ファミリーレストランにて
瞬の家に着いた4人だが、すぐに全員で外に出ていた
安川や野波佳達を呼んだのだが、全員を家に入れると大人数すぎるのだろう
とりあえずマンションの前で皆を待つ事にした
「別に家ん中でいいじゃないすか、、、」
桐島はため息混じりに図々しい事を言った
「無理だよねどう考えても 10人超えるからね」
瞬は少し早口で言い返す
「去年はみんなで集まったじゃないすか」
「あんたらが勝手に集まったんでしょ!私が寝てる間に!」
「、、、そうでしたっけ?」
桐島は首を傾げながら答える
「そうよ」
瞬はため息混じりに呟いた
キキーッ!
すると自転車のブレーキをかける音がした
「いたー!」
そんな声が駐輪場から聞こえてくる
「あ、、、きたかな?」
瞬は声がする方を見た
「おーい!キリシマーン!」
このあだ名で桐島を呼ぶ人物は一人しかいなかった
安川真奈美である
安川は走って桐島達のもとへやってきた
「うっわ~!マジキリシマンじゃ~ん!久しぶり~!」
安川は息を整えながらテンション高く桐島に絡む
「はい、まあ、、、てか声高いんですけど、、、」
桐島は軽く耳を押さえながら言った
「アハハ!相変わらずだね~!おっ、ちょっと背高くなったんじゃな~い?」
「なってないです」
頭をポンポンと叩く安川に桐島は無表情で答える
「、、、ん?」
安川はふと須原、秋本、水野と目が合った
「、、、この少年少女は一体、、、?」
安川は桐島と瞬を交互に見ながら訊ねる
「桐島君の友達だって 名古屋の 年は私達の一個下かな」
瞬は3人を指しながら安川に言った
「、、、へぇ~」
安川はじ~っと3人の顔を見た
3人はどうしていいか分からずとりあえず会釈する
「、、、そうかいそうかい!このおバカさんと仲良くしている良い子達な訳だね~!」
安川はにっこり笑い、一番近くにいる秋本の頭を撫でる
「ところでキリシマ~ン?」
安川はガッと桐島と肩を組み、皆から離れた
「あゆみんは?」
安川はニンマリ満面の笑みで言った
「、、、いや、それは、、、」
「ん~?おかしいなぁ~?君、何しに名古屋行ったんだっけ?」
皆に聞こえないよう小声だが、安川の口調に桐島は恐怖を感じた
「後で追求するさかい覚悟しとけよワレ」
安川は最後だけ真顔でそう呟くと、再び笑顔になり皆のもとへ戻った
「じゃ、自己紹介とかは家でしよっか!みんな遠慮しないで上がって!」
安川は皆を瞬の部屋へ連れて行こうとした
「ちょっ、なんで家主気取りなのよ!ダメよ真奈美!これからかなり人数増えるんだから!」
「え~?別にいいじゃん 去年のクリスマスだって大勢で純の家に集まったんだし~」
「だからそれは真奈美達が勝手に、、、」
桐島は安川達の会話を少し離れた場所で聞いていた
(歩の話、、、やっぱしなきゃダメなのか、、、)
桐島は深くため息をついた
皆は近所のファミリーレストランに行く事にした
まだ来ていない面々にも、瞬の家ではなくファミレスに来るよう連絡をしなおした
ファミレスに着いた桐島達は広めのテーブル席についていた
「、、、、、」
桐島は少し一歩引いた目線で皆の会話を聞いていた
「へぇ~、葵さんのアパート住んでんだぁ~」
「はい 最初はびっくりしましたよ 大家めっちゃ若いやん!て思いました」
安川と秋本はそれぞれジュースを飲みながらリラックスして話していた
「真奈美、よく葵さんにパシリ扱いされてたね」
瞬は思い出しながらクスクス笑っている
「そうそう!よくジュース買いに行かされてさ、オススメのを買ってこいって」
「あ、俺それたまにされますよ しかも呼び出しといてそれですよ!」
須原は安川達の話に入っていく
「ハハ!じゃあきちんと引き継がれてんだね~!」
「、、、、、」
桐島はむず痒いような妙な違和感やらでどういう顔をしていいか分からなかった
(瞬さんや安川さんとこいつらが喋ってんのって、、、すげえ気持ち悪いな、、、)
桐島は頭をかき、その景色から目をそらした
「どしたの?変な顔して」
水野は心配しながらもニヤツきながら桐島に訊ねる
「いや、、、」
桐島と水野が会話しているのをふと安川は見た
「千佳ちゃんはさ~、キリシマンの幼なじみなんだよね?」
安川は話を桐島の方へ広げる気だ
「はい 小学5年生までですけどね」
「小学生のキリシマンってどんなだったの?」
安川は好奇心に満ちた目で訊ねる
「え?んな事どうでも、、、」
「私も気になる!」
呆れ顔の桐島の言葉を遮り、秋本は言った
「私も気になるね」
瞬も小さく手を上げながら言った
「はぁ?別に俺から聞けばいいじゃないすか!?」
桐島は納得いかない様子で皆に言う
「キリシマンからそんな話聞いた事ないし、やっぱ第三者から聞いた方が面白いでしょ♪」
「~~っ、、、!」
桐島が上手く言い返せず言葉に詰まっていると、ファミレスの出入り口が開く音がした
野波佳、徒仲、北脇、九頭の4人だった
「お、向こうにいるぜ?」
野波佳が桐島達の方を指差すと、3人ともそちらを見た
真っ先に早歩きで近づいてきたのは徒仲だった
桐島はその理由に気づき、目を合わせないよう下を向いた
桐島達のテーブル席の前につき、徒仲は立ち止まった
「誠哉君 久しぶり」
徒仲は優しく笑いながら言った
「、、、お、おう 久し、、、」
「じゃ、お話しよっか?」
桐島の返事を聞かず、徒仲は言った
「はは、、、やっぱり?」
桐島は無駄だとは分かっていても、笑ってごまかそうとしていた
桐島、安川、徒仲は皆の隣のテーブル席に座った
さらにもう一つテーブル席を使い、計3つに分かれて座っていた
10人もいるのだからそれぐらいに分かれないと窮屈で仕方がない
楽しそうな2グループに比べ、桐島のグループはピリピリした空気が漂っていた
「え~、電話では確か、歩ちゃんとは二度と会わない、などとふざけた寝言をぬかしていましたが、、、とりあえず今日は全部吐いてください 吐かないと名古屋どころかこの世にもいられないと思ってください」
徒仲は早口で現状を説明する いつもの明るい彼女は今は眠っているようだ
「、、、あのよ、そんなにかしこまらなくても、、、」
「私の質問には正確に答える事 嘘無しボケ無し黙秘権無し、分かったら返事」
桐島の言葉をろくに聞かず、安川は会話の主導権を握った
「、、、はい」
桐島は大人しく返事をした
「まあまあ真奈美さん ここは話を聞いてあげましょう」
「そうね とりあえず持ってるネタ片っ端から広げろ」
徒仲と安川はイスにもたれ、桐島の話を聞く態勢に入った
「、、、いや、そう言われても、、、」
桐島はこの複雑な事情をどう話していいか分からなかった そもそも、話したところでこの2人が納得するかどうか
「そう言われてもじゃねえんですけど 分かりやすく端的に、簡潔に、それでいてオシャレなお洋服のように話してみろ」
「それが分かりにくいな、、、」
徒仲の言葉に桐島は軽くツッコんだ
「口答えすんじゃねー!オシャレなお洋服を意識して喋れってんだよ!」
安川はバンとテーブルを叩きながら言った
「わ、分かりましたよ、いや分かってはないけど、静かにしてくださいよ、、、」
桐島は安川をなだめ、小さくため息をついた
少し面倒だが、菅井の事から全て話す事にした
ややこしい話だが、順序よく説明すれば割と分かりやすくまとめる事が出来た
渡部と再会し、そしてキッパリと別れるまでの話を、安川と徒仲の質問を交えながらした
そうしていく内に、安川と徒仲の口調や雰囲気も、いつも通りに戻ってきていた
「そ、そんな事があったんだ、、、この数カ月で、、、」
先ほどまで厳しく責め立てるような態度をとっていた安川は、桐島に対し申し訳なく感じていた
「そのお友達の話は焦栄から聞いてたけど、、、歩ちゃんが誠哉君と別れた理由にそんなに関わってたんなんて、、、全然知らなかった」
友達、とは菅井の事である 葬式の話は野波佳から聞いていただろうが渡部との関係性は知らなかったようだ それもそうだろう 当然、野波佳も知らないし徒仲はいまだに渡部と連絡は取れていない 知る手筈がなかった
「まあでも、やっぱり名古屋に行って良かったとは思ってるよ 歩の事もちゃんと納得いったし、一応、緋斬にも会えたし、、、」
桐島は目線を下げ、手をこすりあわせていた
「、、、そっか」
徒仲は下を向き、落ち込みながら答えた
それもそのはず、桐島の話によると結局、渡部には会えないのだ
「、、、、、」
安川は特に表情を変えず、イスにもたれていた 先輩としての意地というモノだろうか、落ち込んでいる姿は見せたくないようだ
その頃 瞬宅
ピンポーン
「、、、、、」
ピンポーン
「、、、、、」
ピンポーン
「、、、あれ、、、瞬さーん?」
外山だけ安川から連絡を受けず、瞬のマンションにいた