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  作者: 外山
135/216

年越し

桐島が埼玉に帰省し、名古屋に戻って来てから数日後


大晦日 10時頃


桐島、水野、秋本、須原の4人は初詣に来ていた

神社にはもうすでに人混みが出来ていた

お祭り気分で盛り上がる神社の雰囲気に対し、桐島達の雰囲気は盛り上がりに欠けていた


「、、、、、」

「、、、、、」

桐島と秋本は互いに違う方に顔を向けていた

盛り上がりに欠けている理由はこの2人である

「、、、お~い、いつまで怒ってんだよ」

須原は桐島の肩を叩きながら言う

「、、、別になんも怒ってねえよ」

「怒ってるやんその言い方!絶対いつもとちゃうやん!」

桐島の言葉に秋本は素早く反応する

「俺が怒る理由はねえだろうが!変なのはお前だろ!」

「変ちゃいます!生まれてコノカタ私の周りはみんなそうでした!」

「ちょ、あず!やめときなって!」

ほっとけばすぐ言い争いを始める為、水野は止めるので必死だった



こんな状態になった理由は些細なモノである

神社に来る前に、桐島の家で年越しそばを食べていた

そこで桐島が作るそばは、秋本から見れば異常につゆの色が濃かった

秋本は京都出身な為、つゆの色は透き通るように薄いモノが普通だった

それが原因で軽く言い争いになり、そのまま神社に来たのだ



「どっちでもいいじゃねえかそんなの、、、」

須原はため息まじりに呟いた

「せや?別にええよ?ただちょっと濃いなぁ言うただけやのに桐島がつっかかってきたんやん!」

秋本は須原に弁明しながら桐島を指差す


「つっかかってねえよ!なんだよそのこだわり、って軽く答えただけだろ!」

「こだわりって言い方がムカつくねん!別にこだわってる訳ちゃいますけど!?」

「大体なぁ!水には軟水と硬水ってのがあんだよ!京都は軟水で名古屋より東は硬水!だから出汁を作る時に、、、」

「あーもー訳分からん!セコいわ!私知らんもんそんなん!」


2人が言い争っているのを須原と水野は呆れた表情で見ていた

「おい、行くぞ」

須原は強引に秋本の腕を引っ張る

「浩二はどう思う!?あんなよう分からん理屈まで持ち出す桐島を!」

「どうでもいいよ」


「ほら誠ちゃん もう行こ?」

水野も須原と同じように強引に桐島の腕を引く

「~~っ、、、まあせっかく来たんだしな、、、」

桐島はイラつく気持ちを抑え、歩き出した



皆で神社を回っている内に2人の機嫌はだんだんよくなってきた

しばらくすると、そばで言い争っていた事は皆の頭の中から無くなってきていた


「ほな次はくじ行こくじ!おみくじ!」

秋本は楽しそうに皆を先導した

「走んなよ!はぐれるから!」

須原はそう言いながら秋本の後ろを歩く

「あっ、誠ちゃん、私達も行こ行こ!」

「おう」

水野は桐島の腕を引きながら秋本についていく 先ほどからずっと2人は腕を組んだままだった

(腕、、、もう引っ張らなくていいけどな、、、でも、もういいって言うのもなんか恥ずかしいし、、、)

桐島は水野と自分の腕を見ながら考えていた

(、、、ま、いっか、このままで、、、)

桐島は自分に言い聞かせるようにそう思いながら歩いていた




色々としているともう年が明けるまであとわずかとなっていた

神社真正面の賽銭箱の近くには地元のテレビ局のカメラが来ており、自然と人はその辺りに集まってきていた

桐島達もなんとなくその近くにいた



「さー今年も残り僅かとなりました!例年通りここの神社はすごくたくさんの人で溢れかえっていまーす!」

カメラの前で女子アナが必死でリポートしている 人々はその声に反応して騒いでいた


「はぁ~、今年ももうすぐ終わりかぁ~」

須原はつまらなさそうに呟いた

「そやね、、、」

秋本も続いて寂しそうに言った

「、、、、、」

桐島はボーっと今年1年の事を思い出していた

(、、、色々あったな、今年は、、、)

渡部の法事で埼玉から名古屋へ行った事、渡部が名古屋へ引っ越した事、自分も追いかけて引っ越した事、菅井との事、順番に桐島の頭の中を巡っていた

「、、、、、」

そして最後に、水野と再会した事を思い出していた

「、、、なに?誠ちゃん」

「え?いや、、、」

桐島は慌てて水野から目をそらす そしてふと、組んだままの2人の腕を見る

「お願い事考えとかないとね~!欲張りな事頼もっかな~!」

水野はニヤニヤしながら楽しそうにしている

「、、、お願い事、、、か」

桐島は声にならない言葉でふと呟いた





『私もうお願い事決めてるもん!』


『え、、、?なんなんだよ?』


『、、、ふふっ!えっとねぇ、、、来年の初詣も、、、また、桐島君と一緒にこれますようにって!』


『、、、そか、、、なんだ、俺と同じじゃん』


『え、、、そうなの?』


『ああ』


『、、、えへへ やったー!じゃあ絶対叶うね!このお願い事!』





桐島の脳裏には丁度1年前の渡部との会話が蘇っていた

「、、、、、」

(まさか、、、こんな風になってるなんて、全然分からなかったな)

桐島は周りを見渡す 自分が埼玉から名古屋に引っ越し、そこの友達や幼なじみの水野と初詣に来ているとは、1年前の時点では知りようがなかった

そして、そんな約束をした渡部と、もう二度と会う事はないだろうとは、考えもしなかった


(、、、なんだかんだ俺は、、、今でも歩の事、引きずってんのかもな、、、)

桐島は自分の今までの行動を思い出すと、自然とそういう答えに流れ着いた

「、、、、、」

桐島はグッと、水野の手を握った

「、、、?」

水野は少し驚いた表情で桐島を見る

桐島は真っすぐ賽銭箱の方を見ていた

「誠ちゃん、、、」

水野は小さくそう呟き、手を握り返した


(もう、、、俺も、前に進まなきゃな、、、)


「カウントダウン、残り10秒でーす!」

女子アナが人混みに向かって叫ぶ 人々はカウントダウンを始めた


(渡部や緋斬の事、、、ダラダラ引きずるのは今日まで、、、今年までだ)


「7!6!5!」

少しズレているが人々はカウントダウンをする 須原と秋本も人々に合わせている



(来年の初詣もどうなってるかは分からねえけど、、、)



「2!1!」



(後悔だけは、、、絶対しねえ)

















そうして、年は明けた





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