本能の衝動
「はぁ〜、、、疲れた」
家に帰ってきた桐島はそう呟きながらドカッと床に座り、扇風機をつけた
昨夜、桐島はこのアパートの大家である早乙女に呼び出され、晩酌に付き合わされていた 秋本と共に早乙女の部屋で朝まで働かされたのだ 更に朝になれば学校に行き、学校が終わればバイト、クタクタの状態で帰ってきたのだ
時刻は夜の9時 バイトから帰ってきたばかりでまだ食事も取っていないが、桐島はもう風呂に入ってさっさと寝ようと考えていた
「明日休みで良かった、、、そうだ 明日にでも歩のバイト先見に行ってみるかな ちょうど土曜だし」
桐島は扇風機に当たりながら冷蔵庫から取り出したお茶をゴクゴクと飲む
「ぷはぁ、、、、、ん?」
桐島はふと、テーブルの足の陰に落ちている紙くずに気づいた
(? なんだこれ、、、?)
桐島はそのくしゃくしゃの紙くずを手に取り、開いてみた
「、、、あっ」
そこには電話番号が書いてあった 警察官の後藤恭丞のモノである
『それ、俺の電話番号な なんかあったらいつでもかけてこいよ 110番より便利かもな』
「、、、、、」
桐島は恭丞と会ったその日の事を思い出した
(ま、いいや別に、、、俺には関係ないし、、、)
桐島はその紙をテーブルの上に置いた
「、、、、、」
改めて紙を見ると色々と考えてしまう 両親や孤児院の事、そして恭丞が最後に言い放った言葉の意味
『誠はお前を捨てたんじゃねえ、、、絶対、それは違うからな』
「、、、ちっ、いちいち気に障るおっさんだな、、、」
恭丞の顔や口調を思い出し、桐島はイラつきながら頭をかいた
「、、、、、?」
そこで桐島はある事に気づいた 今まで両親の知り合いである恭丞の存在自体や、自分を捨てた父親の人物像、初めて聞いた両親の名前などに気をとられていて頭が回っていなかったため、とても重要な事を考えていなかった
(俺の両親は、、、名古屋に住んでたのか、、、?てゆうか俺も名古屋生まれ、、、?)
桐島は更に恭丞の言葉を思い出す
(つか、、、このアパートに住んでたんだよな、、、両親も、、、俺も、、、?)
全くしっくりこなかったが、恭丞の言葉を信じるのだとしたら、桐島は赤子の時、このアパートに住んでいたことになる
(、、、待てよ、、、確かに、、、)
桐島は初めてこのアパートに来た時の早乙女の言葉を思い出す
(早乙女さんって孤児院のおばあちゃんと知り合いなんだよな、、、特に何も考えなかったけど、おばあちゃん、なんで名古屋に知り合いなんかいるんだ、、、?)
更に水野の家に行った時の事も自然と浮かんできた
(千佳のとこのおじいさんとも知り合い、、、つか千佳を引き取ったんだからそういう事だよな、、、って事は、、、)
桐島は手を顎に添え、真剣に考え出した
(おばあちゃんは元々名古屋の人なのか、、、?もしくは名古屋に住んでた時期がある、、、?)
桐島は一つの仮説を立て、更に色んな可能性を考えていた
プルルルルル プルルルルル
気がつけば桐島は電話をしていた
埼玉の鈴科孤児院にである 一度気になりだすともうその欲求を止める事は出来なかった 特にこの内容に関しては自分の出生に関してである 湧いてくるこの探究心は桐島にとっては本能に近かった
プルルル ガチャッ
「はいこちら鈴科、、、あ、誠哉君かい?」
電話に出たのは鈴科孤児院の受付員、草津談司だった
「元気にしてるかい?、、、え?お母さんかい?わかった ちょっと待ってね」
草津は孤児院おばあちゃんの事を昔からお母さんと読んでいた
「うん、頼む、、、」
桐島がそう言うと電話口からは保留音が流れ始めた
「もしもし?せいちゃんかい?」
電話を代わったおばあさんはいつもの口調で桐島に訊ねた
「はい、元気ですか?みんな」
「え?えぇ、元気だとも」
桐島の何気ない問いにおばあさんは穏やかに答えた
「そうですか、、、」
「、、、どうしたんだい?」
「いえ、、、あの、ちょっと訊きたい事があって、、、」
桐島は息を整え、勇気を出して訊ねた
「訊きたい事かい?」
「はい」
ゆったりとした口調のおばあさんに合わせ桐島もゆっくりと喋っていた
「あの、、、俺の、、、両親の事についてなんですけど、、、」
「、、、!」
おばあさんは驚いた表情で隣にいる草津を見た
「、、、、、」
(誠哉君、、、)
草津はおばあさんの表情から、なんとなく今の状況を理解した
「今まで、、、両親の話って殆ど聞いた事なかったですよね、、、っていうか俺が聞かなかったんですけど」
「うん、そうだねぇ、、、せいちゃんにはあまり、親の話はしなかったねぇ、、、」
少し早口になった桐島の言葉を頷きながらおばあさんは聞いていた
「俺の母親が、、、その、交通事故で亡くなったっていうのだけは聞いた覚えがあるんですけど、、、」
桐島の母親とは、おばあさんの娘である その為桐島は少し言いにくかった
「、、、、、」
おばあさんは噛み締めるように息をついた
「その、、、両親の名前も聞かなかったし、、、事故だってどういう事故だったのかとか知らないですし、、、」
「そうだねぇ、、、」
「あと、、、俺の両親は、どこに住んでたんですか、、、?」
桐島のこの問いにおばあさんは深く息をついた
「、、、せいちゃんが両親について聞いてきたら、、、全て話すつもりでいたんだよ、、、ずっとね」
「、、、そうなんですか、、、」
「順を追って一つずつ話して行くよ?私にも分からない事がたくさんあるんだけど、知っている事は全て話すからね?」
「、、、はい」
おばあさんが真剣な口調に変わったのを感じ、桐島も少し力が入った
「まず、せいちゃんのお母さんの名前は、美希 お父さんの名前は誠 せいちゃんの名前はお父さんの誠の字を取って名付けられたんだねぇ」
「、、、はい」
(美希、誠、、、あの後藤とかいう人が言ってたのと同じ名前だ、、、)
桐島は恭丞の言葉を思い出しながらすり合わせて行く
「せいちゃんのお父さんは真面目な人だったよ、、、ヌケているところもあったけれど誠実な人だった、、、美希を大切にしてくれる人だったねぇ」
おばあさんは当時を思い出すようにしみじみと話した
「結婚して、せいちゃんが生まれて、地道にお金を貯めて結婚式も挙げて、、、その間、たまに美希からかかってくる電話もとても幸せそうでねぇ、、、」
「、、、、、」
おばあさんの口調から当時の嬉しさが伝わり、桐島の表情もほころんでいた
「でもね、、、その結婚式の日の事、、、」
おばあさんの声は先ほどまでと比べて急に暗くなった
「結婚式を挙げたその日の夜、、、誠君が誰かと浮気しているところを、美希が見つけたらしくてねぇ、、、」
「え、、、?」
急な展開に桐島は焦りながら頭を整理する
「それがショックで美希はその場から駆け出して、、、その先で交通事故にあってね、、、」
「、、、、、」
あまりに結末に桐島は言葉を失った
「私は未だに信じられないんだけどね、、、せいちゃんのお父さんみたいな真面目な人が浮気なんてする訳ないって、、、ただ、、、」
おばあさんは言葉を止め、息を整えながら口を開いた
「、、、そのせいで美希が、、、事故にあってしまったのは事実だからねぇ、、、」
「、、、はい」
「私はこの程度の事しか知らないんだよ ごめんねせいちゃん」
「いえ、、、あの、最後に訊いていいですか、、、?」
「なんだい?」
「それは、、、どこで起こった事なんですか、、、?」
今回、そもそも桐島が聞きたかったのはこの事である
「場所は、、、名古屋だったねぇ、、、」
「、、、そうですか」
桐島は驚きよりも納得の方が大きかった 恭丞の話や早乙女、水野のおじいさんの事だけではない 全てをひっくるめて名古屋であるという事に関して何の疑問も抱かなかった
「だからせいちゃんが名古屋に引っ越すって言った時には驚いたよ、、、運命的なモノを感じたよ」
「、、、、、」
「縁っていうのは、こういうものなのかもしれないねぇ、、、」
翌日 夏本番はこれからといえど力を増した太陽が照りつけていた
湿気もありベタつく気候の中、桐島は名古屋駅の前に立っていた
「、、、、、ちっ、遅えなクソ」
桐島は口悪くそう言い放つと、服の袖で汗を拭いた
「よお誠哉」
すると柱の陰から急にある人物が現れた 後藤恭丞である
「遅えよ クソあちぃのに」
「そう言うな わざわざ来てやったんだぞ?お前が呼ぶから」
前日、おばあさんとの電話を終えた後、桐島は恭丞に電話をして会う約束をしたのだ
「ちっ、、、世間話はいいから両親の話してくれよ」
「まあ待てよ その前にお前に会わしたいヤツがいるんだ」
恭丞はそう言いながら歩き出した
「はぁ?ちょっと待てよ、、、」
「お前の両親の知り合いだ 無関係じゃねえよ」
「、、、ちっ、しゃあねえな」
「つか敬語を使えそろそろ、、、」
恭丞と桐島の2人は大通りを歩いていた
「おい、、、まだかよ あんまりあんたと歩きたくねえんだけど、、、」
「口悪いなぁお前、、、美希ちゃん似だな」
「は?」
恭丞の軽口に桐島はイラっときた
「冗談だよ 美希ちゃんは優しい子だったからな」
「てめぇ、、、」
「お、ここだ」
恭丞は足を止め指を差した あと一歩でキレそうだったが、恭丞が止まった事で桐島の気も冷めた
「、、、、、」
ふと桐島は恭丞が指す方を見た
都会の真ん中、ビルが立ち並ぶ大きい道路が走る一角にある花屋 恭丞は指を差した後、その花屋の前まで歩いた
「花屋、、、?」
桐島はなんとなく引っかかりながらも恭丞の後をついて行った
「おーい、すいませーん」
恭丞は店の外から中へ呼びかけた
「はーい、いらっしゃい、、、」
店の中から出てきた女は恭丞を見て言葉を止めた 見た目は30歳半ばぐらいに見える女だった ロングTシャツの腕をまくり、ショートカットの髪型を見るとなんとなくこの女の性格がうかがえた
「よお、山田」
「後藤、、、あんたなにしに来たのよ」
女は急に不機嫌そうになり、恭丞を睨みつける
「帰ってくれない?あんた見てたら気分悪くなるのよね」
どうやらこの女は相当恭丞の事を嫌っているようだ
「、、、こいつを見てもか?」
「えっ、はっ!?」
恭丞は桐島の手を引き、背中をグッと押して女の前につきだした
桐島は急に女の前に立たされ動揺した
「、、、、、?」
女は桐島の全身をサッと見る 桐島は緊張気味に居心地悪く立っていた
「この子が何?あんたの隠し子?」
女はため息混じりに恭丞に言った
「おい、自己紹介くらいしろよ」
恭丞は桐島の背中を軽く叩いた
(え、、、な、なんだよ、緊張するなぁ、、、)
人見知りな桐島な恥ずかしそうに頭をかいた
「えっと、、、こ、こんにちは、、、桐島、誠哉です、、、」
「、、、えっ、、、?」
女は目を見開き、明らかに先ほどまでの表情から変わった
「きりしま、、、せいや、、、」
女は自分に言い聞かすように繰り返した
「、、、後藤、どういうつもりよ」
女は低い声でそう言いながら再び恭丞を睨んだ
「こんな子供に意味分かんない芸を仕込ませてまで私に嫌がらせしたい訳?生け好かないヤツだとは思ってたけどここまで品性がひん曲がってたとはね!」
「は、はぁ?ちょ、ちょっと待てよ、、、」
いきなり怒鳴り出す女に恭丞は慌てて落ち着かせようとした
「どんな嫌がらせしてもいいけどね、美希の事はやめなさいよ!警察だかなんだか知らないけど、次やったら殺すからね」
「待て!聞け!俺の話を!」
取り乱す女を恭丞を強い口調で窘めながら両肩を押さえた
「っっ!」
「こいつは誠哉だ 本当に 俺が確認した よく見てみろよ?誠に似てんだろ?」
「、、、、、っ!」
女は恭丞の手を振り払いながら再び桐島の方を見た
「、、、ホントに誠哉君?」
女は改めて桐島に確認する
「、、、はい、桐島誠哉です、、、」
じっと目を見られ、桐島は照れながら顔をそらした
「、、、、、ホントは、、、分かってたけど」
「えっ?」
女はボソッと呟くと、そのまま桐島を抱きしめた
「えっ!?えっ、、、あの、、、」
「美希の、、、子供なのね、、、」
女は桐島を強く抱きしめながら優しく呟いた
「、、、、、」
桐島はその言葉に何も返せなかった
「、、、ごめんなさいね?急に、、、」
女はゆっくり桐島を離し、小さい声で謝った
「いえ、、、」
桐島は小さく首を振った
「響子さーん、あの、ラベルとポットの数が合わないんですけど、、、えっ!?」
すると女の名前を呼びながら店の奥から女の子が出て来た その子は3人を見るやいなや驚いた顔をする
「えっ、、、歩!?」
「せ、誠哉君、、、」
店の奥にいたのは渡部だった どうやら渡部がバイトしている花屋というのはここの事だったらしい
「えっ、、、知り合いなの?」
響子は桐島と渡部を交互に見る
「あっ、、、はい」
「まあ、、、、、」
桐島と渡部はたどたどしく響子の質問に答えた
「付き合ってんだろどうせ?」
恭丞はめんどくさそうにため息混じりな言った
「、、、、、はい」
桐島は気恥ずかしそうに頷く
「ははっ!初めて俺に敬語使ったなぁお前!」
恭丞は楽しそうに笑いながら桐島の頭を荒っぽく撫でた
「それにしても後藤 どういう事?なんで美希と誠君の、、、、、」
響子はそこまで言って言葉を止めた 渡部の目がなんとなく気になったのである
「歩ちゃん、、、ちょっとだけお店任していい?」
「えっ?はっ、はい」
渡部は不安で仕方なかったが、小声で急ぎながら頼む響子を見ると頷くしかなかった
「ごめんね?すぐに戻ってくるから」
響子はエプロンのような制服を脱ぎ、店の奥のテーブルに置いてすぐに店の前まで出た
「じゃあ、、、場所変えましょう」
「そうだな、、、」
響子の言葉に恭丞は頷いた
「、、、、、」
桐島は店の中を覗き込んだ 奥にいる渡部が店先の方を見ている
「じゃ、またな?歩」
「うん 誠哉君」
渡部が頷くと桐島は恭丞と響子と共にどこかへ歩いて行った
(、、、知り合いだったのかな?響子さんと誠哉君、、、?)
渡部は3人の背中を見送りながらそんな事を考えていた
「んじゃあここにすっかぁ」
「、、、んなっ!?」
恭丞の言葉に桐島は歪んだ声を上げる
選んだのは恭丞の元行きつけの喫茶店だ
大通りから一本外れた落ち着いた場所にその喫茶店はあった
「なんだよその声は 昔よく行ってたんだよ 結構久しぶりだな」
「ここ、、、」
桐島が喋ろうとする前に恭丞が出入り口を開けて入って行った 続いて響子も入っていく
「、、、はぁ」
カランカラーン
「いらっしゃい、、、おお!お前か!」
マスターは恭丞の顔を見てパッと明るい表情になった
「久しぶりだなマスター まだやってたんだな」
「もう引退するさ それより、綺麗な彼女連れて」
マスターはニヤッと笑いながら響子を指した
「え?彼女じゃねえよこんなん」
「誰がこんなんよ!」
響子は恭丞の脇腹を殴った
「ぐふっ!、、、昔、常連の時によく一緒に来てた、、、こいつも、、、」
「痛いんなら無理して喋んなくても、、、ん?」
マスターは最後に入ってきた桐島に気づいた
「あっ、桐島君?」
「おはようございます」
桐島は軽く頭を下げて挨拶した
「えっ!?な、なんで知ってんだよ!?」
恭丞はマスターと桐島、どっちに聞くわけでもなく訊ねた
「ウチで働いてもらってるんだよ バイトとして 何?恭丞と桐島君は知り合いかい?」
マスターはさらっと説明する
「バ、バイトぉ?なんで今更そんなもん、、、」
「もういいでしょ マスター、ちょっとテーブル借りますね」
桐島はマスターにだけ軽く会釈すると一番奥のテーブル席に座った
コーヒーや紅茶、それぞれの飲み物がテーブルに並んだ
「誠哉君、、、こんなに大きくなってたなんてね、、、ま、当たり前かぁ」
響子は紅茶をスプーンで混ぜながらしみじみと呟いた
「響子さんも俺を知ってるんですよね、、、?」
「うん って言っても、赤ちゃんの頃だけなんだけどね なんか、、、まだ誠哉君は赤ちゃんだって思ってたから、変な感じ そんな訳無いのにね」
響子は桐島の顔を見ながら優しく笑った
「俺は、、、何にも覚えてないんです 響子さんの事も後藤さんの事も、、、」
「当たり前よそんなの だって、、、最後に会った時だってまだ1歳とかじゃなかったっけ?1歳半ぐらい?」
申し訳なさそうに言う桐島に対し響子は笑顔で答えた
「そうだな、、、2歳にはなってなかったな」
恭丞は響子の説明に補足しながら頷く
「ねえねえ、いくつになったの?」
響子は楽しそうに桐島に質問する
「えっと、、、今は18です 高校三年なので、、、」
「えぇ〜?もう18かぁ、、、すごいなぁ、、、」
「いえ、、、」
桐島は目の前のウーロン茶を飲んだ
「あの、、、今日は、両親の事を知りたくて来ました」
「、、、え?」
「俺の母親が死んだ日に、、、結婚式の日に、何があったのか教えて欲しいんです」
桐島の言葉に響子は驚いた表情をした
「それだけじゃなくて、、、両親がどんな人だったのか、、、俺は全く知らないので、教えて欲しいんです」
「、、、、、」
響子は驚いた表情を抑え、慌てて恭丞を見た
「、、、俺は、知ってることは包み隠さず話すつもりだ」
恭丞はゆっくりと頷きながら呟いた
「、、、本気で言ってるの、、、?」
響子は恭丞を睨みつけながら言った
「ああ」
「、、、誠哉君も本気?」
響子は次に桐島に訊ねた
「、、、はい、18年間、考えてきました」
「、、、じゃあ、私ばっかり隠してても仕方ないか」
響子はため息をつき、紅茶を飲み干した
「ありがとうございます」
桐島はそう言うと、物憂げな表情でウーロン茶の水面に映る自分と目を合わせていた
「、、、ふふっ、今、お茶に映る自分見てたでしょ?」
響子は小さく笑いながら指摘した
「えっ?あ、はい、、、」
「美希と同じね、、、美希もクセで、よくそうやって飲み物に映る自分を見てたの」
「、、、そうなんですか、、、」
桐島はこの感情をどう動かしていいのか、よく分からなかった
「後藤 誠哉君に、、、全部、包み隠さず話すのよね?」
「ああ、そのつもりだ」
「じゃあ、、、私もそうするわ」
2人は互いに確認しあい、息を合わせた
「、、、、、」
桐島は緊張で固唾を飲んだ 物心がついた時から目をそらしてきた事実を、ついに知る時がやってきたのだ
あれは、遡ること17年前