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  作者: 外山
117/216

秋本の気遣い



菅井、渡部と思わぬ形で再会した桐島は、その1時間後には家に帰ってきていた


あの状況に耐えられる訳もなく、テキトーに理由をつけて帰ってきたのだ


「、、、、、」

壁にもたれながら、現状を整理していた

「緋斬と歩は、、、須原の幼なじみ、、、」

ついさっき知った事実をわかりやすく口にする

「確かに、、、歩は小5まで名古屋に住んでたっつってたし、、、緋斬ももともと名古屋で、お祖父さんの都合で埼玉に来たって言ってた、、、」

昔、菅井や渡部に聞いた話を改めて思い出していた

菅井からは中学校の時、渡部からは高1の文化祭前に聞いた話だった

「でも、、、緋斬と歩が幼なじみ、、、?」

(訳分かんねえ、、、どうなってんだよ、、、)

状況をある程度理解してはいるが、全く納得行かず、実感は湧かなかった










ピンポーン


「、、、はっ!?」

インターホンの音によって、桐島の意識は戻った

どうやらいつのまにか寝てしまっていたようだった

「あ、、、寝てたのか、、、」

寝起きのボーっとした状態でそう呟きながら、目をこする

時間を見ると夕方17時

寝ていたのは数時間だけだった

時計を見た際ふと、ある写真が目に入った

南と横浜旅行に行った時に撮った写真である

「、、、、、」

桐島はその写真をゆっくりと手に取った

「南、、、」

その名を呟くといつも、どうしようもなく苦しくなる

ついさっき菅井と会った事で、それが更に強くなっていた


ピンポーン


再びインターホンが鳴る

「あっ、、、そうだった」

桐島はパタッと写真立てごと倒した


ガチャ


「はい、、、」

桐島は玄関のドアを開け、足もとから相手の様子をうかがった

「一回で出えや!」

イラつき気味にそう怒鳴ったのは秋本だった

「えっ、、、あ、ああ、ごめん」

その勢いに少し押され、桐島はおとなしく謝った

「てゆうか寝てたやろ また寝ぐせついてるし」

秋本はため息まじりに言った

「そ、そんな事より、、、!何の用だよ、、、」

桐島は落ち着いて息をつきながらも、寝ぐせのついた髪を気にする

「遊びにきたんや なっ?歩ちゃん!」

秋本は後ろに振り向きながら言った

「う、うん、、、」

渡部はドアと秋本の後ろからひょこっと顔を出す

「えっ、、、!?」

(あ、歩、、、)

突然現れた渡部に、桐島は再び動揺する

「な、なんで、、、」

桐島はどちらに訊く訳でもなく呟く

「さっきまで2人で買い物しててんなー?女の子だけじゃないと行きにくい場所とかあるから」

秋本はついさっきの渡部との会話を思い出す







つい先ほど


買い物を終えた秋本と渡部は特に行くアテも無くとりあえず道を歩いていた

「2つ目の店が一番良かったかな~今日は 歩ちゃんはどこが良かった?」

「私も同じ!4店行ったけど2つ目が良かった!商品がっていうのもあるけど、雰囲気とか」

「やっぱせやんな~!じゃあなじゃあな?一番イマイチやったとこは?」

秋本は渡部と目を合わせ、せーのとかけ声をかけた

「3つ目!」

2人は声を合わせて言った

「あはは!やっぱりそうだよね?」

「うんうん!私の中では結構大差やね~!」

2人は楽しそうに会話をしていた

どちらかというと内向的な性格の渡部も秋本とはすぐに仲良くなっていた

やはり幼なじみである須原の友達、という事が打ち解けやすくなった理由だろう

秋本の社交的な性格も、渡部と上手く合うのかもしれない



「ちょっと疲れたな~、、、どっか喫茶店でも寄る?」

「あ、あの、梓ちゃん、、、ちょっと訊いて良い?」

「、、、へ?ああ、なに?」

「ファミレスで、すぐ帰っちゃった人って、どの辺りに住んでるの?」

「あ~桐島?あいつはアパート住んでるよ 私の部屋の隣なんやけどね」

「へ~、、、そうなんだ」

渡部は頷きながら前を向いた

「ごめんな?なんか人見知りする奴みたいで、、、悪気あったんちゃうと思うし、住所まで聞いて報復はやめたってな」

「え、や、そ、そんな事しないよ!」

「ハハハ!まあ分かってるけど、、、じゃあなんなん?」

秋本は笑いながら流れで質問する

「、、、やっぱり浩二君の友達だし、なんとなく気になって、、、」

渡部は目をそらし、ゴニョゴニョ誤魔化しながら言った

「ふ~ん、、、あっじゃあさ!今からウチ遊びに来うへん?」

「えっ?」

「こっから近いし、その時に桐島も呼ぼうや あいつまだ引っ越してきたばっかりで全然知り合いおらんらしいから、友達なったらええやん!」

そういうと秋本はアパートに向かって歩き出した

「う、うん、、、」

渡部もそのまま流れで返事をし、秋本に着いて行った






「って感じで、ここまで来てん!な?」

秋本は後ろにいる渡部に促しながら言った

「う、うん」

渡部は慌てて素早く頷く

「、、、、、」

(歩が、、、俺の事気にして、、、)

桐島は呆然とした表情で突っ立っていた

(いや、、、そりゃそうか、、、俺が引っ越してきた事なんか知らねえだろうし、、、)

桐島はチラッと渡部の方を見る 渡部は目線を下げ、桐島とは目を合わさなかった

「じゃあ私、荷物置いてくるから、歩ちゃん先に桐島の部屋入っといてくれる?」

「はっ!?」

桐島は思わず秋本に聞き返した

「、、、うん、じゃあ、、、お邪魔します」

渡部は桐島の横を通り、玄関に入ってきた

「なっ、、、」

予想外の動きをしてくる渡部に桐島はただ驚いた

「、、、桐島」

秋本は小さな声で桐島を呼ぶ

見るとチョイチョイと手招きしている

「、、、なんだよ」

桐島は不機嫌な様子で秋本に耳を寄せる

「あんたなぁ、その人見知り、ちょっとは直さなあかんで?」

「は、はぁ?」

「ちょっと2人だけにしたるから、頑張って喋り!知らん女の子と喋れたら誰とでもいけるやろ」

「な、なに訳分かんねえ事を、、、」

(つか、、、今、歩と2人きりにされたら、、、ひたすら気まずいだけ、、、)

という桐島の胸中を一切察する事が出来なかった秋本は、足早に隣の部屋へ歩いていった

「あっ、、、お、おい!」

「しばらくしたら行くから、ちゃんと話しいや ほなね」

秋本はわざとらしく手を振り、隣の自分の部屋に入っていった

「、、、っ、、、」


バタン


仕方なく、桐島はドアを閉めた

「、、、、、」

2、3歩進めば部屋にいる渡部が見える

桐島はぐしゃーっと頭をかき、意を決して部屋の中へ戻った


渡部はよそよそしい様子で荷物を持ったまま立っていた

「、、、ま、、、座るか、、、?その辺、どこでもいいし、、、」

桐島は探りながら喋る

「、、、うん、、、」

渡部は短く頷き、テーブルに沿って床に座った

「、、、、、」

桐島は渡部が座ったのを確認すると、冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、コップを3つ用意する


「、、、とりあえず、茶でも飲むか?」

お茶とコップをテーブルに起き、桐島は渡部の向かいに座った

「うん、、、」

渡部は頷きながら、お茶を淹れている桐島の手元を見つめていた

「、、、久しぶりだね、、、誠哉君」

渡部は不意に呟いた 目線を変えず、口だけ動かす

「、、、ああ」

お茶を淹れ終え、ペットボトルをテーブルに置いた桐島は、小さく返事をした











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