手紙―⑦
真面目に書いてますね。俺。
いや普通の事じゃあるんですがw
取りあえず書けた分だけUP。
その日は机に向かったりベッドに転がったりしながら、ビショップ氏から言われた事を考え続けていた。
氏が復活させたロストテクノロジー(正直オカルト風味のSFにしか見えないが)を使えば僕の願いは叶うようだ。だが肉体を捨てなければならないらしい。メイドの検証後に氏が説明した所によると、秘薬と精神感応によって肉体と精神とを分離させるとの事だ。この時 精神と魂が一塊りになって抜けるので、肉体は『生きようとする力』を失うのだと氏は語った。つまり、例え生命維持装置の類を使っても肉体は衰え衰弱し、短期間で冥界の門をくぐってしまう――つまり完全に死んでしまうらしい。
魂というモノが科学的にどういうモノかは、取りあえず置いておこう。科学的に説明出来ない事を目の当たりにした後で、論理的・客観的にどうこう言うのは何と言うか・・・バカバカしい? いや、虚しいと言った方が正確かもしれない。
ビショップ氏は技術と言っていたが、きっとソレは少しでも僕に警戒心を抱かせない様にする為だったんじゃないか?そう考え始めていた。
『星の向こうに住まう者』『時間と空間を超える道』そして有り得ない身体。魂と精神。肉体との分離。やっぱりオカルトだ。ソレを少しでも受け入れ易くする為に技術と言い換えたんじゃないんだろうか?
じゃぁ何故?僕をそんな世界に引っ張り混でなんのメリットがある?何一つとして実力も無い、経済力も無い僕を。強いて言えば実験台として使うぐらいしか無いだろうに。もし実験が目的だとしてもリスクが大き過ぎるんじゃないか?なにしろ失敗すれば人一人が死んでしまうんだ。僕がビショップ氏の屋敷を訪ねる所を目撃されれば、まず疑いがかかるのは免れない。それに未成年の僕が行き先を家族に伝えないと言う事も考えにくいだろうに。
じゃぁ何故?純粋に厚意からなのか?何故?同じく宇宙の神秘や美しさを愛する者だからなのか?
いくら考えても答えは出なかった。
その後の夕食も何を食べたのか覚えていないし、当然受験勉強どころじゃなかった。いつもの彼女―香―との電話も気が乗らず、早めに終わらせたのを覚えている。目の前に立ちはだかった大きな疑問―ビショップ氏の目的、ロストテクノロジーの実態とソレがもたらす結果―ソレが頭の中でグルグルと渦巻いて混沌の様相を呈していた。
何も答えが出ないままに朝が来て――ボンヤリと過ごして夜を迎える。
そんな数日を過ごしながら少しずつだが確実に、僕の心は固まり始めていた。そう、僕の中にある最大の欲求――好奇心に支配され始めていたんだ。
宇宙の神秘をこの目で確かめる事が―もしかしたら―出来るかも知れない。それに加えてビショップ氏のロストテクノロジーに対する好奇心。コレ等が僕の中で加速度的に増大していったんだ。
繰り返しになるかも知れないが、やはりあのメイドの存在が大きかった。生きた証拠―人間じゃないんだから『証人』とは呼べない―の存在は強烈だ。
そして結局―僕はもう一度メイドの身体を調べさせてもらう事にした。それもアポ無しで突然に訪ねて行ってだ。それなら何のトリックも準備出来ないはずだから。
ソレで前回と同じ様になるなら・・・受け入れるしかない。オカルトにしか見えない事が疑いようも無い事実なんだと。
そしてソレによって僕の願いを叶えてもらうかどうかは――その時にならないと分からない。
自分の願いの為に全てを捨てられるのかどうかは。
続く
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さて、ぼちぼち佳境にさしかかってきました。
いや、「ようやく」ですか(汗
あと2話か3話か・・・そのへんで終わる予定・・・ですw