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  作者: 外山
103/216

立ち退き



鈴科孤児院


料理やケーキを頂いた桐島は、いつもの部屋でイスに座っていた


先ほどまでとは違いテーブルも片付けられ、部屋はスッキリしている


鈴科や子供達は、皿を洗ったり片付けたり、イスやテーブルをもとの場所に戻したりしていた

最初は桐島も手伝おうとしたが、鈴科がピシャリと止めたので、今はおばあさんや草津と雑談していた



「、、、にしても子供達、ずいぶんしっかりしてますね」

桐島はふと、子供の話をした

「そうかねぇ、、、」

おばあさんは嬉しそうに相槌を打つ

「そうですよ イスとかテーブルの片付けならともかく、食器を洗ったりなんて、俺がいた頃は全然出来ない奴ばっかりでしたからね」

桐島は当時を思い出しながらため息まじりに言った

「誠哉君は料理が得意でよくやってたから、洗い物も自然と出来るようになったんだね」

草津はうんうんと頷きながら言った

「確かにそうかもねぇ、、、でも代わりに、服の洗濯が上手な子もいたけどねぇ」

おばあさんは桐島と同世代の子供達を思い出していた

「あ~、そうですね、、、そうか、そういうところで釣り合い取ってたんかな~」

桐島はイスにもたれ、天井を見ながら呟いた

「洗濯が上手な子って、例えば誰だい?私でも覚えてるかな?」

草津はおばあさんと桐島の2人に訊ねた

「ん~、、、やっぱ千佳かな、、、」

桐島はそれほど悩まずに答えた

「あ~!千佳ちゃん!覚えてるよ!誠哉君と同い年だろ?」

草津は分かる事が嬉しそうだった

「ここを出たのは小学5年生の時だったね 確か」

「ああ、、、今考えたらもうそんなに前か、、、」

「当日、そこの玄関でみんなで見送ったけど、急に泣き出しちゃったんだよね」

草津はだんだんはっきり思い出してきたようだった

「そうだったねぇ でも、せいちゃんのおかげでなんとかなったんだったねぇ」

「、、、、、」

おばあさんは桐島に話を振るが、桐島は黙って顔を背けている

「そうだったそうだった!泣きつく千佳ちゃんに誠哉君が、、、え~っと、なんて言ったんだっけ?」

「、、、、、」

桐島はまだ黙っている

「確か誠哉君の一言で、千佳ちゃん泣き止んだんだけど、、、なんだった?誠哉君」

「、、、言いたくない」

桐島は顔を背けながら答える

「え?なんで?」

「、、、なんだっていいだろー?言いたくない!」

草津の問いに、桐島は意固地になって答えない

「ほほ、、、」

どうやらおばあさんは覚えているようだ

「え?お母さん覚えてるんですか?」

草津は昔からおばあさんの事を、お母さんと呼ぶ

「ほほ、、、さあ、どうだろうねぇ」

「お母さん教えてくださいよ モヤモヤするじゃあないですか」

「でも、せいちゃんが嫌がってるみたいだからねぇ」

「そんなぁ~、気になりますよ~」

草津は食い下がるがおばあさんは口を開かなかった




「、、、あ、ところでお母さん、あの話は、誠哉君にしたんですかい?」

草津はふと、思い出したように話を振る

「あの話?」

桐島はすぐに聞き返した

「いや、まだしてなかったねぇ」

おばあさんは頷きながら答えた

「なんですか話って?」

何も聞いていない桐島は、おばあさんの方に意識を向けた

「あのねぇ、せいちゃんが今住んでる、アパートの事だけどねぇ、、、」

「はい 中1から住んでる、、、おばあちゃんの知り合いのとこですよね?」

「ああそうだよ、そのアパートがねぇ、どうやら取り壊しになるみたいなんだよ」

「、、、えぇ!?取り壊し!?」

桐島はあまりの展開に声を上げた

「ああ、つい先日聞いたんだよ」

おばあさんは深く頷きながら言った

「と、取り壊しって、、、」

「あの辺り一帯の道を広げるらしくてねぇ、いわゆる立ち退きだねぇ」

「そ、、、そうですか、、、」

桐島はとりあえず納得した

「取り壊し自体が始まるのは9月に下旬か10月頃らしいから、9月までには退去してほしいらしいんだよ」

「そ、それは分かりましたけど、、、」

「次に住む場所もお母さんの知り合いや孤児院のツテから探せばいいからね 埼玉内にもいくつもあるし、その気になれば全国にもあるから」

草津は安心させるように笑顔で言った

「、、、え?」

桐島はその草津の言葉にピンときた

「、、、?どうかしたかい?せいちゃん?」

様子がおかしい桐島に、おばあさんは訊ねた

「いえ、、、」

桐島は下を向いて考え出した


「、、、次に住む場所、どこでもいいんですよね?」

桐島は顔を上げ、おばあさんに訊ねた

「そうだねぇ、私と繋がりさえあればどこでも紹介出来るよ」

「、、、実際に引っ越すのは先になりますけど、、、一応、行きたいとこ言っておいていいですか?」

桐島は先ほどまでとは違い、急に真剣な声色で話し出した

















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