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  作者: 外山
178/216

花屋の店主と警察官

桐島の誕生日から数日経ったある日の夕方

渡部は下校中、考え事をしながら街を歩いていた

(アルバイト、、、どうしようかな)

渡部は目線を足元に移し、地面を見ながら眉間にシワを寄せた

(やっぱりコンビニとかかな、、、それかファミリーレストラン?スーパー?)

渡部はバイトの定番と言えるようなモノを順に思い浮かべていく

(どういうのがいいんだろ、、、やった事ないからなぁ、アルバイト、、、)

渡部は目線を下げたまま小さくため息をついた

(凛に相談しよっかな、、、あ、そういえば野波佳君ってアルバイトしてたような、、、バイク持ってたし)

そんな事を考えているとふと、左側から気配を感じた

右側は車道、左側はこの大通りに数々の店が並び連なっていた

今まで渡部は下を向いて歩いていたが、妙な気配につられ左側にある店を見た
















ほぼ同時刻


桐島はバイト先である喫茶店で働いていた

「はいカレーです!こちらサラダになります!」

桐島は早口でお客に商品を提供した

「アイスコーヒーです ごゆっくり」

マスターもちゃんと働く一番忙しい時間帯だった

「マスター!ナポリタンお願いしていいですか!?」

「あいよ じゃあ桐島君、このミックスジュースをあのお客さんに、んでサンドウィッチをあのお客さんね」

桐島とマスターは短い言葉でやり取りしながら喫茶店を回していた

「はい!」

(なんかお客さん多いな、今日、、、)

桐島はそんな事を考えながら商品を両手にテーブルに向かった

(歩、、、そろそろバイト見つかったかな、、、)

「お待たせしました!ミックスジュースです」
















ふと気になり、顔を上げた左側には花屋があった

都会の真ん中、ビルが立ち並ぶ大きい道路が走る一角に堂々とあるこの花屋は、渡部の目にはとても綺麗に映った

そしてなによりこの空気に、言い知れぬ感情を抱いていた

「、、、キレイ、、、」

花の名前などは詳しくない渡部だが、この店の雰囲気を味わうと無意識の内に呟いていた

「いらっしゃい」

すると中から店主らしき女性が声をかけてきた

「何かお探しですか?」

店主の見た目は30歳半ばぐらいに見える ロングTシャツをめくり、ショートカットの髪型を見るとなんとなくこの店主の性格がうかがえた

「あ、いえ、、、」

「、、、?」

少し言い淀む渡部を店主は不思議そうに見る

「あの、、、アルバイト、、、探してます、、、」

「、、、え?」

店主は意表を突かれ、驚いた表情で聞き返した
















「はい、じゃあもう今日は上がっていいよ」

「はい、、、お疲れさまです、、、」

マスターに言われ、桐島は疲れた様子でカウンターの奥の畳に座った

「はぁ、、、なんかひっさびさに疲れたなぁ、、、」

桐島はそう呟いた後、もう一度ため息をついた

「ま、たまにはこういう日もあるか、、、つうかこういう日ばっかりの方がいいんだし、、、」

桐島は自分に言い聞かせるように小さい声で言いながらペットボトルのお茶をごくごくと飲んだ

(歩からなんか連絡きてねえかな、、、)

桐島はポケットからマナーモードにしているケータイを取り出し、パカッと開いた

「、、、なんも来てねえか」

桐島はふっと肩を落とし、小さくため息をついた















「あっ、、、い、いえなんでもありません!」

渡部は早口で謝り、素早く手を振った

「そう、、、?アルバイト探してるの?」

店主は何気無く渡部に訊ねた

「はい、、、今はなんだかこのお店が気になって、ちょっと見てました」

「へぇ、、、ふふっ」

そんな渡部を見ながら店主は笑った

「は、はいっ?」

何故笑われたのか分からず、渡部は店主の表情を見た

「いやごめん、、、!なんかボーッとしてるからさ!」

店主は笑いを堪えながら言い訳するように理由を言った

「っ!?ぼ、ぼーっとはしてませんよ!このお店に見惚れてただけです!」

「あははっ!あっそう!?じゃあウチでアルバイトする?」

「えっ、、、い、いいんですか!?」

店主からの意外な提案に渡部は前のめりで聞き返した

「うん、あなた面白いし、、、!全然いいよ!」

「べ、別に面白くないですよっ!」

















桐島は疲れた体で喫茶店から出て家路についていた

「はぁ〜、、、まだ片付けとかあったのに、マスターだけに任せちまったなぁ〜、、、」

桐島は肩をぐっぐと回しながら申し訳なさそうに呟いた

「これからは全部覚えていかねえと、、、」


♩〜♩


すると桐島のケータイから音がなった メールの受信音である

「、、、ん、誰からだ、、、」

桐島はケータイをパカッと開き、メールを確認した

「あ、歩!、、、おー、バイト決まったのか、、、」

渡部からのメールの内容は、アルバイトの採用が決まったというモノだった

(にしてもかわいい文面だなぁ〜、、、相変わらず、、、)

桐島は思わずニヤニヤしながらメールを返していた

「、、、、、よっし、送信っと、、、」

(どこでバイトすんのか知らねえけど、今度見に行ってやろー)


ドンッ


そんな事を考えながらニヤニヤしていると前から来た人と肩がぶつかった

「あ、すいま、、、」

「いてえなコラ!前見ろよテメー」

桐島は謝ろうとしたが当たってきたチンピラは嫌味をぶつけてきた

「、、、あ?」

互いに悪いにも関わらず悪態をつく態度に桐島はイラッときた

「あぁ?んだよ?」

相手は2人組みで、肩がぶつかってない方も睨みをきかしてくる

「、、、ちっ、いえ、すんません」

桐島は気を落ち着かせ、なんとかもう一度謝った 元不良で短気な桐島にしてはかなり我慢出来ている方である

「おいおいおい、なんだよコラ?おい?」

肩がぶつかったチンピラは桐島に顔を寄せ、更に凄んできた

「、、、すんませんっつってんだろ?」

「なんだおい?謝んならちゃんと謝れや」

チンピラは2人で桐島を睨みつける

「、、、ちっ」

「なんだアァ!?その態度はよォ!!?」

相手が怒鳴り声を上げ、場は一気にチンピラの喧嘩の雰囲気になった

「うるせえなぁコラァ!謝ってんだろが!」

「コラァ!何をしてる!」

桐島が怒鳴り声を返した瞬間、少し離れた場所から警察官の声がした


















「ふふっ、、、頑張れよ、かぁ、、、」

渡部は自宅にて桐島のメールを確認していた

(また改めてアルバイトの話、誠哉君にしよー)

渡部は笑顔でクッションを抱きしめ、次に桐島に会う時を楽しみにしていた


♩〜♩


「あっ!電話、、、」

渡部は慌ててケータイを開いた

電話番号は見知らぬケータイ番号からだった

「あれ、、、?誠哉君からかと思ったのに、、、」

桐島は少し残念そうにした後、気を取り直して電話に出た

「はい」

「歩ちゃんですか?」

「、、、あっ!て、店主!」

電話の相手はバイト先の店主だった

先ほど、出勤の日などは改めて連絡するという事で、渡部は名前と連絡先だけ伝えていたのだ

「ハハッ!うん、そうそう、この番号私のケータイだから登録お願いね」

「はい!分かりました」

「それで、最初に入ってもらう日だけどぉ、いつがいい?」

「あっ、そうですね、、、えっと、、、」

渡部はパッとカレンダーに目を移した

「じゃあ、、、明後日の土曜日でいいですか?」

「うんいいよ 何時にする?フーッ、、、」

店主はタバコでも吸っているのだろう、息を吐く音が聞こえた

「えーっと、、、じゃあ昼の1時からとかでいいですか?」

「オッケー、じゃあ明後日の昼の1時に待ってるね よろしく」

「はいっ!よろしくお願いします!、、、え〜っと、、、」

渡部はまだ店主の名前を聞いていなかった 慌てて頭をかき口ごもった

「あ、そういえばまだ、私の名前、言ってなかったっけ?」

店主は軽く笑いながら渡部に訊ねた














「あっ、やべえ、、、」

チンピラ2人は警察官を見ると一目散に駆け出して行った

「待てコラ!」

桐島は逃げ出す2人に完全にムカついており、追いかけようとした

「大人しくしろ!」

警察官は桐島の腕を強く掴んだ

「うぐっ!」

不意を疲れた桐島は一気に腕を組まれてしまった

「はい、このガキは俺が見とくから逃げた奴ら追って」

するともう一人の警察官が桐島を取り押さえていた警察官に指示を出した

「ハッ!巡査!」

指示を出された警察官はそう言うと、すぐに逃げたチンピラを追いかけて行った

「、、、いってぇ、、、クソ、、、」

桐島は恨めしそうに去って行った警察官を睨む

「どうしたぁ?こんなとこで揉めて ケンカしてたろ?」

警察官は桐島に訊ねた この警察官は年齢は40歳ぐらいだろうか 無精髭で人相も引き締まらず、およそ警察官には見えなかった

「別にケンカなんかじゃ、、、」

「とにかくすぐそこに交番あるから ちょっと話聞こうか?」

「えぇ、、、」

桐島は疲れているという事もあり、早く帰りたかった

「ちゃんと言うこと聞いたらすぐ終わるぞ?」

「、、、ちっ、しゃあねえな」

桐島は仕方なく、交番に行く事を承諾した














「あ、はい、まだお名前聞いてなかったです」

「あー、やっぱりそうだったわね、ごめんごめん!」

店主は明るい口調で謝り、小さく咳払いした

「私は山田響子 よろしくね」

「は、はい!山田店主!」

「あははっ!やめてよその呼び方!響子でいいわよ」

「はいっ!響子さん!」














「えーちなみに俺の名前が後藤ね 後藤恭丞 今から事情聞いてくから」

交番に向かって歩きながら無精髭の警察官は桐島に伝えた

「、、、どうでもいいよあんたの名前なんか さっさとしてくれよ」

桐島はうんざりした表情でため息をついた













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