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  作者: 外山
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時間の流れ


皆でパスタを食べ終えた後、桐島は皿を洗い場に持って行っていた


「いやぁ~相変わらず誠哉君の料理はおいしいですね 教えてほしいぐらい」

徒仲は満面の笑みでお茶を飲んだ

「確かに美味いけどパスタぐらい誰でも作れんだろ 茹でるだけだし」

「バカか外山は!味付けとか茹で加減とか難しいの!多分!」

ケチを付ける外山に対し徒仲はすかさず言い返す

「、、、お前らずいぶんゆっくりしてるけどよ いつ埼玉に帰る予定なんだよ?」

洗い物を水につけた桐島は居間に戻った

「まだこっちに来て寝ただけだろ?もう4時過ぎてっけど、、、」

「今日の夜には帰るぞ 新幹線で」

野波佳は壁にもたれ込みながら言った

「え?じゃあこんなとこにいていいのかよ?」

「いいんだよ!桐島に会いに来たんだから!」

九頭は桐島の背中をバシバシ叩きながら言った

「いっ!てえなぁ、力加減しろよ」

桐島は九頭の腕を払いながら言った

「とりあえず名古屋城を見に行きたいんだよねー!ここからの距離感がイマイチ掴めないんだけど、、、」

徒仲は首を傾げながら桐島を見る

「歩いていける距離じゃねえな 名古屋駅まで戻って、そこから地下鉄とかそんな感じだったと思う」

「おぉ!さすが現地人!じゃあ早速行こっか!焦栄!」

徒仲は荷物をまとめながら笑顔で野波佳の肩を叩いた

「おう」

野波佳は徒仲につられて笑顔になり、荷物をまとめだした

「もうこのまま帰るのか?」

「うん 荷物は名古屋駅のロッカーとかに預けとく」

桐島の問いに徒仲は頷く

「ふ~ん、、、」

「俺らはどうする?外山?」

頭は隣にいる外山に何気なく訊ねた

「は?お前らも名古屋城行くんじゃねえのかよ?」

引っかかった桐島は2人に訊ねる

「俺は疲れたから観光とかもういい あの2人は体力バカだからな」

外山は目を細めて徒仲と野波佳を見た

「俺も、北脇が疲れてるみたいだしまあいいかなーって」

九頭は北脇に目を向けながら言った

桐島も九頭に合わせて北脇を見る

北脇はパスタを食べ終えた直後から再びタオルケットにくるまっていた

「え、、、寝てんのか?」

桐島は北脇の顔をのぞき込むように見ながら言った

「ああ、多分な 寝息聞こえるし」

外山はため息をつきながら頷いた

「、、、もうバイト行くから起きてもらわねえと困るんだけど、、、」

桐島は頬を引っかきながら言った

「じゃあ起こそうぜ おい、北脇、、、」

「やめろって!せっかく寝てんのに、かわいそうだろ!」

起こそうとする外山を九頭は止めた

「いや、でももう出てもらわねえと、、、バイトの時間もあるし、、、」

桐島は携帯の時計で時刻を確認する

「、、、そういや、お前のバイトってなんだよ?なにしてんの?」

外山は特に焦る様子もなく、何気なく訊いた

「え?ああ、喫茶店だけど」

「その喫茶店って、結構流行ってる感じ?客とかいっぱいいんの?」

「いや、今日は曜日的にも殆どいねえと思うけど、、、」

「じゃあ俺そこ行くわ」

「は?」

外山の言葉に桐島は間髪入れずに聞き返す

「特に行くとこもねえし、そこでゆっくりするわ」

「はぁ!?なんでだよ!くんなよ!」

「うるせえな なんか注文するから別にいいだろ」

外山は桐島のバイト先の喫茶店に行こうと決め込んでいた

「い、いや、でもよ、、、」

「じゃあ北脇もそこに連れて行けばいいじゃん!」

桐島の言葉を遮り九頭は元気よく言った

「は?」

「休憩室とかあんだろ そこで寝かせときゃいいんじゃねえか?」

外山は九頭の提案に付け足しした

「はぁ!?アホだろお前ら!バイト先だぞ!?無理に決まってんだろ!」

「で?休憩室はあんのかよ?」

外山はもう一度同じ内容を確認した

「え、、、ま、まあ一応、畳の部屋があるけど、、、」

「そこ使えそうなのかよ?」

「、、、無理、、、ではないと思うけど、、、」

「じゃ決定な」

「やったー!そうしようぜ!」

九頭は勢いよく拳を突き上げた

「ちょっと、、、なぁ、、、」

桐島は困惑した表情で首を傾げながら腕を組んだ












桐島達6人は全員アパートを出て、それぞれの目的地に向かって歩いていた

徒仲と野波佳は最寄りの駅から名古屋城へ、桐島達は喫茶店へと目的地は別だが、途中までの道のりを共にしていた


「お前すげえなぁそれ 疲れねえか?」

野波佳は感心した様子で九頭に言った

九頭は背中に自分の荷物を背負い、両手に北脇を抱えていた いわゆるお姫様だっこである

「へ?いや別に!こいつ軽いし!」

九頭は笑顔で北脇を見ながら答えた 北脇は依然タオルケットにくるまっており、眠りについている

「てゆうか、よく起きねえなこいつ、、、」

桐島は首を傾げながら不思議そうに北脇を見た

「スー、、、スー、、、」

北脇は息も特に乱れずゆっくり眠っていた

「疲れてそうだったからなー、よく寝るヤツなんだよ!多分!」

「この中じゃ一番体力ねえしな 次に俺か」

外山は今までの北脇を思い出しながらうんうんと頷いた

「いやぁ~やっぱり九頭君の腕の中が落ち着くんでしょうな!」

「そうかな!?だよなー!」

徒仲の煽りに九頭は満足そうに笑顔を浮かべた

「、、、なぁなぁ」

桐島は小声で外山を呼んだ

「ん?」

外山は桐島に耳を寄せた

「九頭と北脇って、、、付き合ってんの?」

「、、、は?いや?」

「、、、そうか」

桐島は納得いかない様子で頷いた


そうこうしていると、最寄り駅との分かれ道に辿り着いた

「じゃ私らは向こう行くね!帰る時に連絡するからね!外山!」

「またな、誠哉」

徒仲と野波佳は手を振りながら分かれ道を歩く

「、、、おう じゃあな焦栄」

桐島はコクっと軽く頷いた

「了解 8時か9時ぐらいか?」

「大体それぐらいのつもり」

外山と徒仲は時間の確認をしていた

「なんだよお前 淋しいのか?」

野波佳はニヤニヤ笑いながら桐島を肘でつつく

「う、うるせえな」

桐島は照れた表情でやりにくそうに肘を払った

「、、、またいつでも、埼玉帰ってこいよ 鈴科も待ってっからよ」

「、、、ああ 機会があればな」

野波佳の言葉に桐島は照れからかそっけなく答えた

「あるじゃねえか ちょうど」

「、、、え?なんだよ」

桐島は少し考えたが、何も浮かんでこなかった

「来月のゴールデンウィーク、学園祭あるからよ 来いよ」

「っ、、、!」

桐島は驚いた表情で思わず黙り込んだ

昨年の学園祭での記憶が頭によぎる

(、、、そうか、、、もう、そんなに、、、)

桐島は時間の流れに違和感を覚えた

あのゴールデンウィークの日から、もう1年近く時間が流れていたのだ

今は4月の上旬 ゴールデンウィークはちょうど1ヶ月後である

「、、、ま、考えとく」












桐島、外山、九頭、北脇の4人は喫茶店に着いた

桐島は喫茶店に着くなりマスターに事情を説明し、北脇を後ろの部屋に招き入れさせて貰っていた

喫茶店はいつにも増して客が少なく、マスターの知り合いの常連客しかいなかった

(まあいつもこんなもんか、、、)

桐島は思い直しながらカウンターに出てきた

北脇を部屋におろし寝かせた後、疲れた九頭はそのままそこで一休みしていた

カウンターに腰掛けている外山の前に桐島は立った

「はいよ、ブドウジュースな」

桐島はそう言ってジュースを奥と、イスに座った

「、、、空いてんだな、いつもこんな感じかよ?」

外山は店内を見渡しながら言った

「まあな、曜日と時間で結構違うけど、いつも空いてるよ」

桐島はマスターの方を見ながら言った マスターは店内の端のテーブル席で常連客と談笑している

「ふ~ん、、、」

「バイトの俺としては楽でいいけどな」

「、、、、、そうか」

「、、、? なんだよ?」

外山の言葉の妙な間が桐島は気になった

「いや、、、お前にはこの喫茶店が似合ってんな」

「、、、は?どういう意味だよ?」

「別に 大した意味はねえよ」

外山はテキトーな返事をしながらジュースを飲み始めた

「、、、訳分かんねえな、、、」

桐島は不思議そうに首を傾げながら、お冷やを口にした


「、、、そういや九頭は?」

外山は思い出したように訊きながらカウンターの奥を覗く

「九頭は疲れたっつって休んでるよ 寝たんじゃねえか?」

「え、、、なんだよあいつ、、、」

外山はつまらなさそうに呟いた

「それよりよ、なんかねえか?埼玉で」

桐島は何気なく外山に訊ねた

「なんかって?」

「なんでもいいんだよ なんかねえのかよ?変わった事っつうかさぁ」

「親戚のおっさんかお前 なんもねえよ」

「なんもねえって事ねえだろ 些細な事でいいからよ」

「親戚のおっさんかよ 特にねえよ」

「ちょっとぐらいあんだろ?先輩とか、みんな元気か?」

「だから親戚のおっさんか!元気だよ」

外山は桐島の質問にめんどうそうに答えた

「はぁ、つうかお前の方こそなんかねえのかよ?」

「ん?」

外山は逆に質問を返した

「なんつうかよぉ、久々に会った友人に話す話っつうかネタっつうか、、、なんかねえか?」

外山は雑にそう言い放ち、再びジュースを飲み始める

「う~ん、、、」

桐島はイスにもたれ、天井を見た

「あ、そういや最近、、、歩に会ったな」

桐島は思い出しながらそのまま口に出した

「、、、は、、、?」

外山は顔を上げ、桐島の顔を見た

「あゆみ、、、?」

外山は桐島の口から出た言葉を驚いた表情で聞き返した















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