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手紙―⑥

今回は・・・(比較的)早かったかな?


(多分)もう少しで終わって、次のシリーズを始める予定です。

 彼女の体は何と言えばイイのか・・・そう、まるで特殊メイクのようだった。肩から肘にかけてワニの背中を思わせる凹凸が覆っていた。腰から太腿の外側のラインにかけても同様だった。胸と・・・その、股間も同様に覆われていた。そりゃどうしても目が行ってしまう。だが最も驚いたのは鳩尾の辺りだった。


 ポッカリと空洞が開いていたんだ。そしてその向こうには後ろ側の景色ではなく、無限の広がりを思わせる宇宙が見えていた。冷たく静かで、果てしない空間の向こうに淡く輝く恒星が見える。その奥に仄明るい銀河も。背中側に回り込んでみると、背中は普通に白い肌で覆われていた。

 ワケが分からずバカみたいに口を開けて呆然としている僕にセプティマス氏がゆっくりと語りかける。


「驚いたかね? 」

「はい・・・」

「トリックや特殊メイクの類では無いよ。気が済むまで確かめてみたまえ」


 立ち上がった僕は深呼吸をして両頬を叩いて気分を切り替え、メイドに向き直った。


「では、失礼して」


 両肩に手を置いた僕にメイドは無言で頷くだけだ。遠慮無く肩――三角筋の辺りだ――の凹凸に親指をかけてフルパワーで押してみた・・・が、ビクともしない上にメイドも相変わらずの無表情だ。特殊メイクなら剥がれてしまうだろうし、途轍もなく頑丈に貼り付けているんなら相当痛いだろう。無表情と言う事はまずあり得ないと考えていい筈だ。

 次に押してダメなら引いてみようと考えて体中の凹凸部を全力で引っ張ってみた。肩・腰・太腿・・・そして胸も。その結果は徒労でしかなかった。また、そうして思いっきり力をかけた時でも、このメイドの細い体はピクリともしなかった。まるで銅像のように。

 深呼吸を一つしてから彼女の前に膝立ちになり、鳩尾の空洞に顔を近付けて覗きこんでみると、少し落ち着いてきているのか、最初は気付かなかった幾つかの事が見えて来た。

 まず腹部の空洞と皮膚の接触部は何かで切り取った様なカンジではなく、まるでグラデーションでもかかっているかの様にボンヤリとした印象だ。黒々とした宇宙空間が少しずつ浸食しているように見える。

 次に空洞内部だが、彼女の体内であろう部分――腹部空洞の入り口から10cmちょっとだろうか。ほっそり体型だし――を見ても宇宙が広がっていた。どんな角度からどの方向を見ても同じだ。

 最後に思い切って右腕を空洞に突っ込んでみた。(勿論セプティマス氏に聞いてみてからだし、氏も地震たっぷりに頷いていた)肩口まで入れて、そのまま彼女の背中側を見ても・・・僕の腕は見えなかった。彼女の体からはみ出すであろう幅で振り回してみてもだ。腕と縁との隙間はほぼ無いので腕がどうなっているのかは見えないが、感覚としては肩口から指先にかけて少しずつ冷たくなっていく様に思えた。そして何か吸い込まれて行くと言うか、ジンワリと『落ちていく』ような感覚もあった。


 ここまで自分なりに調べた上で出した結論は・・・お手上げだ。情けない話だが僕には説明出来ない『何か』が目の前に立ちはだかっているんだ。同年代の少女の姿をして。


 それでもまだ、さんざん調べまわした挙句・・・天を仰いで大きな溜息を吐いた僕にセプティマス氏がゆったりとした口調で語りかけて来る。


「納得はいったかね? 」

「・・・yesでもありますし、noでもあります。今 目の前に理解を超えた事実がある事は分かりましたが、納得するしかありませんが理解出来ていないというか。何よりも何故そんな事が出来るのかが分からないんです」

「尤もだ。だがソレを可能にするのが・・・」

「ロストテクノロジーですか」

「そうだ。話が早くて嬉しいよ」


 僕達の会話の間も裸でじっと立っていたメイドに服を着る様に告げたセプティマス氏は、僕に椅子を勧めながら自分も座り一息ついた。


「これから突拍子も無い話になるが、落ち着いて聞いてくれたまえ。まず彼女は人間ではない」

「・・・でしょうね。今となってはそのぐらいじゃ驚きません」

「それもそうだね。では話を進めよう。彼女は私がロストテクノロジーで呼び出した『星の向こうに住まう者』なのだよ。本来は人間とはかけ離れた姿なのだが、2年かけてここまで人間の姿に近付け、腹部に『時間と空間を超える道』も設けた。これらもロストテクノロジーによるものだ」

「さすがに・・・そこまで行くと、何と言うか・・・」

「だが君はそうでもなければ到底説明不能な事実に直面した」

「確かにそうですが・・・」

「いきなり答えを出す必要は無い。ゆっくりと考えてくれれば良いさ。だが一つだけハッキリしているのは、私が蘇らせたコレ等の技術ならば君の願いを叶える事が可能であり・・・他に方法は無いと言う事だ。諦める以外には」


 きっと自分自身で体験してみないと分からないだろうけど、この時 既に僕はビショップ氏に完全に呑まれていたというか、曖昧模糊とした世界に入り切っていたんだろう。



 その日はビショップ氏の勧めもあって屋敷を辞した後、ずっと自室で考え込んでいた。

当然だろう?いきなりワケの分からない世界に直面してしまったら、誰だってそうなる。

ましてやソレによって自分の願いが叶うとしたら? 普通なら信じるハズも無いような、途方も無いと言うか現実性なんか欠片も無いような話だ。荒唐無稽を超えてオカルト系ファンタジーとしか思わないだろう。現実に体験しなければ。


 だが直面してしまったらどうすればイイ?





続く


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今回の更新に先立って、これまでの展開を若干修正しました。

いわゆる校正というヤツですか(upする前にしとけ俺)。


気にする方はあんまりいないと思いますが、一応お知らせと言う事で。

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