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  作者: 外山
149/216

桐島の部屋にあるモノ


「まさか早乙女さんも秋本も外出中とはな、、、寝てるならまだしも」

桐島はそう言いながら自宅のドアに手をかけた

「ちょっ!ちょっと待って」

渡部は両手を前に出し、慌てた声を出した

「ん?」

「それはちょっと、、、マズいっていうか、なんていうか、、、」

渡部は頬をひっかきながらいいづらそうに言葉を選ぶ

「え?い、いやそりゃまあ、、、でもしゃあねえだろ?」

「しゃ、しゃあないかもしれないけど、、、」

渡部はそう言いながらぐっと考え込んだ

「あっ、、、じゃあ私、ここで寝るよ!」

渡部は思いついた事をそのまま口にした

「、、、は?」

「家の前ならそんなに危なくないし、出来たら薄い毛布かなにか貰えれば、、、」

「アホか!」

桐島は強い口調で渡部の言葉を止めた

「こんなとこで寝させられる訳ねえだろ!いいから入れって どうせ始発まで数時間なんだからよ」

桐島はドアノブを回し、ドアを開けながら言った

「でも、、、あの、、、」

「仕方ねえだろ?他に行けそうなとこもねえんだから」

「、、、仕方ない、、、」

渡部は桐島の言葉の一部を繰り返した

「え?」

「仕方ない、けど、、、いいのかな、、、?」

「は、、、?」

渡部の言っている意味が分からず桐島は聞き返した

「本当に、、、いいのかな、、、」

「っ、、、、、」

桐島は表情が変わり、一瞬、息がつまるような感覚がした

(、、、そうか、、、コイツの中には、、、)

桐島はやっと、今までの気になる渡部の態度や言動の意味が分かった

(それが、、、引っかかってんのか、、、)

桐島はふぅ、と息をついた


「、、、心配すんなよ」

「え、、、?」

「大丈夫だからよ あんま気にすんな」

「、、、、、」

渡部は俯き、ぐっと我慢するような表情になった

「、、、うん」









2人は桐島の家へと足を踏み入れた


真っ暗な短い廊下を歩き、居間に着くと桐島は電気をつけた

パッと明るくなり、見えた景色はいつも通りの桐島の部屋だった

ある程度整理整頓され、小汚さもないごく普通の部屋である


「もう寝るだろ?」

桐島は渡部に言いながら折り畳まれた布団を居間に敷いた

「うん、、、」

「風呂は我慢しろよ?着替えねえだろうし」

「うん 大丈夫、、、」

渡部は小さく頷きながら言った

「じゃあ歩が寝るとこはここな 俺は、、、まあ廊下とかでテキトーに寝るからよ」

「えっ!?や、や、そんなの悪いよ!」

渡部は慌てて身振り手振りで断った

「は?なにが?」

「だ、だって、、、私が無理やり泊めて貰ってるのに、、、」

「だからそんな事気にすんなって いいから布団で寝ろよ」

「誠哉君が布団使って!私は違うところで寝るから!」

「はぁ?んな事させられねえよ 気になって俺が寝れねえよ」

桐島はため息をつきながら頭をかいた

「シーツも洗ったばっかだから綺麗だしよ 大丈夫だって」

「そ、そういう事じゃなくて、、、」

「泊めて貰ってるって思うなら言う事聞け!布団でゆっくり眠れ!俺は今からシャワー浴びにいく!以上!」

桐島はそう言い切ると廊下に向かって歩き出し、風呂場へと向かった

「あ、、、」

渡部は桐島の背中が見えなくなった後、布団を見た

「、、、、、」

揺れる思いを抑えつけ、渡部は就寝準備に入った




荷物をまとめて置き、上着を脱ぎ、就寝準備が出来た渡部は桐島に用意された布団の上に座った

電気は消していいのかどうなのか分からず、つけたままだった

掛け布団を足にだけ掛け、渡部は桐島の部屋を見渡した

見渡しながら、今日1日の出来事を順番に思い出していった

別れを誓った桐島との再会、何気ない会話、雰囲気、空気

それが昔のように戻れば戻るほど、渡部は辛かった

(何も言わずに駅まで送ってくれてたんだよね、今日、、、誠哉君の家は電車なんて乗らなくていいんだし、、、私が酔いつぶれても、目が覚めるまでずっと、、、)

渡部は思っているこの事を、どう受け取ればいいか分からなかった

(誠哉君はもう、、、もういいって思ってるのかな、、、もう、いいって、、、)

渡部はまだ部屋をなんとなく見渡していた

(私は、、、もう、いいのかな、、、)

渡部はそう思いながら部屋についてある時計を見た

時刻はもう2時頃だった

「、、、っ、、、?」

そして時計を見ていると、ふとあるモノが目に入った

「あ、、、、、」

渡部は驚いた だが、それがなんなのかはすぐに分かった

そして、それの意味も、すぐに分かった

「、、、、、」

(そっか、、、)


渡部は立ち上がり、部屋の電気を消した

部屋は一気に真っ暗になる

(そうだよね、、、やっぱり、誠哉君も、、、)

渡部はそのまま布団に入り、ゆっくりと目を瞑った










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