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  作者: 外山
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須原の幼なじみ

【縁】の始まりは桐島達が高校1年生の2学期の時です


なので、物語の中でついに1年経過しました


これを期に、またイチから読んでみるという酔狂な方がいると嬉しいですね(笑)







「よし!じゃあそろそろ行くか」

朝ご飯を食べ終えた父は立ち上がりながら言った

「口、ご飯粒ついているわよ」

母は少し呆れたように指摘する

「え、、、あっ」

父は少し恥ずかしそうにご飯粒を取った

「それにネクタイもズレてる 部長に怒られちゃうわよ?」

母はクスクス笑いながら父のネクタイを直す

「う、、、わりぃ」

父は照れ隠しに笑いながら頭をかく

ネクタイを締め直した母は、足下のカバンを手に取り、父に渡した

「ありがとな 金貯めて、結婚式あげれるように頑張るから」

「、、、焦らなくていいから、無理しないでね」

「おう」

母の優しい言葉に父は力強く返事をする

「ほ~ら、パパにいってらっしゃいって」

母は1歳の子供を抱き上げ、言葉を促した


「パパ、、、いって、らっしゃい」

子供は拙い言葉を繋ぎ合わせるように発した

「ああ 美希 誠哉 行ってきます!」

父は爽やかな笑顔でそう言うと、玄関を開け出て行った










「っっ!?」

桐島は目を覚まし、ガバッと起き上がった

「うぐっ、、、また頭痛かよ、、、」

桐島はイラついた様子で頭を抱える

「いつになったら治るんだよ、、、」

桐島は額や全身の汗に不快感を感じた

「、、、あれ、、、なんだ、、、これ」

桐島は頭を抱えた

「夢、、、なんとなく覚えてる、、、」

今までは奇妙な夢を見ても全て忘れてしまっていた だが今では断片的に映像が残っているのだ

「、、、でも、声とかはいまいち出てこねえな、、、なんかどんどん薄れていくような、、、」

桐島は薄れる夢の映像を何度も思い出そうとする その際、軽く頭痛を伴うがそれよりもこれを忘れてはならないような気がした

「、、、、、っ!」

夢の映像を思い出していくにつれ、桐島はあることに気づいた

「、、、夢に出てきた場所って、、、もしかして、、、」

桐島はそう呟きながら部屋全体を見渡した

「、、、いやまさかな、、、よくある部屋の形だし、、、」



ピンポーン



すると部屋のインターホンが鳴った

「ん?、、、誰だよこんな朝早くに」

桐島はめんどうそうに呟きながら立ち上がる

ちなみに今の時刻は昼の12時過ぎである

桐島は頭痛や夢の事は特に気にせず、玄関の方へと向かった



ガチャ



「はい、、、」

桐島はドアを開けながら様子をうかがった

「桐島、用意した?」

ドアの前にいたのは秋本だった

「え、、、?」

桐島は思わず聞き返した

「、、、って、まだ寝起きやん 髪の毛ボサボサやし」

秋本は呆れたようにため息をつきながら桐島の頭を軽く叩いた

「早よ用意してや 前で待ってるから」

「あ、ちょっ!ちょっと待てよ!」

桐島はこの場を離れようとした秋本に声をかけた

「ん?」

「なんか約束してたっけ、、、?」

ここ最近の秋本との会話ややり取りを思い出すが特に何も思い出せない

「、、、え?浩二からなんも聞いてへんの?」

「須原、、、?」

桐島は数日前の事を思い出した

「あっ、須原の、、、幼なじみ、、、か?」

「うん ファミレスで待ち合わせ 桐島も来るて聞いてたんやけど、、、」

秋本は少し困った様子で頭をかく

「ああ そうだった、、、わりぃ!ちょっと待っててくれ!すぐ用意するから!」

「早よしてやー」

秋本の返事を最後まで聞かず、桐島は勢いよく部屋の中へ戻っていった

「須原のヤツ、前日に連絡するみてえな事言ってたくせに、、、」

桐島はぶつぶつ文句を言いながら支度を始めた








用意が出来た桐島と秋本は、須原と合流し街を歩いていた

「あっはっは、悪いな桐島!連絡すんの忘れてたよ」

「、、、そうかよ」

須原のあまりの悪びれた様子の無さに桐島は呆れてため息をつく

「まあ別にええけど、、、そのせいでちょっと遅れてんちゃう?」

秋本は携帯を開き、時間を確認する

「ちょっとぐらいいいだろー?もうファミレス着いてるらしいけどよ」

「じゃああかんやん 普通に歩いてたらあと2、30分ぐらいはかかるで?」

「ま、大丈夫だろ!2人共いるらしいし」

「2人?」

秋本はすかさず聞き直した

「おう あれ?言ってなかったっけ?」

「言ってないってゆうか、、、2人って誰?私、浩二の幼なじみは1人しか知らんけど、、、」

「そういや会った事なかったかもなぁ」

須原は少し目線上げながら言った

(はぁ、、、2人も知らないヤツがいんのか、、、)

桐島は須原や秋本にバレないように小さく息をつく

「女の子だからよ 優しくしてやってくれよな」

「私も女の子ですけどね」

「はっはっは!梓は違うだろ?」

「どういう意味ィ!?」


2人のテンポのいいやり取りを耳に入れながら、桐島は落ち着こうと息を調えていた








しばらく歩いているとファミレスが見えてきた


「お、あれあれ 待ち合わせってっとこ」

須原は上機嫌な様子で軽やかに歩く

(もう着いたのか、、、どういう感じで接するべきか、、、フレンドリーに?いややっぱ最初は礼儀正しくか、、、)

あれこれ考えながら眉間にシワを寄せ、俯いていた


桐島の考えがまとまる前にファミレスに着いてしまった

「久しぶりだなぁ あいつらに会うの」

須原は楽しそうに呟きながらファミレスのドアを開ける

(ふぅ、、、緊張してると思われたらダメだ、、、)

桐島は胸に手を当て、深呼吸する


バシッ!


すると秋本に背中を叩かれた

「なに?緊張してんの?意外と人見知りなんやね」

秋本はそれだけ淡々と言い終えると、一足先にファミレスに入っていった

「、、、人見知りじゃねえって、、、」

誰にも聞こえない事は分かっていたが、そう呟き中に入った



「いらっしゃいませ 3名様ですか?」

「いえ、待ち合わせなんで、、、」

接客してくる店員を軽くいなした須原は店内へと入っていく


「お、いたいた、、、」

少し離れた席に座っている幼なじみを須原は発見した

(うわぁ、ついにか、、、)

桐島は思わず目線を下げた

須原だけ先々歩き、秋本と桐島は少し遅れて歩いていく

「よお、悪いな遅くなって」

須原は2人より先に席につき、幼なじみとはテーブルを挟んだ向かい側に座った

秋本と桐島も少し遅れて須原に追いつく


「久しぶりだなぁ、緋斬」

須原はテーブルに肘をつきながら言った

(、、、え?)

桐島は自分の耳を疑った

「そんなに久しぶりでもないだろ浩二 2週間ぐらい前に会ったじゃねえか」

須原の幼なじみの男はそう言うと、お冷やを口にした

(こ、、、この声って、、、)

桐島は目線を下げたまま上げられなかった


[緋斬]

この名は非常に珍しかった

おそらく殆どの人はこの名を口にする事は無いだろう

だが桐島にとっては、何度も聞き、何度も呼んだよく知る名前である

たった一度の中学時代を、毎日のように過ごし、争い、助け合った人物の名前である


「、、、、、」

桐島はゆっくりと顔を上げ、おそるおそるその男の顔を見た

前髪にわずかに入っている金色のメッシュ

鋭い目つき 細めの体

少し日に焼けている、という部分を除けば、桐島の記憶に限りなく一致する人物がいた


その男の名は〔菅井緋斬〕

埼玉の冥名中学校で3年間を共にした、桐島にとっては野波佳に並ぶ大親友である


「っ、、、!」

桐島は菅井の顔を確認し、再び顔を下げた

(ひ、緋斬、、、!?な、なんで名古屋に、、、!?)

ドッドッドッと鼓動がどんどん速くなるのを感じる 視界もぼやけ、かすかに歪んでいった





『誠哉、、、俺言ったよな、、、?お前に、、、南の事、任せるってよ、、、』

『お前だけは絶対分かってなきゃダメなんじゃねえのか!?あぁ!?』

『南に万が一の事があったら、、、殺してやるからな』





過去の菅井の言葉が一気に桐島の頭の中を駆け巡る

「、、、、、」

桐島は必死で鼓動を抑え、落ち着こうとつとめる

「緋斬君!私はホンマに久しぶりやね!」

「ああ、秋本、部活はいいのか?」

「うん!今日は1年生だけ試合やから2、3年生は行かんでもええねん」

秋本も親しく菅井と話している

桐島の耳にも一応届いてはいたが、今の桐島には伝わらなかった

「あ、そうそう緋斬 こいつ、俺の友達な!」

須原は桐島を指し、紹介する

「っ!!」

桐島はビクッと震え、緊張で体を強ばらした

「ああ、、、、、っ、、、?」

菅井は桐島の顔を見て、動きが止まった

「、、、、、」

桐島は1人立ち尽くし、どうしようもない状態だった

「、、、、、」

菅井は驚いた表情で桐島の顔を見ている

「? どうしたんだよ?」

2人の様子を見て異変を感じた須原は間に入った

「い、いや、、、」

菅井は目線を下げ、テーブルのメニューを見つめている

「、、、、、」

桐島はずっと黙ったまま俯いていた

「、、、?まあいいや こいつ桐島誠哉な んでこいつが菅井緋斬」

須原は桐島と菅井、それぞれの紹介をした

「あ、ああ、、、」

菅井は桐島の様子をチラッとうかがった

「、、、、、」

桐島は菅井の方を見ず、ただ表情を強ばらせていた

「、、、とりあえず座ったら?」

秋本は少し須原の方に詰め、大きめのスペースを作りポンポンと叩いた

「、、、ああ」

桐島は短く返事をし、席につく


「あれ?緋斬、あいつは?」

「、、、、、」

菅井は須原の問いかけに反応せず、深刻そうな表情でテーブルを見つめる

「、、、おい?緋斬?」

「んっ?あ、ああ、、、どうした?」

「だからあいつは?もう来てるってさっき電話で言ってたろ?」

「あ、、、ああ、さっきトイレに行ってな もう帰ってくんだろ、、、」

菅井はとりあえず須原の質問に答えたが、それどころではなさそうだった

「ん、ホントだ ちょうど来たぞ」

須原はもう1人の幼なじみを発見した

「あ、、、ちょっと遅いよ浩二君!」

女の子の幼なじみはスネた口調でそう言いながら歩いてきた


(、、、は?)

桐島はその声にすごく聞き覚えがあった


か細いが芯のある声

学校ではいつも、隣の席から聞こえてきた声

困っているなら、どこにいても助けてやると誓った声

その声の持ち主を追って、桐島は今、この名古屋にいた



「ははっ!悪いな!こいつが寝坊しちまってさー!」

須原は隣の秋本を通り越し、桐島を指した

「、、、え?」

須原の幼なじみが桐島の方を見た

「、、、、、っ」

桐島はおそるおそる顔を上げた


黒く長い髪 フチが強調されているメガネ

この驚いた表情も、桐島は何度も見た事があった


その女の子の名前は〔渡部歩〕

会おうとしても会えなかった

会いにこないでと言われた


その子はあっさりと、桐島の前に姿を現した


「あっ、、、」

渡部は思わず声が出てしまい、口を押さえた

「こいつら、俺の友達なー」

須原は渡部に、桐島と秋本を紹介する

「、、、、、」

だが桐島はそれどころではなかった

驚きを通り越して逆に冷静だった


(須原の2人の幼なじみって、、、緋斬と、、、歩、、、?)


いくら冷静に考えても全く整理がつかなかった










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