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  作者: 外山
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その不自然さ

「そうか、誠哉と歩、、、別れたのか、、、」

響子から話を聞いた恭丞はため息をつきながら呟いた


2人は居酒屋で酒を酌み交わしながら、桐島や渡部の件について話をしていた

呼び出したのは響子からである


「そうよ、、、おかしいでしょそんなの、、、」

響子はブツブツ文句を言いながらハイボールを飲んでいた 数杯飲んだ今はかなり酔っていた

「まあそれはあいつらが決める事だからな、、、」

「分かってるわよそんなの!分かってるけど、、、」

響子はジョッキをテーブルに叩きつけるように置いた

「でも、、、誠君と由美さんの事が原因なのは間違いないんだから、、、だから、、、」

「そりゃ分かってるよ、、、だから由美の家までわざわざ行ったんだ」

響子の言葉を聞き、恭丞は少し嬉しそうに微笑みながら手元のビールをぐいっと飲んだ

「、、、ふん、でも収穫なしだったんでしょ?」

「まあな、、、もう一度話が聞けたって事ぐらいだ」

恭丞の言葉に響子はわざとらしくため息をついた

「で?今日はなんだ?なんか話があって来たんだろ?誠哉と歩が別れたって話だけか?」

「、、、2つ、聞きたい事があってね」

響子はつまみを箸で軽くいじりながら、テーブルを見つめる

「なんだよ山田?」

「山田って呼ばれんの嫌いなんだけど まあいいわ」

響子は椅子を座り直し、背筋を伸ばして指を立てた

「まず一つめ、歩ちゃんにどこまで話したの?歩ちゃんはどこまで知ってるの?」

「、、、それはイコールでは話せねえな」

「はぁ?」

酔っている響子は恭丞の遠回しな言い方に反抗的な返事をした

「俺は歩には何も話してない ただ、写真は見せた」

「写真って、、、結婚式のよね?」

「そうだ 歩には写真を見せただけだが、、、俺と由美の話を盗み聞きしてたらしい」

「盗み聞き?なんの話をしてたのよ?」

「結婚式の後の話だ 由美と誠が歩道橋で抱き合ってたって時のな」

「っ!それ、聞かれてたの、、、!?」

響子は箸を置いて、少し前のめりになって訊ねた

「ああ、ただ聞かれたってのもドア一枚挟んでるからあんまり聞き取れてねえだろうし、話の意味もよく分かってなかったと思うぞ?」

「、、、でも、中途半端な事教えるのが一番危ないでしょ?」

「そりゃそうだ でも、歩がどこからどこまで盗み聞きしてて、どこまで理解出来てるかはよく分かんねえ」

恭丞はそう言いながら軽く椅子にもたれ、真剣な表情になった

「俺達にとっちゃもう15年以上、、、17年ぐらい昔の事だけどよ、、、あいつらにとっちゃ今なんだよ、、、だから昔の事ほじくり返してでも、本当の事を教えてやりてえ、、、なんで誠があんな事したのか、、、」

(、、、由美も、なんか隠してんのかもな、、、)

数日前、会いに行った由美の様子を思い出しながら恭丞を頭を悩ませた

「、、、それは私も同じ それに私だって美希の夫だった誠君が、浮気なんかしてなかったんだって、、、そう思いたいしね」

響子は頷きながら更に酒を飲み進める

「、、、で?もう一つの聞きたい事ってのは?」

恭丞は一瞬頬を緩めたが、改まって顔を上げ、響子に訊ねた

「二つめに聞きたいのは、、、あんた、本当はどこまで知ってんの?」

響子はテーブルに肘をつき、グイッと顔を寄せた

「、、、は?」

「由美さんと誠君が抱き合ってた理由、、、あんた、本当は心当たりあるんじゃないの?」

「、、、ねえよ ねえから困ってんだろ?」

恭丞は顔を近づける響子の両肩を持ち、グイッと押して席に戻した

「理由にまで心当たりはなくても、なんか無かった!?様子が変だったとか、普段はしないこんな事してたとか!」

「んな急に言われても思い出せねえよ、、、ま、誠哉に話した時にも言ったけど、強いて言うなら結婚式当日の誠はちょっと様子が変だったって事ぐらいだ」

と、恭丞はそこまで喋り終え、ある事が気にかかった

(待てよ、結婚式当日の待合室で、山田が由美に質問して、、、)

恭丞は当日のその日の出来事を鮮明に思い出そうと頭をひねった

「じゃあ当日だけじゃなくて、前日とか!なんか無いわけ!?」

響子は再び酔いが回ってきたようだ グイッと飲み、ジョッキを強くテーブルに置きながら恭丞を問い詰めた

「前日?」

(前日は一緒にいたよな、、、確か、、、たまに行くファミレスに、、、誠哉も一緒で、

、、)

響子の前日という言葉をきっかけに、恭丞は少しずつその日の出来事を思い出していた

「、、、なんかあるの?」

神妙な面持ちになった恭丞に、響子はおそるおそる訊ねた

「、、、いや、、、ちょっと待てよ、、、」

(ファミレスに行って、、、その帰り、、、帰り、、、?帰りに何か、、、)

恭丞は頭をかきむしりながら思い出そうとするが、なかなか当時の情景が浮かんでこなかった

「、、、っ、ダメだ 思い出せねえ」

恭丞は小さく舌打ちをし、大きくため息をついた

「、、、何か思い出せそうだったの?」

「ああ、結婚式の前日に何かが、、、あったような気がするんだがな、全く思い出せん」

響子からの問いに苦い表情で恭丞は答えた

「そう、、、由美さんの家に行っても何も分からなかったのよね?」

「そうだな、、、ん、、、?」

恭丞は再び顎に手を添え考え込み出した

「由美の家、、、?由美の家は、、、渡部、、、?」

恭丞はあり得ないその不自然さに気がついた 今まで気にならなかったのは、由美に会う事が無く、15年以上も久しぶりに会った事が原因だろう

「、、、はぁ?さっきから何言ってんの?神田由美さんが結婚して、渡部由美さんになったんでしょ?」

「いや、、、」

「、、、、、?」

考え込むばかりでろくに口に出さない恭丞を、響子は苛立ちながら見ていた






響子との話を終えた恭丞は1人、都会の街並みを眺めながら歩いていた

今こうして歩くこの道も、15年以上前から変わらない同じ道だった

「、、、、、」

(やっぱおかしい、、、よな、、、)

恭丞は歩道橋をゆっくりと歩いていた

「、、、ふぅ」

酒に酔い、火照った顔を初夏の夜風に当て、恭丞は歩道橋の手すりに肘をかけた

一方通行で五車線の大きい道路に走る車は、夜のこの時間帯に見ると光の塊にしか見えなかった

ふと道路の脇にタクシーが停まった 手を繋いだ二十代半ば辺りのカップルがイチャつきながら停めたタクシーの中へと入っていく

「、、、、、」

恭丞は視界に映るその映像に引っかかりの少ない既視感を覚えながら、手すりに身を預けるのを止め、先ほどからの考え事に興じながら再び歩き出した
















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