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  作者: 外山
182/216

3人

季節は夏

6月に入りだんだんと温度と湿度が上がってきたある日の平日


バイトが終わり家に帰ってきた桐島は疲れていた

いつもは帰ってくるとまず食事の準備や風呂の用意をするが、今日はそのまま座り込んでしまった

「あっち〜なぁ、、、6月ってこんな暑かったっけ、、、」

桐島はテーブルに置いてあるペットボトルに入ったお茶をそのままラッパ飲みする

「んっ、、、ぷはぁ、ぬるっ、、、」

桐島は不満そうに一言呟くと、うちわを仰ぎながら壁にもたれた

「これからはバイトの方にももっと頭使っていかねえとダメだし、、、体力つけねえとなぁ、、、」

桐島はため息混じり呟きながらタオルで汗を拭いた

(そういや歩、バイト始めてそろそろ一週間だよな、、、明日の土曜日にでもちょっと覗きに行ってみるかな)


♩〜♩


すると桐島の携帯の着信音が鳴った

桐島はうちわで仰ぎながらパカッと携帯を開いた

「ん、、、?」

画面には【野波佳焦栄】と出ていた

「、、、なんだ?珍しいな、、、」

桐島は首を傾げながら電話に出た

「はい?」

「おー誠哉 久しぶりだなー」

野波佳のいつもの気の抜けた声色を聞くと、桐島も少し力が抜けた

「まあ、、、一ヶ月ぶりぐらいか?ゴールデンウィークからだしな」

「おう、そんでよー、近所におもしれえモン出来たんだよ」

「? おもしれえモン?」

「おう」

桐島が聞き返すと野波佳は楽しそうに頷いた

「ほら、よくあるだろ?全部食べ切ったら賞金一万円みてえなヤツ」

「ああ、中学の時一回やった事あったっけな?」

桐島は記憶を遡らせて呟く

「おう、それ一緒にやらねえ?2人で挑戦求む!とかって書いてあっからさ」

「は?その店どこだよ?」

「だから近所だよ 埼玉」

「行く訳ねえだろ!なんで大食いしに埼玉まで行かなきゃなんねえんだよ!?」

野波佳の無茶な提案に桐島は強い口調で言い返した

「だいたい、他に誰かいんだろ?外山とか」

「あいつ絶対断るだろ〜」

「じゃあ九頭は?あいつよく食いそうだぞ?イメージだけど」

「バイトだってよ バイク屋でバイトしてるらしくてな」

「う〜ん、、、」

桐島は首を傾げて唸り声を上げた

「つかいつ行くつもりなんだよ?」

「明日の昼かな」

「明日?急だな、、、」

「なあいいだろー?どうせ暇じゃねえの?お前」

「うるせえなぁ、、、」

野波佳の言い方になんとなくカチンときた桐島はため息をつく

(、、、つか明日は歩のバイト先見に行こうと思ってたしな、、、)

桐島は断る理由を見つけ、咳払いをした

「悪りぃけど明日は、、、」

「はぁ〜あ、ツレなくなっちまったなー、誠哉は」

野波佳はわざとらしくため息をついた

「え?」

「中学ん時は多少の無茶もなんだかんだ飲んでくれてたのによぉ〜、、、大人んなっちまったんだなぁ、悪魔も、、、」

野波佳は中学時代の桐島の異名を使い、桐島を揺さぶりにかかった

「う、、、」

大人、というワードを使われると桐島の体に拒否反応が出る

「楽しかったなぁ〜、あん時はよぉ、行き当たりばったりのその日暮らしの出たとこ勝負って感じで、、、なんつーか、燃えてたよなぁ、、、」

「、、、、、」

「ま、諸行無常だよなぁ、悲しくも儚い、だから尊い、寂しいけどなぁ」

「、、、、、」

「今のお前を、中学ん時のお前はどう思うだろうなぁ?大人になったお前を見たら、やっぱ喜ぶのかなぁ?」

「、、、、、」











翌日


桐島は埼玉にいた


「よう誠哉!久々の埼玉だな!おかえり!」

「、、、おう」

地元の駅で元気よく野波佳に迎えられた桐島は力なく返事をした

「たまには帰ってこいよー?鈴科も会いたいだろうからよ」

「、、、おう」

桐島は野波佳の背中を見ながら不満そうに頷いた

(ったく、、、なんであんなに言われなきゃなんねえんだよ、、、)

昨日、野波佳の言葉の羅列に耐えきれなくなった桐島は埼玉に来る事を承諾してしまったのだ

(大体、賞金一万円を2人で割ったら五千円、、、新幹線代考えたら余裕で赤字だっつーの)

桐島は心の中で悪態をつきながら野波佳の後ろを歩いていた

「、、、んで?どこなんだよ?こっから遠いのか?」

「いや、まあまあだな 遠くはねえけど近くもねえ」

「、、、ふ〜ん、、、」

桐島は生返事しながらなんとなく周りの景色を見ていた








「着いたぞ誠哉」

「、、、いや、ここって、、、」

駅から20分ほど歩き、2人は目的地に着いた


その建物は全体的に茶色く、のれんがボロボロでとにかく汚い店構えだった

のれんやその周りに書いてある文字から、中華系の料理屋である事はよく分かった

この店は中学時代、桐島、野波佳、菅井の3人でよく来ていたラーメン屋である

訳あって桐島、野波佳、菅井の3人は、このラーメン屋では[3杯分=1杯分]の料金しか払わなくてよくなったので、行きつけのラーメン屋となっていた


「久しぶりだろ?」

「まあ、、、」

野波佳の問いかけに桐島は軽く返事をしながら店の前の看板を見た

手書きな為、分かりにくいが確かに野波佳の言うとおり、食べ切れば賞金一万円という旨の内容が書かれている

「、、、、、」

このラーメン屋の佇まいを見ると、桐島の脳裏に中学時代の思い出が映し出されてきた

あの頃からの道は今日まで一本で繋がっているはずだが、今、改めて思い出すとどこか隔てられているような妙な感覚だった

浮かぶ映像はすべてセピア色に染められ、映画を観ているかのようだった




「いらっしゃい、、、うおー?」

ラーメン屋の店主は桐島と野波佳を見て驚嘆した

「よーおっさん 誠哉呼んできたぜ?」

野波佳は軽く手を上げながら挨拶した

「久しぶりじゃねえか誠哉」

店主はおしぼりで手を拭きながら桐島を見た

桐島がここに来るのは中学以来だった

「まだやってたのかよ?とっくに潰れてるモンだと思ってた」

桐島は少し昔を思い出しながら当時のように毒を吐いた

「うるせー 相変わらず生意気な野郎だな」

店主はそう言いながらも久々の桐島との会話に笑顔で応えていた

中はカウンター席がメインで、テーブル席が2つ、所狭しと並んでいた

出入り口のすぐ横には古いマンガが置いてある

桐島と野波佳はカウンター席についた

奥の端のカウンターには常連らしきおっさんが新聞を読んでいた

「焦栄はちょくちょく来るんだが、お前は全く来ねえなぁ ったく、薄情な野郎だ」

店主はわざとらしくため息をつきながら桐島に言った

「うるっせえなぁ、色々あんだよ こっちにだって、、、」

桐島は歯切れ悪くそう言うと、手元のお冷をグイッと飲んだ

中学3年の頃、南が病気で亡くなり、菅井と絶縁状態になってから桐島は一度もここに来る事は無かったのだ

「緋斬の野郎も、、、結局、最期まで来やがらなかった、、、」

店主は小さく舌打ちをしながら残念そうに言った

「ふ〜ん、、、」

「、、、、、」

野波佳と桐島はゆっくり頷きながら目線を下げた

「ところで今日はどうしたわざわざ?誠哉は今、名古屋に住んでんだろ?」

店主は空気を変えようと少し明るい口調で言った

「あ、そうそう、今日は、、、」

「おっちゃーん!今日こそ一万円貰うぞー!」

野波佳の言葉を遮るように大きな声を出したのは、のれんをくぐってやってきた中学生だった

「お前は声がデカすぎるんだよ 迷惑だろ」

「もうやめようぜ〜、絶対食えねえって」

続いて2人、中学生が入ってきた

「いらっしゃい 今日もやるか?」

「おう!昨日の晩から何も食わずにきた 準備万端だ!」

男子中学生3人組はカウンター席に並んで座り、例の賞金一万円のメニューを注文した

「お前もう先週の事忘れたのかよ?帰りにラーメン吐き散らしただろ?」

はしゃいでいる中学生を落ち着いた中学生が呆れたような目で言った

「大丈夫!先週五千円取られてんだ 絶対取り返す!」

「今日食い切ればチャラだからな」

食べる係りであろう2人は腕をまくってカウンターに肘をついた


「お、あいつら食うみてえだし、ちょっと様子見てみるか?」

野波佳は中学生達を指しながら桐島を見た

「、、、ああ、、、」

桐島は少しボーッとして中学生3人を見ながら返事をした

「、、、?」

野波佳は桐島の目線に合わせて中学生達を見た

「、、、っ、、、!」

野波佳はその3人を見るとふと、自分が中学時代に戻ったかのような錯覚を起こした

その3人の姿は、昔の桐島、野波佳、菅井の姿とぴったり当てはまった

「、、、懐かしいな」

桐島は肘をつき、頬杖をつきながら呟いた

「、、、ああ」

野波佳は安心したような表情で桐島を見ながら頷いた


「なーおっちゃん!今日も聞かせてくれよ!俺らの先輩の話!」

中学生の1人が調理中の店主に声をかける

「お?今日も聞くか?」

店主はニヤリと笑いながら聞き返した

「また聞かしてくれんの?伝説!」

「一回で教えてくれりゃいいのに!」

他の2人も身を乗り出して店主に言った

「へっ、〜と?どこまで話したっけな?」

店主は天井を見つめながら言った

「ほら、あれだよ!野波佳が騙されそうになってるとこまで!」

中学生はじれったそうに店主に詰め寄った

「、、、ん?」

野波佳はハッと顔を上げた

「おう、そうだったなー」

店主は頷きながら咳払いした

「、、、、、?」

桐島と野波佳は顔を見合わせた

「なぁーなぁー!そっからどうなるんだよ!?野波佳、連れていかれんの!?」

「まあまあ落ち着けお前ら」

店主は中学生達を宥めながら息をついた

「せっかくだし今日は、、、本人から聞くか?」

「え?」

店主の言葉の意味が分からず、中学生達は首を傾げる

店主は黙って桐島達を指差し、中学生はその指を追いかけて桐島と野波佳を見た

「、、、うわっ!き、、、桐島!、、、さん!?」

中学生は思わず席を立ち、慌てて敬称をつけた

「野波佳、、、さん!?」

「え!?な、なんで、、、」

中学生3人は全員立ち上がり、1人はゴソゴソとカバンをいじりだした

「ウチの常連だって何回も言ってんだろ?今日は久しぶりに来やがったんだ」

店主は得意げな表情で言った どうやら店主はこの中学生3人に何度も桐島達の話をしていたらしい

「おいおっさん、どうなってんだよ?」

桐島はチラチラ中学生達を見ながら店主に訊ねる

「おう、何ヶ月か前にあいつらがウチに来た時にな、お前らの話をしてたんだよ」

「はあ?なんで?別にあいつら知り合いじゃねえぞ?」

店主の言葉の意味が分からず野波佳は更に質問をする

「お前らが中学ん時、ケンカばっかしてそういう不良みてえな奴らの間で有名になってたろ?お前らが通ってた冥名めいみょう中学の中じゃ伝説が引き継がれてんだと」

「伝説って、、、」

桐島はあまりしっくりこず、頭をかいた

「あ、あ!やっぱそうだ、、、」

カバンを探っていた中学生は写真を手に持ちながら頷いていた

「あ、あの、これ!桐島さんですよね!」

中学生の1人が歩み寄り、写真を桐島の元に持ってくる

「お、おいやめとけって!失礼だろ!」

「そうだよ!す、すいません桐島さん、、、」

2人の中学生は写真を持つ中学生の手を引いて止めた

「?いや、別にいいけど、、、なに?」

桐島は首を傾げながら写真を受け取った

その写真は、不良に囲まれた桐島が掴み合い、殴り合いをしているところだった

「え、、、は!?」

桐島はガガっと一気に頭を回したが驚きの言葉しか出なかった

「はははっ!なんだよこれ!?」

野波佳は楽しそうに笑いながらその写真を見る

「あの、これも、、、」

「ん?」

更に中学生から差し出された写真を野波佳は見た

その写真は、桐島と同じく野波佳が凶悪な表情で暴れている写真だった 髪型も今とは違い、かき上げていた

「ぅっっ、、、!」

「お前のもあんじゃねえか、、、なあ!なんだよこれ!」

桐島は写真を出してきた中学生に訊ねる

「なんか、こういう写真が出回ってて、、、それと一緒に桐島さん達の無敗伝説も流れてるんです」

「、、、誰が撮ったんだよこんなの、、、」

桐島は少し苦い表情を浮かべながらも懐かしさもこみ上げてきた

「あ、あの!店主から聞いた話の続き、聞かせてください!」

「?どんな話だよ」

野波佳は店主の方を見ながら確認する

「お前が女の子使われて騙された話だよ」

「なっ、、、んな話すんじゃねえよ!恥ずかしい!」

野波佳は顔を赤くしながら強く店主に言い返す

「ハハッ!いいじゃねえか 誠哉と緋斬に助けてもらったんだろ?」

店主は笑いながら野波佳の言葉を流した

「ぐっ、、、」

「もうあの時のこいつはそれはそれは愚かだったな」

悔しそうな表情をする野波佳の横で桐島は頷きながら言った

「うるせえな!お前だって千葉の奴らと揉めた時、しょーもねー演技に騙されて、、、」

「黙れ!」

桐島は間髪入れずに野波佳の口を押さえにかかる

「あ、千葉の話はおっちゃんから聞きましたよ」

「んあぁ!?」

中学生の言葉に、桐島は照れからかなんなのか、中学生達と店主を睨む

「おいお前ら ちっとは静かにしろ」

店主は強い口調で言いながらも騒がしい空気を嬉しそうに感じていた

「、、、おいおっさん」

桐島は息をつき、落ち着いた口調で言った

「ん?」

「俺らにも作ってくれ 食べ切り賞金一万円」

桐島は俯きながら低い声で言い放った

「え、桐島さん達もこれ食べに来たんですか!?」

「おう、、、そんな過去の話なんかどうでもいいんだよ」

桐島は小刻みに頷きながら語るように言った

「おっさん、これ、何分以内に食べたら一万円もらえんだよ?」

「30分以内だ」

店主は近くにある張り紙を指差しながら言った

「その半分の15分で食ってやるよ 現行の伝説見せてやろうぜ!焦栄!」

「、、、お、おう」

よく分からないスイッチが入った桐島に野波佳は合わせて返事をした











数時間後


「やっぱすごかったなー!桐島さんって!」

「野波佳さんもな!会った事みんなに自慢しようぜ!」

「信じねえかもなー!」


ラーメン屋を出た中学生達は興奮気味に語り合いながら夕焼けの道を歩いていった



「にしても、、、よく食い切ったなぁ お前ら」

店主は楽しそうに笑いながら、カウンター席でうなだれている桐島と野波佳に言った

「おう、、、余裕だ、、、」

食べ終えてから一時間以上経ち、やっと落ち着いた桐島は手元の水を飲んだ

「13分だろ、、、?ったく、吐きそうになったぜ、、、」

野波佳は深呼吸しながら腹を押さえた

「にしても、、、よかったのか?一万円、あいつらに渡しちまって」

店主は中学生達が座っていた席を見ながら改めて訊ねた

「いいんだよ 俺ら3人から、後輩へのプレゼントだ」

桐島はコップをカウンター席に置き、座り直した

「、、、だな」

野波佳は桐島を見ながら静かに笑った

「それより、、、まさかお前がそんな進路を考えてるなんてなぁ〜」

野波佳は少し冷やかすような口調で言った

「うるせえな、、、別にいいだろうが」

桐島は恥ずかしそうに顔を背けながら言った

「いいじゃねえか 誠哉がそんな夢を持つとは驚いたが、俺は応援する」

「夢って、、、そんな大したもんじゃねえよおっさん ただ、、、」

桐島は去年の冬休み、埼玉に帰ってきた時の事を思い出していた

「名古屋の友達が、みんなある程度目標決まってて、、、テニスしながらカメラの勉強したいって言ってる関西弁の奴とか、、、東京の卆壬大学を受験したいって言ってる幼馴染とか、まあ色々なんだけど、、、」

桐島は秋本と水野を頭に浮かべながら言った

「俺もちゃんとしねえとなって、、、で、タイミングも合ったし、今は勉強中だな」

「そうか、、、いいじゃねえか 楽しみだ」

店主はガハハと明るく笑った

「それに、、、緋斬と南との約束だからよ、、、」

「、、、、、」

野波佳は驚いた表情で桐島を見た 菅井と南の名前が、たやすく桐島の口から出てくるとは思わなかったからだ

「じゃあそろそろ帰るわおっさん」

桐島は立ち上がり、コップを店主に手渡した

「そうか?またいつでも来いよ」

「なんだよおっさん 淋しいのか?」

桐島はイタズラっぽく小さく笑った やはり中学時代の人間に会うと桐島の気分も自然とその頃に戻る 孤児院の受付の草津と話す時に子供っぽい口調になってしまうのと同じだった

「まあな もう年だからなぁ 焦栄以外は遠い所に行っちまったし」

「ははっ、俺は死んでねえよ」

桐島は店主に背中を向け、出口に向かって歩き出した

「俺はまたすぐ来てやるよ」

「うるせえ 上から言いやがって」

生意気な野波佳の口調にも、店主は笑いながら答えた

「お前らが2人で二杯頼んだら、一杯分の料金にしてやるよ 前みたいにな」

店主は出て行く2人の背中に向かって言った

「、、、いや、それはいいよ」

桐島はガラガラと出口の戸を開け、のれんをかき分けた

「ん?そうか?」

「それは、、、3人一緒に来た時だけだろ?」

桐島は軽く笑いながらそう言うと、店を出た

「じゃあまたなおっさん」

「また来るからよー」

桐島と野波佳は挨拶しながらガラガラと引き戸を閉めた

「、、、ったく カッコばっかりつけるようになりやがって、、、あと、おっさんって言うなっつってんだろ」

店主は成長した桐島と野波佳を見て、嬉しくも少し寂しい気分にもなっていた






「ところでよ、、、もうお前が名古屋に行ってから長いよな?」

野波佳は帰り道を歩きながら何気無く桐島に話しかけた

「ん?そうだな 引っ越したのが去年の8月で今が6月だから、、、もう10ヶ月か」

「だよな、、、んでさ、もう行ったのかよ?」

「?どこに?」

野波佳の曖昧な問いに桐島は首を傾げた

「南んとこだよ あと、、、緋斬んとこもな」

「、、、ああ、まだだよ、、、気が向いたら行くっつったろ?引っ越す時に」

「いつ気が向くんだよ?」

少し前を歩く桐島を追うようにして野波佳は言った

「もう決めてあるから、、、そん時に行くよ」

「はぁ?いつだよそれ」

「まあいいだろ?何十年も先じゃねえからよ」

「気になるだろ いつ頃なんだよ?」

「うるせえなぁ お前が女に騙された話、徒仲にするぞ」

「なっ、、、や、やめろよ!昔の話をよぉ!」

桐島と野波佳は中学生の頃から数年ぶりに、夕焼けが眩しい帰り道をふざけながら歩いていった











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