ?他は、、、徒仲麻癒と渡部歩だな」


バキッ!


外山が言い終わった直後に桐島はパソコンのキーボードの部分を殴った

「あ~!?何すんだよ!?」

「うっせえ!やりすぎだバカ!」

2人が騒いでいると昼食を食べ終えた渡部が通りかかった

「あ、桐島君 何してるの?あと、え~っと、、、外山君?だっけ?」

渡部は自信なさげに言った

「ほら渡部は覚えてくれてる!それが当たり前だぞ!」

外山は桐島に説教するように言った

「知らねえよ!」

「それより渡部!聞いてくれよ!桐島が俺のパソコン壊しやがったんだ!」

「え!?それはダメじゃない!?」

「い、いやそれはだな、、、」

「あ~あ~全く!やっぱり桐島はこえ~よ!じゃあな渡部!桐島!」

外山はサッとパソコンを片付け、早足でその場を去った

「、、、なんなんだあいつは、、、」

桐島は少しイラついた様子でつぶやいた

「あっ、、、いや別にパソコンを壊した訳じゃなくて、、、いや壊したんだけど、、、」桐島は思い出したように渡部に言い訳した

「まあいいんじゃない?外山君あんまり怒ってなかったし、、、多分あれぐらいならすぐ直せるんだよ データもバックアップ?とかよく分かんないけど移しておけるらしいし」


「それはそれで困るんだけどな、、、」

桐島は頭をかきながら小さい声で呟いた

「え?」

「いやなんもねえよ、、、」


(はぁ~あ、、、二学期早々、変な奴に会っちまったな)


人と関わる事があまり得意ではない桐島はめんどうそうな表情でため息をついた










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