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  作者: 外山
114/216

姉さんの為、、、



「な、、、なんなんだよそれ 歩はなんて言ってたんだ?」

桐島は慌てて凛を問いただした

これさえ知る事が出来たら、一気に問題解決に近づく

そう思うと桐島は自然と、落ち着きがなくなってしまっていた


「、、、私からは、言えません、、、」

凛は桐島と目を合わさず、前を見たまま呟いた

「え、、、?」

「他に男が出来たとか、、、そんな単純な話なら言えたんですけどね、、、」

凛はため息まじりに言った

「、、、、、」

桐島は呆然と凛の顔を見ていた

(良かった、、、彼氏とか、そういうんじゃなかったんだ、、、)

桐島はホッと胸をなで下ろしながらも、凛の言葉に納得出来なかった

「な、なんで言ってくんねえんだよ?俺が名古屋に来てまでその理由を知りたがってるって知ってんだろ?」

「、、、そうですけど、、、」

凛はゴニョゴニョと言葉を濁した

「頼む!今のままじゃどうしていいか全然分かんねえんだ せめて、言えない理由ぐらい教えてくれねえか?」

桐島はベンチに座ったまま頭を下げた

「ちょっ!あ、頭は上げてくださいよ!そういうのはやめてください!」

凛は桐島の肩を持ち、頭を上げさせた

「頼む!」

桐島は顔を上げ、必死の思いで凛に懇願する

「、、、、、~~」

凛は困った様子で顔をそらし、前を向いた

「どれだけお願いされても、、、私の口から言う事は出来ません、、、」

凛はそう呟いた後、強く唇を噛み締めた

「、、、、、そっか」

桐島は諦めたように小さく息をつく

「すいません、、、」

「いいよいいよ ごめんな 無理に訊いたりして」

「、、、、、」

笑顔だったが、桐島が困っているのは凛にもよく伝わってきた


「、、、私が姉さんから、この話を聞いた時も、、、今の誠哉さんみたいにしつこく交渉したんです、、、」

「え?」

話し出した凛に、桐島は注目する

「それも毎日です、、、誠哉さんが姉さんの為に諦めないって言ってたから、私も少しでも力になろうと思って、、、」

「、、、、、」

桐島は黙って凛の言葉に耳を傾ける

「ある日、、、姉さんが話してくれたんです 誠哉さんと別れた理由を、、、」

凛は桐島の顔を見ながら言った

「私は最初、その理由を聞いた時、、、なんでそれが誠哉さんと別れる理由になるのか、よく分からなかったんです」

「え、、、?」

桐島は顔を上げ、凛の方を見る

「でも、話していく内にだんだん、、、姉さんの気持ちの葛藤や苦悩が、、、なんとなく見えてきたんです」

「、、、、、」

(歩の、、、苦悩、、、)

桐島は何故渡部が苦しんでいるのか、全く分からなかった

「きっと、、、誠哉さんとの事も、悩んで、苦しんで、覚悟を決めて、、、出した答えなんです、、、」

「、、、、、」

桐島は、ゴールデンウイークの学園祭の前から渡部の様子がおかしかった事を思い出していた

(あの時にはもう悩んでたんだよな、、、なんで一言も、なんにも言ってくれねえんだ、、、)

桐島は悔しそうに自分の膝を強く握った

「だから、、、誠哉さん」

「ん?」

「もう、、、姉さんには会わない方がいいと思うんです、、、」

「え、、、な、なんで?」

「今誠哉さんと会ったりしたら、、、姉さん、余計に辛い思いをするはずです、、、」

「え、、、俺と、会ったら?」

桐島は思わず凛に聞き返す

「はい、、、姉さんは、すごく悩み抜いた末に、誠哉さんと別れる事を選んだと思うんです、、、今、誠哉さんの顔を見たら、、、姉さん、どうしていいか分からなくなりそうで、、、」

「、、、、、」

桐島は迷っているような表情でとにかく動揺していた


「、、、姉さんの為に、名古屋まで引っ越してきてくださったのに、、、勝手な事を言ってすいません」

凛は立ち上がり、深々と頭を下げた

「でも、、、姉さんの為なんです、、、お願いします、、、」

「凛ちゃん、、、」

普段はふざける事が多い凛だが、今日は違った

一貫して律儀な凛の姿は、桐島にとっては不慣れなモノだった

だが凛のこういう姿を見るのは二度目だった

一度目は、学園祭の二週間後、桐島が渡部の家に押しかけた時だった

その時も、姉の事になれば凛はいつでも真剣だった


「、、、とりあえず、、、今日は帰ろう」

桐島は凛の願いには答えず、立ち上がった

「凛ちゃんの気持ちは分かったからさ、、、どっちにしても俺には歩と会う手立てもねえし」

桐島は軽く笑いながら凛の肩をポンポンと叩いた

「、、、はい」

凛はゆっくりと顔を上げながら呟いた

「、、、でも、、、俺は、引く気はない」

「え、、、?」

「別にもともと、歩の為を思って、、、って気持ちで来た訳じゃねえし ただ俺が納得いかなかったら、、、まあ、わがままで来ただけっつうか、、、」

桐島は未だに上手くまとまっていない心情を口にした

「それに、、、歩に会わなくても、なんとか出来るかもしれねえし」

「え?」

凛は驚いた表情で桐島の顔を見る

「い、いいんですか?姉さんに会えなくても、、、」

「いや、そりゃ会いたいけどよ 今は無理なんだろ?俺と会ったせいで辛くなるんなら会っても仕方ねえし、、、」

「そうですけど、、、」

「でも、、、今は無理でも、その内会えるようになるかもしんねえからさ」

桐島はつとめて明るい表情をしていた

「とにかく、、、諦めるつもりは一切ねえから 凛ちゃん、これからもよろしくな」

桐島はそう言いながら公園の出口へと歩き出した

「、、、はい」

凛は僅かだが、先ほどまでより明るい声で答えた









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