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手紙―⑧

リアルの生活が忙しくてなかなか書けないんですが、時間を見つけてはチョコチョコ書いてます。


もう少しお付き合い頂けたら嬉しいです。

 何もかもがアヤフヤなままで夏休みに突入し――高校生活最後の夏休みであり、受験を控えた最後の夏休みでもある――貴重な時間をコレ以上浪費しない為にも、可能な限り早くビショップ氏の屋敷を訪ねて、このモヤモヤを消してしまわなければならない。そう決断した僕はすぐさま行動に移したんだ。


 思い立ったら即実行


 ソレが僕のモットーだからね。


 そしてかねてから考えていたように、アポ無しで突然訪問した。何故かビショップ氏が不在の可能性については、全く考えもしなかった。何の根拠も無く『間違い無く居る』と思いこんで――いや、確信めいたものがあったんだ。僕が行けば必ず会えるんだと。そして実際その通りだった。

 インターホンを鳴らすとあのメイドが現れ、来意を伝えると静かな声――と言うのおかしい気もするけど、そうとしか言いようが無い――で僕を招き入れた。僕が遠からずやって来るのを、ビショップ氏は予見していたのだろう。いや、あんなトンデモない体験をして何も思う所が無いなんて、相当な頑固者かアホだけだろう。また訪れるに決まっている。しかし、トリックや仕掛けを「いつ来るか分からない相手の為に準備し続ける」と言うのも考えにくい。別に僕だけを相手にして暮らしているワケじゃ無かろうし。

 前を歩いているメイドに僕の中にわだかまっている幾つかの疑問をぶつけてみようかとも思ったけど・・・答えられないか答えないかのどちらかだろうと思い至って止めておいた。やはりビショップ氏に直接尋ねるのが一番だ。


 前と同じ書斎に通され、同じ様に迎えられ、同じ様に挨拶を済ませると―いや、突然の来訪をお詫びはしたな―あっさりと来意を見抜かれた。と言うかなんの推測も推理も必要としないだろう。

 

「相当気になっているようだね」

「分かりますか」

「顔に書いてあるよ。日本ではこう表現するんだったね」


 全てを見越した様子のビショップ氏は、あの時と同じようにメイドに命じて服を脱がせ、僕の前に立たせた。

 あっさりと主導権を握られたと自覚しながら、それでも僕は胸の中のモヤモヤを払うべくトリックか何かの痕跡、或いは証拠を探そうと前よりも長い時間をかけて念入りに調べたんだが――無駄だった。

 何も怪しい点は無い。トリックだとか特殊メイクだとかじゃない、もっと次元の違うモノ――事実――だ。もう疑う余地の残っていない、厳然たる事実だ。未だに「信じる」事は出来ないが、「事実として認識する」しかない。感情、或いは感傷と認識とは切り離して考えるべきなんだ。


 僕は溜息を吐き出すと共に、自分の世界、或いは常識の敗北を宣言した。


「降参ですビショップさん。僕に考え付く事は全て試してみましたけど、何一つとして怪しい個所は発見できませんでした。もう目の前の事実を受け入れるしかありません」

「そうかね、納得しているかどうかは分からないが、とにかく『怪しい点は無い』と分かってくれただけでも嬉しいよ」


 ビショップ氏は肩をすくめながら諦めともとれる口調で話す僕に答え、メイドに服を着てコーヒーを淹れるよう命じた。


 僕達はと言えば、椅子に座り改めて「ロストテクノロジー」と言う名のオカルティックな技術について、突っ込んだ話を展開していた。


 ビショップ氏によると、古代中国ではいわゆるたましいと言うモノをこんはくに分けて考えていたと言う。と言うよりも日本で魂と魄を一纏めにしてたましいと呼んでいると考えた方がよさそうだ。こんは精神を司り、はくは肉体を司る。つまりたましいは肉体と精神の両方を司る働きがあるらしい。コレを魂魄こんはくと一纏めに呼んでいた中国人の考えは、見事に的を射ていたと言えるだろう。

古代エジプトにおいても、こんにあたるものをバー、はくにあたるものをカーと呼んでいたのだと言う。


「四大文明の内の二つで同じ様な考え方になるというのも、奇妙な符合ですね。そう言えば『こん』と『カー』、『はく』と『バー』はどことなく発音は似て無くもないですね。指すものは逆ですけど」

「ふむ、面白い考えだね。伝わる間に意味が逆転してしまうというのは、確かによくある事だ。ありがとう、また新しい発見があったよ。やはり君と知り合えた偶然に感謝すべきだね」

「いえ、ただの思いつきでしかありませんよ。そんな風に言われると照れ臭いと言うか恥ずかしいと言うか・・・」

「そんな事は無いよ。偉大な発見がふとした思いつきや偶然、或いは夢で見たり遊んでいるときに思いついたと言う逸話は幾らでもある」


 また魂と魄は互いに補い合い、その存在を支え合うので分かつ事は不可能に近いのだと言う。無理に分離させても、長時間は存在が保たないらしい。


 つまり、僕の願いを叶える為にはこの世から消える覚悟が必要なんだと、改めて認識したんだ。

 でも、幾ら何でもすぐには決断できない。出来るワケも無い。


 そんな僕にビショップ氏は小さな丸薬を手渡した。表面は赤くて、直径は3mmぐらいだろうか。


「これは? 」

「古代の文献『エイボンの書』から復活させた精神分離薬だよ。効果も持続時間も極めて限定的なモノだから心配はいらない。ああ、麻薬や覚醒剤のような成分は入っていないし、常習性も無いから安心したまえ。興味があれば今夜――そうだな、寝る前にでも試してみるとイイ。私が研究しているテクノロジーの一端が体験出来るだろう」


 暫くして屋敷を辞して帰宅した僕は、夜を待ち――精神分離薬を飲んでベッドに入った。

ビショップ氏が僕を殺そうとしているとも思えないし、或いはジャンキーにしようと企んでいるとするなら、自宅を教えるんて事はするハズも無い。リスクが大き過ぎる。

そう考えて試してみた僕は、言葉にするのも難しいような、驚くべき体験をしたんだ。


続く



あと一話か二話・・・多分二話で終わると思います(汗


書くのが遅いくせに、アイデアだけドンドン思いつくのが何とも性質が悪い・・・・。

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