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  作者: 外山
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泊まるっ!

「さて、、、どうすっかな、、、」

桐島はため息混じりに呟いた


早乙女の部屋は缶ビール、つまみ、その他もろもろで散らかっており、非常に汚かった

潔癖症でもなんでもない桐島だが、一刻もはやくこの現状から脱出したかった

「、、、早乙女さんが起きちまったらこの掃除、俺がさせられそうだな、、、」

桐島はとりあえずこの部屋から出ることに決めた

ふと目線をおろすと、渡部が倒れるように寝ていた

「スフー、、、スー、、、」

「、、、こいつ、、、目ぇ覚ましたらまた酒とか飲んじまうかもな、、、」

桐島はテーブルに目を移した 飲みかけの酒や缶ビールがまだそのまま置いてあった

(しゃあねえ、、、とりあえず俺の部屋連れてくか、、、)

「おーい、、、歩、起きろ」

桐島は早乙女まで起こしてしまわないように小声で呼びながら、渡部の肩を揺らした

「んんー、、、」

「ほら、とりあえず立てよ」

桐島は渡部の腕を持ち上げ、声をかけた

「んぁ、、、せーくん、、、?」

「なんだよそのせーくんってのは、、、」

「誠哉の誠をとってせーくん、、、」

「いやそりゃなんとなく分かってたけど、、、」

「ナハナ、、、ナハナの里行きたい、、、」

「はぁ?なんだよそれ?」

「キラキラしてるとこ、、、ナハナの里、、、」

「分かんねえよ何言ってんのか」

桐島はそんな会話を続けながら渡部を立ち上がらせた

「ほら、外出るぞ」

「んんー?、、、うん、、、」

渡部はまだボーッとした様子だったが、頷きながら桐島に従った


バタン


玄関を出た2人は二つ隣の桐島の部屋に向かおうと一歩踏み出し歩き出した

「んぅー、、、眠いよ、、、」

「ちゃんと自分で立てよ、、、すぐそこだから」

桐島は肩で渡部を支え、ハタから見れば怪我をしたアスリートを支えているようだった

「イヤ、、、もう寝る、、、」

「お、おい、、、」

渡部は桐島の肩から離れ、その場に座ってアパートの壁にもたれた

「、、、はぁ、あのなぁ、こんなとこで寝たら風邪引くぞ?」

「んむぅー、、、ぬぬぬ、、、」

渡部は言葉にならない声を発しながらゆっくりと首を振っていた

(、、、こいつ、やっぱまだ酔ってんな、、、)

桐島はため息をつき、頭をかいた

「、、、んぶ、、、」

「ん?」

桐島は聞き取れず、渡部の言葉を聞き返した

「、、、おんぶ」

渡部は桐島に向かって手を伸ばした

「え、、、?」

「歩きたくない、、、おんぶ!」

「はぁ?わがまま言うなよ、すぐそこだから、、、」

「イヤ!おんぶ!」

渡部は桐島の言葉を遮り声を上げた

「お、おい、あんまでけえ声、、、」

「おんぶー!せーくんおんぶー!」

渡部はジタバタしながら大声で叫ぶ

「わ、分かった!分かったから静かにしろ!」

アパートなので周りを気にした桐島は何度も激しく頷きながら人差し指を口元に立てた

「うんっ!」

桐島が頷くと、渡部は嬉しそうに笑い再び手を伸ばした

(、、、酔ったらキス魔になると思ってたけど、、、どっちかっつったら幼児化してんじゃねえか、、、?)

桐島はそんな事を考えながら渡部に背中を向け、しゃがみこんだ

「ほら、乗れよ」

「えへへ、、、えーいっ!」

渡部は倒れこむように一気に桐島の背中に抱きついた

「おわっ、も、もうちょっとゆっくり、、、」

桐島はそこまで言ってハッと言葉を止めた

(こ、、、これは、、、歩の、、、?)

桐島の背中にはハッキリと柔らかい二つの感触があった

「よろしくー、、、」

渡部は桐島の両肩をしっかり掴みながら呟いた

「お、、、おうっ、、、」

桐島は動揺しながら返事をした

(なんだこの感じ、、、つかなんか思ったより、、、ちゃんとした感触が、、、)

渡部は細身なので当然胸も小さいと桐島は無意識に決めつけていたが、思いのほかの大きさを感じていた

そんな事を考えながら桐島は渡部の両脚を持ち、立ち上がった

(うわ、、、足もなんか柔らか、、、つか体めっちゃ軽い、、、)

一度気になり出すともう渡部の何もかもが気になった

(足も細いし、、、腰も細ぇな、、、こうやってくっついてみると、体自体小さいような、、、)

180センチ手前の身長がある桐島にとって、身長160ぐらいの細身の渡部はやたらと小さく感じた

(、、、なんつーか、、、一人じゃ生きてけなさそうだな、、、こいつ、、、)

桐島は最終的に渡部に対して妙な感想を覚え、ゆっくりと歩き出した

「んー、、、落ちる、、、」

渡部はそう呟きながら腕を桐島の首から体に回し、強く抱きついた

「お、おい、、、!」

桐島は先ほどまでより強く、渡部の胸の感触を背中に感じた

「んー、、、?ん?」

渡部は後ろから桐島の顔を覗き込むように見た

「っっ!、、、ち、ちけぇな、、、」

桐島は慌てて渡部から目を逸らしたが、顔は赤くなっていた

「、、、ほっぺた攻撃ー」

渡部は力ない声でそう言いながら桐島の頬に自分の頬を摺り寄せた

「や、やめろマジで!」

「んふふー、、、」

「〜〜!」

桐島は深呼吸をしながらひたすら自分の気持ちを押さえつけていた





バタン


2人は桐島の部屋についた

「やっとか、、、普通に歩きゃ十秒ぐらいなんだけどな、、、」

桐島はため息をつき、玄関で靴を脱ぐ ついでに渡部の靴も桐島が脱がせた

部屋に上がり、暗闇の中で桐島は足場を確認した

「よし、、、歩、おろすぞ」

「う〜ん、、、」

桐島はゆっくりと渡部をその場におろし、力を抜いているのでそのまま逆らわずに寝かした

(やっとおろせた、、、こえたな、、、)

桐島は少しホッとした気持ちでカチカチッと電気をつけた

パッと部屋が明るくなる そこそこ散らかった部屋だが、足の踏み場もないという程でもなかった

「とりあえず軽く部屋の整理するか、、、」

桐島はザッと部屋を見渡した そして最後に、おろされたそのままの体勢で寝ている渡部を見た

「んー、、、スー、フー、スー、、、」

渡部は再び眠りについていた

桐島は渡部の頭の上側に座り、寝顔を見た

「、、、へっ、マジで子供みたいだな、、、」

桐島はそんな渡部の寝顔を見ると、自然と笑みがこぼれた

(、、、にしても、、、こいつ、柔らかかったな、、、)

桐島は手を口に添え、真剣な表情で考え出した

(やっぱ、、、根本的に男とは違うって感じだったな、、、)

桐島は渡部の体をボーッと眺めていた

「、、、、、」

ふと気がつくと、桐島は寝ている渡部の肩を触っていた

(普段、なんとなく肩は触ることあるけど、、、改めてみると違う感じだな、、、)

桐島は肩からだんだん手を下ろし、二の腕から肘を触った

(柔らけえ、、、し、なんか止まんねえ、、、)

桐島はそのまま渡部を触り続けたい欲求に駆られた

(でも、、、こんなん歩にバレたらマズイ気もする、、、)

そう思いながらも、桐島はドキドキする鼓動を止められなかった


バッ!


すると渡部が桐島の腕を掴んだ

「っ!?」

桐島は急に腕を掴まれ、驚きのあまり固まった

「んー、、、?」

渡部は掴んだ桐島の腕をジロジロと見る

「い、いや、あの、、、歩、、、?」

「、、、んん、、、」

渡部は寝ぼけた様子で桐島の腕を抱きしめた

「えぇっ!?ちょっ、、、」

桐島は今日に引っ張られ体を持っていかれかけたが、なんとかもう一方の腕で耐え、四つん這いのような形で渡部の顔だけに覆い被さった

(ま、また胸、、、)

桐島の腕は強く抱きしめる渡部の腕と、胸の間に挟まれてた

(ダメだ、、、落ち着け、、、落ち着け、、、)

桐島は心の中で何度も念じ、渡部を見ないように顔をそらした

「、、、あっ、、、!」

顔をそらした先のテーブルを見て桐島は息を飲んだ そこには先日、半ば無理やりマスターから渡された避妊具があったのだ

(やば、、、マスターから貰ったヤツ、、、置きっ放しだった、、、!)

桐島の心臓はドクンと大きくなり、額から冷や汗が滲み出た 置きっ放しの避妊具をなんとか隠そうとしたが渡部に腕を掴まれ動けない

(あんなもん見られたら、、、!)

すると渡部が更にグイッと腕を引っ張った

「、、、どーしたの、、、?」

ゴソゴソと動く桐島に気づいた渡部は寝ぼけた様子で訊ねた

「うぇっ!?ど、どーもしてない!どーもしてない!」

「、、、?」

慌てている桐島を不思議そうに見ながら渡部は小首を傾げた

「、、、、、っ!」

自分の真下の逆さに見える渡部の顔を見て桐島はドキッとした 虚ろな目と酒によって赤く染まった頬は、桐島の顔の目と鼻の先にあった

(うっ、、、かわいい、、、)

息もかかる距離にある渡部と目が合い、桐島はゴクっと生唾を飲んだ

「あ、、、あのよ、、、」

「、、、ぅん?」

呟くような桐島の言葉に渡部は再び首を傾げた

「今日、、、泊まってく、、、か、、、?」

この状況から、桐島は思わずそんな言葉を口走った

「あっ、、、いやもう遅い時間だし!9時過ぎて10時、、、にはまだなってねえけど、、、その、危ねえし、、、」

「、、、、、」

言い訳のように必死に言葉を並べる桐島を渡部はボーッとした表情で見ている

「お前の家まで距離あるし、、、めんどくせえもんな、、、?」

「、、、うん」

「、、、え、、、?」

「今日は、、、せーくんち泊まるっ!」

渡部はニコッと笑い、跳ねるように楽しそうな口調で言った

「っっ、、、!」

(やっぱまだ酔ってる、、、よな けど、、、)

桐島は少しずつ顔を下げ、渡部の唇と自分の唇の距離を縮めた

(いい、、、よな、、、?)


♪〜♪


「うっ!!」

急に音が聞こえ、桐島はビクッと反応した

近づけた顔も離し、物音の原因を必至で探す

「、、、携帯、、、!?」

桐島は床に落ちている渡部の携帯を発見し、そこから音が鳴ってる事に気づいた

「お、おい歩 携帯鳴ってるぞ」

「ん〜?んー、、、」

渡部は眠そうに目をこするが動こうとはしなかった その際、今まで抱きしめていた桐島の腕を離した

「ったく、、、鳴ってっぞ〜、、、」

少し残念そうにため息をついた桐島は、ぐーっと手を伸ばし渡部の腰付近に落ちている携帯を手に取った

「ほら、携帯」

「んも〜!うるさいなぁ〜!」

着信音が鳴る携帯を近づけられた渡部はうっとおしそうに手で押し返した

「〜〜!出なくていいのかよ、、、」

桐島は呆れたように呟き、パカッと携帯を開いた

画面には【凛】と出ていた

「えっ、、、凛ちゃんから、、、?」

(、、、そうか、、、確かにこんな遅い時間だしな、、、)

桐島は頷きながら納得し、再び渡部に携帯を見せた

「おい、凛ちゃんからだぞ?」

「痛い〜、、、頭痛い〜、、、」

渡部は目を強く瞑り、両手で耳を塞いだ

「、、、とりあえず、俺が出るぞ?」

桐島がそう言うと渡部は目を瞑ったまま二度、頷いた


ピッ


「もしも、、、」

「姉さん?何してるの?今どこ?」

凛は畳み掛けるように質問を浴びせた 口調は落ち着いていたが早口で威圧的だった

「あ、、、いや、俺だよ俺、桐島誠哉」

「、、、誠哉さん?」

凛は少し考えた後、恐る恐る確認するように聞き返した

「ああ、今、歩といるんだけど、、、」

「じゃあ姉さんに代わってください」

桐島の言葉を最後まで聞かず、凛は強い口調で言った

「いや、、、実はさ、俺の、、、えっと、先輩、女の先輩がいるんだけどよ、歩、その人に酒飲まされてさ、、、酔ってるような状態なんだよ」

桐島は難しそうな表情で一つ一つ言葉を選んでいった

「は、、、?」

「俺が見た時には完全に酔っ払っててさ、今はもう避難させたから大丈夫なんだけど、、、」

「、、、、、」

桐島の説明に凛は不服な態度を見せた

「とりあえず、、、姉さんと話させてください」

「、、、お、おう 分かった」

(なんか、、、凛ちゃん怒ってんのかな、、、?)

桐島は首を傾げながら音声をスピーカーに切り替え、携帯を渡部に渡した

「歩、凛ちゃんと繋がってるから」

「んー?」

寝転んでいる渡部の耳元に携帯を置くと、自分で手に取り耳と口に合わせた

「姉さん?聞こえる?」

「あっ、、、リンー?」

真剣な様子の凛に対し、渡部は変なテンションで電話に出た

「、、、何してるの姉さん?お酒飲んだの?」

「お酒、、、?飲んでなぁいと思うけどー?ジュースだって言われたしーっ!」

「、、、、、」

「どしたのリン!お姉ちゃんに相談かい?」

「、、、、、」

「困ったらいつでもお姉ちゃんに、、、」

「姉さんじゃない」

渡部の言葉を遮るように凛は呟いた

「へー?」

「私、、、姉さんなんかいないから」

凛は冷たい声で歯切りよく渡部に言い放った

「えっ、、、?」

スピーカーからその言葉を聞いた桐島は驚き、思わず声を出してしまった

「もうウチには帰ってこなくていいから」

「っっ、、、!?」

凛のその冷たい口調を聞き、桐島は初めて会った時の凛の事を思い出していた

「てゆうか、、、帰ってこないで」

凛は思わず声を荒げ、渡部を責め立てた















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