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  作者: 外山
139/216

それが理由


3学期も終わり、今は春休み

とは言っても3月はまだまだ寒く、春という雰囲気はあまりなかった


春休みになり数日が経ったある夜


バイトを終えた桐島は家路についていた

だが片付けや翌日の準備が多く、いつもより少し遅い時間だった


(疲れたな今日も、、、てゆうかマスターが皿洗いとかレジっておかしいだろ、普通逆だろうがよ、、、)

桐島は今更ながら心の中でツッコミを入れる 春休みになってからバイトに入る時間も長くなり、その事がより強く感じられた

「ふわぁ~あ、ねむ、、、」

桐島は大きいあくびをした

(風呂入ってさっさと寝るか、、、)

桐島はそんな事を考えながらゆっくりと街を歩いていた


すると、ふと前方に見覚えのある後ろ姿が見えた

「ん?、、、」

桐島はそれに気づき、何気なく近づく

「あ、、、」

桐島は小走りで駆け寄り、その人物の肩に手を置いた

「千佳!久しぶりだな!」

ここ1ヶ月程、水野と会っていなかった桐島は意気揚々と声をかけた

「はい?」

振り向いた女性のその顔は、水野に似ても似つかない顔だった

「え、、、あ、、、」

桐島は手を離し、素早く離れた

「す、すいません!知り合いと勘違いしました!すいません!」

桐島はすぐに頭を下げまくり、事なきを得ようとした

「はぁ、、、」

女性は首を傾げながら、少し早歩きで去っていった

「すいません、、、」

桐島は小声で呟きながら、その女性の後ろ姿を見た

(、、、あれ、、、?こうやって見たらそんなに似てねえような、、、髪型ぐらいしか、、、)

桐島は手を顎に添えながら考えていた

(、、、にしても、、、恥ずかしい あんな元気よく声かけたのに、、、)

桐島は恥ずかしそうに下を向きながらゆっくりと歩き出した


ポン


すると後ろから誰かに肩を叩かれた

「え?」

桐島はそのまま振り返り、後ろを見た

「お、やっぱり誠ちゃんだ なにしてんの?」

そう言ってニコッと笑ったのは水野だった

「え、、、うわっ!ち、千佳!?」

桐島は過剰に驚き、後ずさった

「え?うふふ、なぁにその反応ー?」

水野は笑いながら桐島の肩を押した

「い、いや、、、?なんもねえよ?」

桐島は内心戸惑いながらも、平気そうに言った

「ホントにー?なんかびっくりしてたじゃん!」

「し、してねえよ!」

冗談半分でからかう水野に桐島は詰まりながらも言い返した

(なんだ、、、?なんかやりづれえな、、、)

桐島の心中はいつものように落ち着いておらず、妙な違和感があった

「とりあえず歩こ?誠ちゃんも帰宅チューでしょ?」

水野は進行方向を指さしながら言った







桐島と水野は途中まで帰り道は同じな為、2人は並んで歩いていた


「誠ちゃんはバイト帰りなんだ 喫茶店だよね?」

水野は何気なく桐島に訊ねる バイト先が喫茶店である事を水野にだけ教えていた

「ああ 今日はいつもより帰んのが遅くなってな」

「へ~、にしても誠ちゃんがバイトかぁ~、変な感じ」

水野はニヤニヤしながら桐島を見る

「失礼な奴だな、、、」

桐島はさして気にも留めず呟くように言った

「今度、喫茶店まで見に行ってみよっかな♪」

「はっ!?や、やめろよな!」

桐島は素早く釘を差した

「え~?なんで?」

「、、、い、いや、、、は、恥ずかしいだろなんか、、、だから須原と秋本にもバイト先の場所言ってねえんだし、、、」

桐島は頭をかきながら目を泳がせる

「、、、ふ~ん 誠ちゃんがそう言うならとりあえず行かないけど」

水野は桐島の目をじっと見た後、笑顔で言った

「おう、、、」

桐島はホッと一息つきながら答えた


「千佳は何してたんだ?こんな時間に1人で歩いて」

桐島は水野に話をフった

「塾だよ 塾帰りってヤツね」

水野は手提げの袋を見せながら言った

「、、、塾か、、、」

桐島は頷きながら呟いた

「うん、どうかした?」

表情が変わった桐島を見て、水野は訊ねた

「、、、何回も訊いて悪いけどよ、、、なんで大学行かねえんだ?」

桐島は水野の方を見ながら言った

「え、、、?」

「塾とか行って勉強してんのに進学しねえなんて、、、おかしくねえか?」

「、、、そうかな?」

水野は明るい口調で答え、誤魔化そうとする

「そんなに勉強するって事は勉強は嫌いじゃないんだろ?成績だって良いらしいし、、、家だって、お金に困ってるって感じはなかったし」

「、、、うん そうね」

桐島の言葉は全て正しく、水野は頷いた

「千佳だって大学に興味あるんだろ?浜さんと片岡さんに色々質問してたし、、、お前のおじさんだって、進学すると思ってたって言ってたぞ?」

桐島はここぞとばかりに思っていた事を全部言った 水野が大学に行かない理由が分からず、ずっと気になっていたのだ このご時世、大学に行っておいた方が良い事は桐島にも分かっていた

「それかな」

水野は唐突に声を出した

「、、、え?」

桐島は少し考えたが、意味が分からなかった

「、、、おじいちゃんが、、、理由になるのかな」

「、、、え、、、あのおじさんが?」

桐島はまだ意味が分からず聞き返す

「、、、うん」

水野は悲しげな表情で笑った

「、、、も、もしかして大学とか反対されてんのか?俺が話を聞いた時はそんな感じしなかったんだけど、、、」

「そうじゃないよ」

水野は桐島の言葉をキッパリ否定した

「、、、あ、そうなのか、、、」

桐島は少し戸惑いながら頷く

「、、、じゃあ、なんで、、、?」

桐島はおそるおそる訊ねた 水野があまりこの話をしたがっていないような気がしたからだ だが今更引き返せはしなかった

「、、、別にわざわざ言わなくてもいいと思って今まで言わなかったけど、、、誠ちゃんがそんなに気になるなら話すね」

「、、、、、」

水野の前置きに桐島は緊張しながら構えた

「、、、そんな大した理由じゃないよっ 普通にしてて?」

水野は笑いながら桐島の腕を撫でた

「お、おう」

桐島は頷いたが、全然普通じゃなかった 今まで聞きたくても聞けなかったのだから緊張するのも当然だろう

「、、、あの家にね、今は私とおじいちゃん2人で住んでるでしょ?」

「、、、ああ、、、」

桐島は水野の言葉に相槌を打つ

「それが理由」

「、、、え?」

急に話が終わり、ふと桐島は肩の力が抜けた

「、、、ど、どういう意味だよ、、、?」

話が掴めない桐島は、更に問い詰めた













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